投稿日 2021/12/08

野球バットを DX 化するミズノ 「BLAST BASEBALL」 がおもしろい。DX とビジネスモデルに学べること


今回のテーマは、DX とビジネスモデルです。

✓ この記事でわかること
  • ミズノの BLAST BASEBALL とは?
  • BLAST BASEBALL はスポーツ DX
  • BLAST BASEBALL のビジネスモデル
  • DX とビジネスモデルに学べること

この記事を読んでいただきたいのは、DX やビジネスモデルに興味がある方です。ビジネスモデルの事例を知るのが好きだったり、仕事でビジネスモデルを考える役割にある方の参考になればと思います。

ミズノの BLAST BASEBALL とは何か、DX とビジネスモデルの観点からどうおもしろいのかと興味を持っていただいた方にも読んでいただけるとうれしいです。

ミズノの BLAST BASEBALL


今回ご紹介したいのは、ミズノの BLAST BASEBALL です (公式サイトはこちら) 。

バットの持ち手にあるグリップに専用デバイスを取り付け、選手のスイングのスピードや軌道のデータを収集します。測定結果はスマホアプリで見られ、数字や 3D の図と動画で把握できます。

アプリで測定結果が見られる (出典: ミズノ

BLAST BASEBALL でわかる項目 (出典: ミズノ

動画でも確認できる (出典: 日経

値段ですが、バットに取り付けるデバイスの価格は2万1780円 (税込み) です。

サブスクサービスもあり、年間8250円の 「選手モード」 、1万3750円の 「コーチモード」 の2つです。見られる測定項目が限定される無料プランもあります。


スポーツ DX


ミズノの BLAST BASEBALL は、「スポーツ DX」 と見ることができます。

そもそもの DX とは何かですが、DX とは 「事業や経営のコア領域をデジタル化し、ビジネスモデルを進化させること」 です。デジタルを導入することで人や組織を変えたり成長を促し、ビジネスの成果につなげるのが DX です。

このように見えると、「スポーツ DX」 とは次のように表現ができます。スポーツ DX は「スポーツの練習や試合にデジタルを導入し、身体運動の向上やスポーツの楽しさを進化させること」

BLAST BASEBALL に当てはめれば、選手の練習やトレーニングにデジタル端末とサービスを取り入れることで、バッティング技術を向上させてくれます。


BLAST BASEBALL の提供価値


これまでの野球のバットスイングの良し悪しの判断は、感覚的な捉え方しかできませんでした。

鏡に映る自分のスイング、ビデオ撮影で見る映像、監督・コーチやチームメイトからの助言は得られましたが、いずれも見た目や音の感覚を言葉にしたものです。

一方の BLAST BASEBALL は、バットスイングのスピード、スイング角度、ボールに伝わるパワーなどをデータから数字と、3D の図や動画で把握ができます。

アナログ情報や人の目・耳で捉えられる限定な情報ではなく、BLAST BASEBALL はより詳細にデータで取れます。BLAST BASEBALL を使えば、自分のバッティングの特徴として、良い点、改善すべきところが科学的につかめます。

練習や指導に役に立ち、野球がうまくなり、試合でヒットが打てることにつながります。以上が BLAST BASEBALL の提供価値です。

* * *

ここまで、BLAST BASEBALL を DX の視点で掘り下げました。では次にビジネスモデルの観点で見ていきましょう。


BLAST BASEBALL のビジネスモデル


先ほど DX とは 「事業や経営のコア領域をデジタル化し、ビジネスモデルを進化させること」 と書きました。

ビジネスモデルの要素


ビジネスモデルとはシンプルに捉えれば、次の5つの要素から成り立っています。

✓ ビジネスモデルの要素
  1. ターゲット顧客 (市場と顧客) 
  2. 解決する顧客の問題
  3. 解決方法 (ソリューション) 
  4. 顧客への提供価値
  5. 収益モデル

BLAST BASEBALL に見る5つの要素


では、BLAST BASEBALL のビジネスモデルについて掘り下げてみましょう。

1. ターゲット顧客
  • 野球選手
  • コーチ

2. 解決する顧客の問題
  • バッティングがうまくなりたいが、どう練習していいかわからない
  • 選手にどうやって指導していいかわからない

3. ソリューション
  • バットに取り付ける専用デバイスからバットスイングのデータを収集
  • アプリにバッティングの特徴を数字と 3D 図や動画で可視化する

4. 顧客への提供価値
  • 感覚や限定的な範囲でしか理解できなかった自分のバッティングの特徴を、客観的に把握できる
  • 練習が効率的になる
  • 野球がうまくなり試合で活躍できる

5. 収益モデル
  • 専用デバイスの販売
  • 有料アプリによるサブスクでの計測サービス提供

5つ目の収益モデルが興味深いです。

デジタル化することにより、モノの販売から 「モノとサービスの販売」 に進化しました。野球用品というモノを1回売って終わりではなく、サブスクから長く顧客との関係を続けられ、価値提供の対価として課金ができています。


学べること (まとめ) 


今回はミズノの BLAST BASEBALL について、DX とビジネスモデルの観点から掘り下げました。

では最後に、BLAST BASEBALL から学べることを整理しておきましょう。

DX からの学び
  • DX とは事業や経営のコア領域をデジタル化し、ビジネスモデルを進化させること
  • アナログ情報やブロックボックスだったことをデジタル化し、情報を集約・一元管理する
  • DX は価値創出のための手段

ビジネスモデルへの学び
  • ① ターゲット顧客 (市場と顧客) , ② 解決する顧客の問題, ③ 解決方法, ④ 顧客への提供価値, ⑤ 収益モデル
  • 誰のどんな問題に対して、自分たちはどう解決し、商品・サービスから他にはない価値を顧客に提供から対価を得る
  • デジタルを導入しデータ収集からサービス化すると、モノの販売だけではなく 「モノ + サービス」 からの収益モデルにできる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。