今回のテーマは、接客やお客さんとのコミュニケーションです。
✓ この記事でわかること
- マツキヨラボの1人で相談者1000人を対応する店員
- 時には 「商品を買わない選択肢」 も提示するのはなぜか?
- カスタマーサクセスの接客とは?
- マーケティングの格言に見る接客の本質
- 富山の薬屋の 「先用後利 (せんようこうり) 」 と接客
マツキヨラボのある店員の方を取り上げ、マーケティングや販売でのお客さんとの向き合いに学べることを解説しています。
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
マツキヨラボの凄腕の店員
今回の内容は日経新聞の web 記事を読んで、マーケティングや販売について考えさせられたことからです。
以下はその記事からの引用です。
マツキヨココカラ & カンパニーは、首都圏や関西に 「健康」 と 「美」 に重点を置いた次世代型店舗 「マツキヨラボ」 を増やしている。
マツキヨラボ浦和高砂店 (さいたま市) で日々顧客と向き合うのが、管理栄養士の資格を持つ河北暁亜さん (29) だ。サプリメント売り場を担当し、商品の紹介だけでなく食生活の改善などきめ細かいアドバイスを送り続ける。
時には 「買わない選択肢」 も提示する
この方の接客の特徴は相手の立場になることで、相手のペースで話を聴くところから始まります。
先ほどの日経記事から引用します。
河北さんの接客は体調や生活スタイルなどを丁寧に聞き取ることから始まる。
例えばある来店客には中性脂肪コレステロールが高く標準体重を超えていたことに着目。毎月の健康状態や食生活を細かく聞きとり、多く取るべき食材などを紹介するほか、適度な運動なども薦めた。その後体重が8キロ減り 「体調もすこぶるよくなった」 と感謝されたという。
接客ではアドバイスに重点を置き、必要に応じて約30種類のプライベートブランド (PB) を中心としたサプリなど店内の商品を紹介する。河北さんが相談に乗った顧客は1000人を超え、親身な対応で支持を集めている。
河北さんはもともと接客されるのが苦手で、衣料品店などで店員に話しかけられることに抵抗があった。こうした自らの経験を生かして、顧客の話すペースにあわせてじっくり耳を傾けるようにしているという。「なるべくゆっくり話し、相づちや説明は相手が話し終わった後に一呼吸置いて行う」 ことを心がける。
サプリなどでもお客が悩んでいる間にむりやり買わせるようなことはしない。「不本意な買い物にならないように、『買わない選択肢』を用意するのも重要だ」という。
カスタマーサクセスの接客
ここまで見てきたマツキヨラボの店員の方の接客のアプローチには、カスタマーサクセスがあります。
カスタマーサクセスとは、日本語に直訳をすると 「お客さんの成功」 です。
カスタマーサクセスの考え方は、まずはお客の成功ありきです。先にお客の成功があり、巡り巡って自分たちの成功につながります。
マツキヨ店員の方の接客では、時には買わない選択肢も提示します。自分たちが売っている商品を買わないほうがお客さんのためになる、つまりお客の成功になると判断しているわけです。
お客が欲しいのは 「商品」 ではなく 「健康な生活」
少し話を変えますが、マーケティングには 「お客が欲しいのはドリルではなく、穴である」 という言葉があります。
これが意味するのは、売り手と買い手の認識のギャップです。
売り手は 「商品 (ドリル) を売った」 と捉えますが、買い手がやりたかったことは 「ドリルを使って穴を開けること」 です。マーケティングへの示唆として得られるのは、売った商品やサービスの背後にあるお客の望み、奥にある隠れた気持ちまで読み取る重要性です。
ここでマツキヨラボの店員さんの話につなげると、お客が本当に欲しいと思っているのは店頭で売っている 「商品」 というよりも 「健康な生活」 です。
今よりも健康になれる方法が見いだせれば、必ずしも商品を売る必要が無い場合もあります。相手のペースに合わせて生活スタイルや体調を広く聴いているからこそ、時にはお客が商品を買わない選択肢も提示できるのです。
先用後利での価値提供
もう1つ着想を広げてみます。
ご紹介したいのが 「先用後利 (せんようこうり) 」 です。
これは 「富山の薬屋売り」 の話で、販売方法が 「先用後利」 という独特なものです。先用後利とは、先にお客に便益を提供し、後から自分たちの利益がついてくるという考え方です。
富山の薬屋である富士薬品は、お客の自宅に一軒ずつ訪問し薬を置いていきます (配置薬) 。その後にまた定期的に訪問し、利用のあった薬の分だけの代金をもらうというやり方です。
左: 富士薬品の創業当初の徒歩で訪問する営業スタイル|右: 1960年代の置き薬用の箱 (出典: PR TIMES)
ちなみに、配置薬という 「初期費用0円」 「使った分だけ後払い」 というビジネスモデルは、2021年の今から331年前の1690年 (元禄3年) に誕生したと言われています (参考) 。
先用後利は、今回の文脈に当てはめればカスタマーサクセスと共通点があります。
先にお客へのメリットや便益 (ベネフィット) を提供し、お客の成功に貢献します。自分たちの利益は後からで、「損して得とれ」 です。
学べること (まとめとして)
では最後に今回のまとめとして、マーケティングや販売でのお客との向き合いに学べることを整理してみましょう。
カスタマーサクセスの接客
- まずはお客の成功を定義し、お客の成功に貢献する
- 巡り巡って自分たちの成功につながる
お客さんが奥に持っている望み
- 表面的にはお客は商品やサービスにお金を払っている
- ここで終わらず、背後にあるお客の本当の望み、背後にある隠れた気持ちまで理解する重要性
先用後利
- 先用後利 (せんようこうり) は、先にお客さんへのメリットや便益 (ベネフィット) を提供する
- 自分たちの利益は後から。損して得とれ
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