#マーケティング #顧客ニーズ #変化
2025 年で発売 50 年を迎えた森永製菓のハイチュウが好調です。国内売上は過去最高を記録し、海外市場でも快進撃が続いています。
もしヒット商品に安住していたら、今のグローバルな成功はなかったかもしれない――。
50 年愛され続けるハイチュウの歴史は、変化し続けることの意味と大切さを教えてくれます。
森永製菓のハイチュウの進化の歴史
1975 年に発売された当初のハイチュウ。現在とは中身もパッケージも異なる (出典: 日経クロストレンド
1975 年に発売されたハイチュウは、50 年の間に中身からパッケージまで変化を重ねてきました。
注力顧客のシフト
発売当初のハイチュウは、大人向けの高級菓子として登場しました。
こってりした洋食やスナック菓子が普及していた時代に、あえて酸味とすっきりした後味を重視。「ハイ」 グレードな 「チュウ」 イングキャンディーとして、ミルクキャラメルの技術を生かしながら成人層を狙いました。
中身の変更
その後は、ターゲット顧客や時代の変化に合わせて、製品の中身も変えていきました。
1986 年には子ども・ティーン向けに刷新し、紙箱から持ち運びやすいスティックタイプに変更しました。
出典: 日経クロストレンド
1992 年には 10 粒入りへの増量とグレープ味の投入を行いました。1997 年には製法を見直してジューシーさを高めました。
2002 年には密封包装 (フィンシール) を採用し、年間を通じて安定した柔らかさを実現しました。
出典: 日経クロストレンド
2013 年には製品構造を反転させました。
出典: 日経クロストレンド
それまでは果汁の味わいが強い色付きの生地を白い生地で包んでいましたが、外側に色付きの生地を置く現在の形に変更。口に入れた瞬間からフルーツ感を味わえる構造になりました。
2022 年には、訴求の軸をジューシーさから食感へ移しました。
巣ごもり需要でグミが伸びた背景に、かむことによるストレス解消ニーズがあると捉え、かみ応えのある食感を重視。定番のスティックタイプ 「グリーンアップル」 を終了し、「カリじゅわ」 食感を売りにした 「うまイチュウ 青りんご味」 を投入しました。
海外へも展開
ハイチュウは海外売上が国内を上回る規模に成長し、グローバルブランド 「HI-CHEW」 になりました。
出典: 日経クロストレンド
2008 年のアメリカへの本格進出以降、販路を拡大。2024 年には世界観を統一するため、国内版ロゴも英字メインの 「HI-CHEW」 に変更しました。
マーケティング 4P 視点からの変化の歴史
ハイチュウの 50 年は、顧客ニーズの変化に応じて、マーケティング 4P (Product, Price, Place, Promotion) を連動させてきた歴史でもあります。
時代ごとの顧客ニーズと 4P の変化を見ていきましょう。
1986 年: 想定外のターゲットに気づき 4P を全面刷新
当初想定した成人層ではなく、実際には子どもが中心に買っていることがわかりました。
- Product: 三層構造から二重構造 (あんこ巻き製法) へ変更。紙箱から持ち運びやすいスティックパックへ刷新
- Promotion: 成人向けからティーン向けへ訴求を転換
「誰が買っているのか」 という顧客理解の修正が、製品設計や販売形態を変えたのです。
2000 年: 競合激化という外部環境変化への対応
競合品が増える中、ハイチュウには 「選ばれる理由」 を強める必要がありました。
- Product: 10 粒から 12 粒へ増量し、横長パッケージに変更
- Place: 売り場での占有面積を広げ、存在感を強化
- Price: 価格を据え置き、お得感を創出
量を増やす 「お得感」 と、売り場で目立つ 「存在感」 を同時につくりました。
2022 年: 「ジューシー」 から 「食感」 への転換
コロナ禍の巣ごもりで、かむことによるストレス解消ニーズが顕在化し、グミ市場が急成長しました。
- Product: 25 年ぶりに品質を大幅改良し、一かみ目からベストな食感を実現。「うまイチュウ 青りんご味」 も投入
- Promotion: 訴求軸を 「ジューシーさ」 から 「食感」 へ変え、パッケージでも前面に訴求
長年の訴求ポイントを捨て、かむことでポジティブになれる食感へ転換した結果、売上は V 字回復しました。
2024 年: グローバル化という新たな顧客文脈への対応
海外売上が国内を超える中、世界で一貫したブランド体験が求められるようになりました。
そこでパッケージを英字メインのロゴに変え、世界共通のブランドイメージを確立しました。
本当の競争相手は 「変わり続ける顧客ニーズ」 である
ハイチュウの 50 年が教えてくれるのは、真の競争相手は他社製品ではなく、「変わり続ける顧客心理や顧客ニーズ」 だということです。
顧客満足は 「飽き」 の始まり
顧客の満足は放置すれば 「当たり前」 になり、やがて 「飽き」 へと変わります。
40 年続いたスティックタイプの 「グリーンアップル」 の終売は象徴的です。定番に安住せず、新しい食感の商品へ切り替えました。
売り手のマンネリこそが、お客さんを失う大きなリスクなのです。
先回りして価値を提供する
人の心理を読み、行動と期待する体験を予測する。これが変化に先回りする力の源泉です。
ハイチュウは定番商品としての地位に安住せず、製品構造の反転、食感への訴求転換、ロゴの英字化など、飽きが来る前に新しい魅力をつくってきました。
コロナ禍では、「なぜグミが売れているのか?」 という問いから、ストレス解消やかみ応えへの欲求を捉えました。
グミの成長を変化の兆しとして読み、製品改良とメッセージ転換を先回りして実行したことが、V 字回復につながりました。
真の競争相手を見誤らない
本当の競争相手は 「変わり続けるお客さんのニーズ」 です。
業界内のシェア争いや他社の動向ばかりを見ていては、急激な環境変化に対応できません。ハイチュウが向き合ってきたのは、ライバル菓子メーカーよりも、変化する消費者の嗜好でした。
潜在ニーズを探求し、自らを変え続ける姿勢が、50 年ブランドを若々しく保っています。
変化し続けることがロングセラーへの道
ハイチュウの歴史は、変わり続ける顧客ニーズに合わせて、マーケティング 4P を更新してきた歴史です。
顧客ニーズが変われば、製品の中身、価格、パッケージ、売り場での見せ方、訴求メッセージも変わります。大切なのは、お客さんが飽きる前に自ら変わる意志です。
「成功に甘んじることなく、変化を恐れずにチャレンジし続ける」 という姿勢に、ハイチュウが 50 年愛されてきた理由があります。
変化し続けることこそが、変わり続ける顧客ニーズと向き合う方法なのです。
まとめ
ハイチュウの 50 年の歴史から、「顧客ニーズとマーケティング 4P の連動」 を取り上げました。
学びのポイントをまとめておきます。
- 顧客ニーズが変われば、マーケティング 4P (Product, Price, Place, Promotion) が連動して変わる。製品だけでなく、価格、売り場、訴求メッセージまで一貫して見直すことが重要
- 顧客満足は 「飽き」 の始まり。放置すれば 「当たり前」 になり刺激を失う。定番商品に安住せず、顧客が飽きる前に自ら変化し続ける姿勢が必要
- 売り手のマンネリこそが最大のリスク。「こういうものだ」 と決めつけず、長年の訴求ポイントを捨てる覚悟も時には必要。変化を恐れない姿勢が競争力を生む
- 競合の動向よりも、顧客の行動の背景を読み解く。「なぜ売れているのか」 から潜在ニーズを予測し、先回りして体験価値を提供する
- 本当の競争相手は 「変わり続ける顧客ニーズ」 。生活者環境やビジネス環境、顧客心理・嗜好の変化と向き合い、自らを変化させ続けることがロングセラーへの道




