今回のテーマは、商品開発やマーケティングです。商品開発の3つのハードルについてです。
✓ この記事でわかること
- 「キリン ファイア ワンデイ ラテ微糖」 の商品開発
- 年間目標を半年で達成したヒット商品
- 開発ストーリーとは?
- 商品開発の3つのハードル
- 学べること
この記事を読んでいただきたいのは、商品やサービスの開発をされている方です。
ヒット商品のボトルコーヒー飲料を取り上げ、商品開発やマーケティングにも学べることを解説していきます。新商品のアイデア、新しい企画を日々考えている方の何か少しでも参考になればうれしいです。
飲料の話で異業種のことかもしれませんが、他の業界でも本質まで掘り下げれば、自分たちの業界のヒントになります。
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
キリン ファイア ワンデイ ラテ微糖
今回ご紹介したいのは、コーヒー飲料の キリン ファイア ワンデイ ラテ微糖 です。
出典: Amazon
以下は日経新聞の記事からの引用です。
キリンビバレッジのペットボトルコーヒー 「キリン ファイア ワンデイ ラテ微糖」 が好調だ。
在宅勤務が定着し、ペットボトルコーヒーを時間をかけて飲む人が増えると想定。常温でもおいしいミルクの甘みとコーヒーの香ばしさを両立した。
働き方の変化に対応し3月の発売から半年で6000万本を販売した。
商品名に 「微糖」 と入っていますが、どれくらい微糖かと言うとボトルの栄養成分表示には 「100ml あたり糖類 2.0g 」 と書かれています。容量が 600ml なので単純計算で糖類は 12g 入っています。
開発ストーリー
ではここからは、「ファイア ワンデイ ラテ微糖」 の開発にフォーカスを当てて見ていきましょう。
先ほどの日経からの引用です。
コロナ禍でリモートワークが定着すると、仕事中の切り替えが難しくなる。大場さんは 「大容量のペットボトルコーヒーを、時間をかけて飲むニーズが拡大しているとの仮説を立てた」 という。実際にインテージの調査では 500 ミリリットルのペットボトルコーヒーの市場は、2021年1 ~ 9月に前年同期比 6% 増とコロナ禍で拡大している。
大容量のニーズは消費者の節約志向で増している。そこで一般的な 500 ミリリットルを増量し 600 ミリリットルでの発売を決めた。ただ時間をかけて飲むからこそ 「常温になってもおいしい」 ことが求められた。コロナ禍の健康志向の高まりを受けて、「微糖タイプで後味スッキリな甘さ」 を目指した。
開発にあたって、「在宅勤務では大容量のペットボトルコーヒーを、時間をかけて飲むニーズが拡大している」 という仮説を立てました。
この仮説に基づいてやったことは大きく2つです。
1つは容量を通常の 500ml から 600ml に増やしました。
もう1つは、「常温になってもおいしい」 と 「微糖タイプで後味スッキリな甘さ」 が両立する商品開発です。
これを実現するのは難しかったとのことです。再び引用です。
大場さんは 「ミルクや甘さでカフェラテの満足感がありつつも、口に残らず仕事に集中できる味わいを、冷たい状態でも常温でも実現するのが課題だった」 と話す。
味が濃すぎると甘さやミルク感が口に残り、飲みにくくなる。特に常温では味が残りやすい。一方、飲みやすさを求めると 「水っぽい」 と評価されてしまう。同社によるとペットボトルコーヒーユーザーの 6 割が 「500 ミリリットルのペットボトルのカフェラテはコーヒー感があるものが少ない」 と感じているという。
そこで通常の 7 ~ 10 倍の 1700 本もの試作を重ねた。甘さやミルク感が感じられつつも後味に残らないよう、コーヒーの味わいでメリハリをつけた。ほどよくコーヒーが感じられることで 「ごくごく飲みたい」 との気持ちを喚起できるよう、コーヒーの焙煎度や豆の量を調整した。
開発での試行錯誤や苦難を乗り越え、「ファイア ワンデイ ラテ微糖」 は生まれました。
半年で6000万本を販売し、年間販売目標を達成しました。ファイアブランド全体の2021年9月の販売数量が前年同月比で 14% 増と好調とのことです。
商品開発での本質
「ワンデイ ラテ微糖」 の商品開発でのポイントは、「仮説からビジネスチャンスを発見し、見出したソリューションを新商品で実現したこと」 です。
順番に説明すると、まずはリモートワークの広がりで 「在宅勤務では大容量のペットボトルコーヒーを、時間をかけて飲むニーズが拡大している」 という仮説を立てました。ここにビジネスチャンスを捉え、増えるであろうニーズに応えるために、自分たちの解決策 (ソリューション) をつくったわけです。
ソリューションは 「常温になってもおいしい」 と 「微糖タイプで後味スッキリな甘さ」 の両立です。「ワンデイ ラテ微糖」 はいくつもの開発ハードルを乗り越え、このソリューション (方針) を実現する商品を生み出しました。
以上のように、「ビジネスチャンス → ソリューション → 商品」 と順番に成功させたので、年間目標を半年で達成するヒット商品となったのです。
学べること
では最後に 「ファイア ワンデイ ラテ微糖」 から、商品開発やマーケティングにも学べることを整理してみましょう。
学びを一言で言えば、「商品開発での3つのハードルを乗り越えよう」 です。
商品開発の3つのハードル
今回の 「ワンデイ ラテ微糖」 で見てきたように、3つのハードルとは以下になります。
✓ 商品開発の3つのハードル
- ビジネスチャンスの発見。例: 生活者 (潜在顧客) のライフスタイル変化に伴う新しいニーズ
- ニーズに応えるソリューションの選択と注力
- ソリューションを実現する商品の開発
ソリューションと商品開発
ポイントとして強調したいのは2つ目の 「ソリューション」 と3つ目の 「商品」 を分けて捉えることです。
ソリューションとは解決策で、目に見えない方針です。一方の商品とはソリューションを体現する顧客からは目に見え手に取られる具体的なモノです。
自分たちの商品には意図するソリューションが入っているか、そのソリューションは見出したビジネスチャンスや顧客理解に基づいているかを、商品開発やマーケティングでもチェックポイントとして見るといいです。
まとめ
今回はコーヒー飲料の 「ファイア ワンデイ ラテ微糖」 から、商品開発やマーケティングに学べることを見てきました。
最後にまとめです。
商品開発の3つのハードル
- ビジネスチャンスの発見。例: 生活者 (潜在顧客) のライフスタイル変化に伴う新しいニーズ
- ニーズに応えるソリューションの選択と注力
- ソリューションを実現する商品の開発
学べること
- ソリューションと商品を分けて捉えるといい
- ソリューションは解決策 (目に見えない方針) 。商品はお客からは目に見え手に取られる具体的なモノ
- 自分たちの商品には意図するソリューションが入っているか、見出したビジネスチャンスや顧客理解に基づいているかを考え、商品開発での3つのハードルを乗り越えよう
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