#マーケティング #ファンコミュニティ #エクスターナルマーケティングとインターナルマーケティング

一般的には、ファンコミュニティは顧客の 「囲い込みの施策」 として捉えられます。

そんな中で丸亀製麺は、ファンコミュニティのことを従業員満足度の向上のためとしても位置づけています。

 「外向き」 と 「内向き」 という両方の施策をつなげることにより、マーケティングが相互に強化されるループが回ります。丸亀製麺の事例から、具体的にそのメカニズムを紐解きます。

丸亀製麺のファンコミュニティ 「Mochi-Mochi クラブ」 

出典: 丸亀製麺

丸亀製麺は 2023 年 11 月から、オンラインファンコミュニティ 「丸亀製麺 Mochi-Mochi クラブ」 を運営しています。

Mochi-Mochi クラブは、うどん好きが集まり交流できるオープン型のコミュニティです。

特徴的なのは、割引クーポンなどの金銭的な特典ではなく、「達成感」 と 「所属意識」 を提供していることです。

ユーザーは食レポや食べ方提案を投稿し、いいねやコメントでつながります。投稿やリアクションに応じてポイントが貯まり、ランクが上がると丸亀製麺の限定アイテムがもらえます。

注目したいのは、Mochi-Mochi クラブというファンコミュニティがお客さん向けの施策にとどまらず、従業員満足度の向上も同時に狙っていることです。ファンと従業員が交流するバスツアーを開催したり、ファンのメッセージを冊子化して全店舗に配布したりと、現場にも顧客の熱量を届ける要素が組み込まれているのです。

エクスターナルとインターナルの相互強化ループ

この事例は 「エクスターナルマーケティング」 と 「インターナルマーケティング」 を接続させ、相互に強化させるループを回している好例です。

まずはエクスターナルマーケティングから見ていきましょう。

エクスターナルマーケティングの設計

丸亀製麺は Mochi-Mochi クラブを通じて、外側に向けたマーケティング活動を展開しています。

■ 顧客体験の流れをつくる

丸亀製麺は、SNS 、アプリ、ファンコミュニティという 3 つのチャネルを役割分担させています。

SNS はブランド好意度の醸成、アプリは来店促進、そして Mochi-Mochi クラブは情緒的なつながりの形成です。興味深いのは、ファンコミュニティである Mochi-Mochi クラブのことを 「店舗外でも顧客とつながる場」 として位置づけている点です。

来店前後にも接点を維持できることにより、認知から興味、利用、再利用、そして推奨へという顧客体験の流れが途切れない設計になっています。

■ 金銭的インセンティブではなく承認欲求に訴える

通常、企業がクーポンや割引でお客さんを引きつけようとするのに対し、丸亀製麺は 「達成感」 と 「所属意識」 という情緒的な価値を Mochi-Mochi クラブで提供しています。

投稿やいいね、コメントに応じてポイントを付与し、ランクが上がる仕組みです。ランクに応じてデジタルバッジ、オリジナルトロフィー、名前入りの 「釜揚げうどん桶」 といった限定アイテムがもらえます。これらはコミュニティ内での承認や特別感を生むことが期待できます。

結果として、月間 1500 件の投稿、アクティブ率 10% 超という高い活動量を維持しています (参考情報) 。同規模コミュニティの平均が 10% 未満であることと比べると、Mochi-Mochi クラブの設計がうまく機能していることがわかります。

■ UGC による来店動機の形成

ユーザーが Mochi-Mochi クラブに投稿する情報は、主に新商品の食レポや食べ方提案、地域限定商品の紹介です。

これらの UGC が他のユーザーに伝播し、丸亀製麺で 「食べてみたい」 「行ってみたい」 という来店動機を形成します。KPI とする好意度と来店頻度でも、ライトファンからコアファンへの移行と来店の増加が確認されています。

外側に向けたエクスターナルマーケティングとして、認知から指名される状態への流れが機能している証拠です。

インターナルマーケティングへの接続

丸亀製麺の真に優れている点は、エクスターナルの施策をインターナルマーケティングと接続していることです。

■ ハピカン繁盛サイクル

丸亀製麺には 「ハピカン繁盛サイクル」 という経営思想があります。

ハピカン繁盛サイクルとは、従業員の幸せを向上させる取り組みを重ねることで内発的動機が育まれ、顧客に提供する食の感動の質が深化し、それが店舗の繁盛をもたらすという丸亀製麺の考え方です。

ファンコミュニティの Mochi-Mochi クラブは、ハピカン繁盛サイクルの起点として機能するよう位置づけられています。外向きの顧客接点づくりでありながら、同時に内向きの従業員体験の向上も狙っているわけです。

■ 従業員とファンの直接交流

インターナルマーケティングの具体的な施策として、丸亀製麺の創業 25 周年に店舗を巡るバスツアーが企画され、従業員とファンが直接交流する機会をつくりました。

丸亀製麺の店舗内での普段のやりとりを超えて、お客さんの熱量に直接触れる場でした。また、Mochi-Mochi クラブに書き込まれたファンの思いのこもったメッセージを冊子化し、全店舗に配布しました。感謝のメッセージを見て涙ぐむ従業員もいたといいます。

これらは従業員が 「自分たちはこういう価値をお客さんに届けているんだ」 という実感を得る機会であり、コンセプトを誇りを持って体現できる状態をつくる活動です。

■ 現場の納得感と自然な体現

サービス業では、現場でのお客さんとのやりとりがそのまま顧客体験の質に直結します。

どれだけ広告などの外側のコミュニケーション表現が優れていても、最後にお客さんが触れるのは現場の人や商品、そして現場の空気です。丸亀製麺は、ファンの声を従業員にフィードバックすることで、現場に 「自分たちはお客さんにこれだけ支持されている」 という納得感を与えています。

これが従業員満足度の向上とサービス品質の向上につながり、結果として顧客体験がさらに良くなるという好循環が生まれることでしょう。

相互強化ループの実現

丸亀製麺の事例で学べるのは、エクスターナルとインターナルを別々の施策として扱うのではなく、両者が相互に機能するよう設計している点です。

■ 外側が強化されると内側が誇りになる

ファンコミュニティでお客さんの熱量が可視化され、UGC が広がり、来店が増えるという外側の成果が出ます。

これを従業員にフィードバックすると、現場に 「自分たちの仕事がこんなに支持されている」 という誇りが生まれます。バスツアーやメッセージ冊子の配布は、その実感を生む装置です。外側の施策が内側の土台を強化する流れです。

■ 内側が整うと外側がさらに強くなる

従業員の内発的な動機が育まれ、商品やサービスの品質が向上すると、店舗での顧客体験の質が上がります。

すると投稿内容もポジティブになり、UGC の質が高まり、新しいファンが増えます。従業員とファンをつなぐイベントを重ねることで、外と内の相互強化ループが回り続けます。

まとめ

丸亀製麺のファンコミュニティ 「Mochi-Mochi クラブ」 から、エクスターナルマーケティングとインターナルマーケティングの観点で学べることを掘り下げました。

学びのポイントをまとめておきます。

  • エクスターナル (外側への施策) とインターナル (内側への施策) は別々ではなく、両方をつなげ、相互に影響し合い強め合う関係をつくることが理想
  • インターナルは顧客価値の土台として機能する。どれだけ外側の表現が優れていても、最後に顧客が触れる現場の人や空気に乖離があればコンセプトは崩れてしまう
  • 外側が強化されると現場に誇りが生まれ内側が強まり、内側が整うと顧客体験の質が上がり外側がさらに強化される
  • 顧客向けの施策を設計する際は、それが従業員の誇りや納得感につながる構造になっているかを同時に考えることにより、エクスターナルとインターナルマーケティングが有機的に機能する