投稿日 2021/12/14

アシックスの横展開ビジネスに学ぶ、強みを生かす新サービスのつくり方


今回のテーマは、マーケティングや商品開発です。

✓ この記事でわかること
  • アシックスの BtoB サービス 「ワーキングソリューションシステム」 とは?
  • ワーキングソリューションシステムの本質
  • スポーツ DX の 「TUNEGRID」 を活用した横展開ビジネス
  • マーケティングや商品開発に学べること

この記事を読んでいただきたいのは、マーケティングの仕事に関わっている方です。

その中でも特に、新商品やサービスの企画、新しいアイデアを日々考えている方への参考になればと思います。

取り上げる事例は異業種のことかもしれませんが、他の業界のことも本質まで掘り下げると、自分の業界のヒントになります。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

アシックスの BtoB サービス


今回ご紹介したいのは、アシックスの BtoB サービスです。名前は 「ワーキングソリューションシステムです。

施設や工場における従業員の行動分析ができるサービスです。

ワーキングソリューションシステムでは、導入企業の従業員に専用のデバイスをつけて (例: シューズへの装着) 、専用検知器を設置します。そして、従業員の移動履歴、施設への入退室時刻や滞在時間などの業務中の従業員の行動のデータを収集します。


得られたデータから、業務改善のための課題抽出、改善施策を導入した後の効果検証への活用ができます。

移動軌跡の結果表示イメージ (出典: アシックス

ワーキングソリューションシステムもとになっているのは、スポーツや運動習慣を記録し分析するデータ統合システムの 「TUNEGRID」 です。


TUNEGRID とは


アシックスの TUNEGRID は、カメラやセンサーを使いスポーツ時の選手の動きをデータ化し、集計や分析、他のツールと統合ができるサービスです。

公式サイトでは 「スポーツデータ統合システム」 と TUNEGRID のことが表現されています。私は TUNEGRID は 「スポーツ DX」 と見ました。

例えばの TUNEGRID の使い方は、シューズにセンサーを取り付けたり、専用カメラで選手の映像を撮ることによって、トレーニングや運動量、チームプレー連携をデータで可視化し、適切な練習計画を立てたり試合分析ができます。


TUNEGRID についての詳細は、別の記事で書いています。DX の観点から掘り下げているので、よかったらこちらも読んでみてください。



ワーキングソリューションシステムの本質


アシックスのワーキングソリューションシステムの本質を一言で表現すると、「既存事業からの横展開ビジネス」 です。

ここで言う既存事業とは、スポーツ向けサービス TUNEGRID です。

ワーキングソリューションシステムは顧客を企業にし、サービス内容を従業員の移動や動きの可視化、業務や施設での環境の改善に貢献します。つまり顧客とサービスの両方で、スポーツ領域とはずらした新規事業なのです。

ここでのポイントは、全く新しいサービスではなく、TUNEGRID の技術やノウハウを活かした横展開でのサービスであることです。


学べること


では最後に、ワーキングソリューションシステムのビジネスから、学べることを整理してみましょう。

学びを一言で言えば、「事業開発や新商品・サービスには自分たちの強みを活かそう」 です。

では、強みを活かすためにはどうすればいいのでしょうか?

まずは自己分析と他社分析からの自分たちの強みの棚卸しからです。アシックスのスポーツ向けサービス TUNEGRID の場合は、次のような技術や知見があり、これらを企業向けのワーキングソリューションシステムとして活用したわけです。

✓ TUNEGRID の技術や知見
  • スポーツ時の激しい動きのデータを収集する能力
  • データ集計結果の可視化。例: グラフでのわかりやすい表示
  • 可視化データからの示唆の読み解き能力
  • 利用者へのフィードバック。例: 体の動かし方やトレーニングメニューへのアドバイス

TUNEGRID にはこうした資産とも言えるものがあり、独自資産をベースに新しいサービスである企業向けのワーキングソリューションシステムを開発したのです。

商品開発やマーケティングでは、「自分たちの強みを何か」 は大事な問いです。

新規事業や新サービスの開発、既存事業のリニューアルの時も、「強みは何か」 や 「強みを活かせているか」 を意識して自分たちに問いかけたり、投げかけると良いです

これが今回のアシックスのワーキングソリューションシステムの開発から、私たちが学べることです。


まとめ


今回はアシックスの企業向けサービスから、マーケティングや商品開発に学べることを見てきました。

最後にまとめです。

アシックスのワーキングソリューションシステム
  • 施設や工場における従業員のデータからの行動分析によって、業務改善のための課題抽出、改善施策の導入後の効果検証への活用ができる
  • 本質は、既存事業からの横展開ビジネス
  • 全く新しいサービスではなく、スポーツ向けデータ統合サービス 「TUNEGRID」 の技術やノウハウを活かしている

学べること
  • 事業開発や新商品・サービスには自分たちの強みを活かすとよい
  • 自己分析と他者分析からの強みを把握する
  • 新規事業や新サービスの開発、既存事業のリニューアルの時も、「強みは何か」 や 「強みを活かせているか」 を意識して自分たちに問いかけよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。