投稿日 2021/12/12

覚えておいて損はない 「価値の二階建て理論」 。地ビールブーム終焉に学ぶ、提供価値のつくり方


今回のテーマは、マーケティングと商品開発です。

✓ この記事でわかること
  • かつての地ビールブームの終焉
  • 一過性ブームの要因
  • マーケティング理論 「価値の二階建て理論」 からの掘り下げ
  • マーケティングや商品開発に学べること

覚えておいて損はない 「価値の二階建て理論」 というマーケティングのフレームを、地ビールブームの終焉という事例に当てはめて解説をしていきます。

マーケティングのものの見方や考え方、商品開発の参考になればと思います。よかったら最後までぜひ読んでみてください。

クラフトビールの成長


日経新聞の記事に、クラフトビールの成長が続いているということが書かれていました。

以下は記事からの引用です。

クラフトビールの醸造所は増加傾向が続いている。酒類容器製造、きた産業 (大阪市) によると、醸造所の数は9月末時点で528カ所に上り、5年前から2倍近く増えている。ビールを小規模生産できるようになった1994年以降で最多に達し、規制緩和直後の地ビールブームを上回る勢いを見せる。


地ビールブーム当時は、ビール醸造に精通した職人の確保が難しく、品質が安定しない醸造所が少なくなかった。みやげ物として売られることもあり、価格も高めに設定されていた。「高かろう悪かろうのイメージが付いた」 (業界関係者) こともあり、固定ファンを育てられずにブームは数年で終わった。

地ビールブームの終焉


注目したいのは、引用内の最後のほうに書かれていたことです。

地ビールの業界関係者の声で 「高かろう悪かろうのイメージが付いた」 と。固定ファンがつかず、地ビールのブームは数年で終わりました。

地ビールのブームが一時的だったのは、次のような要因からでした。

地ビールブーム当時は、ビール醸造に精通した職人の確保が難しく、品質が安定しない醸造所が少なくなかった。みやげ物として売られることもあり、価格も高めに設定されていた。

ブーム終焉の理由


地ビールのブームが終わってしまった理由を、「価値」 をキーワードに紐解いていきましょう。

補助線としてご紹介したいのが 「価値の二階建て理論」 です。これは私が勝手にそう言っているものですが、覚えておいて損はないマーケティングの考え方や価値への見方です。

価値の二階建て理論とは、お客が得る価値を大きく2つに分けて、建物の一階と二階のように上下で捉えることです。一階と二階の価値は具体的には次のようになります。

✓ 価値の二階建て理論
  • 一階: 基本的な価値。機能や性能からの利便性や使いやすさ
  • 二階: 付加価値。デザインのかっこよさ・かわいさ。使っていて楽しいなどの感情的な価値

建物がそうであるように、一階部分の価値がベースになり、二階としての価値がその上に載っています。

逆に言えばどんなに二階の価値が魅力的でも、土台となる一階の価値が弱かったり他と比べて劣っていれば、お客から選ばれにくいわけです。


地ビールに見る 「価値の二階建て理論」 



では、「価値の二階建て理論」 をかつての地ビールに当てはめてみましょう。

✓ 「二階建ての価値」 からの地ビールの分析
  • 一階: ビールとしての品質が安定していなかった (ビール醸造に精通した職人の確保が難しいことが背景) [高くない品質]
  • 二階: その地元で売られ、そこでしか飲めないビール [希少価値]

地ビールのブームが終焉したのは、「高かろう悪かろう」 になってしまったことでした。

ビールとしてのおいしさ・品質は高くなく、一階の価値が弱かったわけです。にもかかかわらず、地域限定という希少性がアピールされ、お土産物屋さんではコンビニやスーパーで買えるビールよりも高い値段で売られていたわけです。

消費者は一度は地ビールを珍しさや旅行先の気持ちの盛り上がりから買っても、リピート購入というもう一度お金を払って買いたいとは思えませんでした。

以上のように、地ビールは一階の価値が提供できず、二階の価値のみで成り立っていたのです。


学べること


では最後に地ビールブームの終焉から、私たち学べることを整理してみましょう。

学びを一言で表現すれば、「お客への提供価値を一階と二階に分けて両方があるかを見極めよう」 です。

二階の価値、例えば 「見た目の良さ」 や 「使う楽しさ」 はわかりやすいので、目が向きがちです。ただし二階の価値は一階部分の価値があってこそです。ここがないと、土台のない全体では弱い価値になってしまいます。

お客さんがお金を払うのは、全体として価値があるからです。

価値の二階建て理論を、新しい商品・サービスの企画やアイデアを考える時、既存商品のリニューアル、あるいは競合の商品やサービスを分析する時にぜひ使ってみてください。

価値の二階建て理論は、覚えておいて損はないマーケティングのフレームです。


まとめ


今回はかつての地ビールブームの終焉から、マーケティングで学べることを 「価値」 をキーワードに見てきました。

最後にまとめです。

地ビールブームの終焉
  • ブーム当時は、ビール醸造に精通した職人の確保が難しく、品質が安定しない醸造所が少なくなかった
  • 土産物として高い価格に設定され 「高かろう悪かろう」 のイメージに
  • 固定ファンを育てられずにブームは数年で終わった

価値の二階建て理論
  • 一階: 基本的な価値。機能や性能からの利便性や使いやすさ
  • 二階: 付加価値。デザインのかっこよさ・かわいさ。使っていて楽しいなどの感情的な価値

学べること
  • 地ビールブームの終焉は、二階の価値だけで一階価値が弱かったから
  • マーケティングや商品開発への学びは、お客への提供価値を一階と二階に分けて両方があるかを見極める重要性
  • 二階の価値は一階部分の価値があってこそ。一階価値がないと全体では弱い価値になってしまう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。