投稿日 2021/12/03

タダでもらえる 「社長のおごり自販機」 の提供価値から、マーケティングに学べること

出典: ITmedia

今回はマーケティングで、提供価値についてです。

✓ この記事でわかること
  • 飲料がタダで手に入る 「社長のおごり自販機」 がおもしろい
  • ある会社でのテスト結果
  • 社長のおごり自販機の提供価値
  • マーケティングに学べること

おもしろいと思った自動販売機を取り上げ、マーケティングの観点から本質と学べることを解説しています。商品開発、新しい企画やアイデアのヒントになればと思います。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

社長のおごり自販機


サントリー食品インターナショナルが、企業向けの自動販売機の新サービス 「社長のおごり自販機」 を発表しました (公式サイトはこちら) 。


使い方は、社員が2人同時に自販機に社員証をかざすと、無料で2本の飲料が手に入ります。

出典: PR Times

自販機に社員証の読み取り機が2台搭載されていて、同時に社員証をかざして10秒以内に商品ボタンを押すと、無料で1本ずつ飲料を購入できる仕組みです。利用できる曜日や時間帯、1人あたりの上限本数などは導入企業が設定できます。

飲料の購入費用は導入企業の負担です。ここから自販機の名前が 「社長のおごり自販機」 になっています。名前は社長ではなくても、「工場長のおごり自販機」 のように導入企業の要望に応じて変えられるとのことです。

社員は無料で飲めますが、会社が飲料代を支払うので、サントリー食品インターナショナルに売上が入るおもしろいビジネスモデルです。


コクヨでのテスト結果


社長のおごり自販機の導入テストをコクヨで実施されていて、興味深かったです。


テスト期間中の1ヶ月で、1000件の利用があったそうです。

アンケート回答者の 97.8% が 「この自販機がコミュニケーションのきっかけになった」 と回答しました。

次のような好意的なコメントがありました。

✓ コクヨでの利用者の感想
  • 今日は一人作業の予定だったが、(同僚に) 「自販機行かない?」 と声をかけてもらい、流れで雑談のきっかけになった
  • ワクワクさと達成感があり、とても楽しかった。いろんな人を誘ってやってみたい!と思いました
  • こんなすてきな自販機が職場にあると思えば、モチベーションが上がります!
  • たまたま同期とすれ違い、数年ぶりに近況を話し合うきっかけになった!


 「社長のおごり自販機」 の提供価値


通常の自販機が便利なのは、スマホや電子マネーカードをかざしたり、現金を入れるだけでその場で飲料などを買えることです。名前に自動という言葉が入っているように人の接客がなく欲しいものが買えます。

社長のおごり自販機は、その場で買えるという今までの自販機の価値に加えて、人と人とのコミュニケーションを活性化し、人間関係や職場の雰囲気をより良くする価値を提供しています。この価値は他の一般的な自販機にはない強みです。

コクヨでは1ヶ月に1000件の利用があり、飲料が1本150円から200円とすると、15万 ~ 20万円の会社負担です。会社からすると社員が元気になり活気が生まれ、風通しが良くなれば費用対効果があると考えるのではないでしょうか。

社長のおごり自販機は 「これまでになかった自販機からの飲料体験」 という独自の価値を提供しています


学べること


では最後に、社長のおごり自販機から学べることを整理してみましょう。

マーケティングの観点からの学びは、「自社商品やサービスから、まわりとのコミュニケーションを促すなど、利用者の周辺領域や人間関係をより良くできないか」 と考えてみると良いです

例えば、社長のおごり自販機のように利用者同士でつながったり、コミュニケーションから生まれる楽しさや絆を感じるなどの体験を意図的に提供できると、他にはない独自性のある価値提供につながります。

その中で、利用者 (お客) が商品・サービスのことを知人や家族に紹介したり、薦めてもらえるという好循環が生まれます。

自社商品やサービスに、今までになかった付加価値として 「利用者への新しい体験を生めないか」 という観点で考えてみると、ヒントが得られます。


まとめ


今回は 「社長のおごり自販機」 を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

社長のおごり自販機
  • サントリー食品インターナショナルの企業向けの自動販売機サービス
  • 社員が2人同時に自販機に社員証をかざすと、無料で2本の飲料が手に入る
  • 飲料は購入費用は導入企業が負担。ここから 「社長のおごり自販機」 という名前に

 「社長のおごり自販機」 の提供価値
  • 人と人とのコミュニケーションを活性化してくれる
  • 人間関係や職場の雰囲気がより良くなり、社員の働きがいを高めることが期待できる

マーケティングに学べること
  • 自社商品やサービスから、コミュニケーションを促すなど、利用者の周辺領域や人間関係をより良くできないかを考えてみよう
  • 例えば、利用者同士でつながったり、コミュニケーションから生まれる楽しさや絆を感じるなどの体験を意図的に提供する
  • さらに、利用者 (お客) が商品・サービスのことを知人や家族に紹介したり薦めてもらえる好循環が起こる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。