#マーケティング #パーパスブランディング #本
社会やお客さんに 「どんな "喜び" を届けたいのか」 。この問いに向き合うことから、企業の進化は始まります。
今回は 「パーパスブランディングの教科書 - 人材難時代に選ばれ続けるブランド戦略の全手順 (羽田康祐 k_bird) 」 という本を取り上げます。
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この本から、パーパスという 「社会的な存在価値」 に、感情移入を生むブランディングをかけ合わせる 「パーパスブランディング」 の考え方と実践手順を考えます。
本書の概要
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本書は、人材難時代に企業が 「指名で選ばれ続ける存在」 になるための全社的な戦略として、パーパスブランディングの体系的な手順を解説しています。
経営・組織・人材・マーケティングを一本の軸で統合し、「社会からの共鳴」 によって自社商品がお客さんから選ばれ、従業員は働きがいを見出し、採用もうまくいく。
パーパスを経営の根本的な存在として捉え直し、従業員、応募者、顧客、社会とのつながりを再設計する方法を 「Brand PRISM」 という独自フレームワークを用いて体系的に示す実践的な本です。
パーパスブランディング
なぜ今、パーパスブランディングなのか。
まずは、そもそものパーパスとは何かから見ていきましょう。
パーパスとは何か
あなたの会社は 「なぜ存在するのか?」 と問われたとき、どう答えるでしょうか?
企業は 「当社は 〇〇 を提供しています」 「自社の強みは □□ です」 と、自分たちの視点で語るものです。しかし、パーパスはそうではありません。
パーパスとは、企業が社会に対してどのような存在価値を提供できるかを定義する 「相手目線の意志の言語化」 です。
ここには重要な視点の転換があります。自分たちにとっての 「存在意義」 ではなく、相手にとっての 「存在価値」 を問うのです。主語は 「私たち」 ではなく、「社会」 や 「相手」 でなければなりません。
例えば、水処理ソリューションを提供する企業ならパーパスはこうなります。
パーパスは 「私たちは水処理技術のリーディングカンパニーです」 ではなく、「世界中の人々が水の問題で悩まなくてもいい社会を実現する」 。
製品の機能やスペックから、社会に実現したい価値へと視点を社会的・顧客的な目線にして転換したものがパーパスです。
パーパスは、受け取る立場によって、それぞれ異なる意味を持ちます。
- 経営にとっては、社会に向けた価値提供の指針
- 採用での入社希望者にとっては、選ぶ理由
- 従業員にとっては、働く意味
パーパスは、組織に誇りと思えるエネルギーを与え、従業員エンゲージメント (会社への所属感や愛着) を高め、離職を防ぎ、持続的な競争力の源泉となる 「見えない無形資産」 となります。
パーパスブランディングとは
パーパスに、ブランディングをかけ合わせたものが 「パーパスブランディング」 です。
パーパスに 「感情移入」 を仕掛けていくのがブランディングの役割です。
どのようなモノやサービスも、独自の概念を築き、感情移入が伴ったとき、その人にとっての 「ブランド」 に変わります。ブランディングとは、その企業や商品ならではの独自の 「概念 (= 意味) 」 を築き、感情移入を促すことで、指名で選ばれる存在にしていく取り組みです。
パーパスとブランディングがかけ合わさったパーパスブランディングとは、「社会的な存在価値」 と 「感情移入」 を掛け算しながら、経営・組織・人材・マーケティングを横断して機能させ、指名で選ばれる存在にしていく活動です。
目指すのは、自社の 「ビジネス目的」 と 「社会目的」 の一致です。事業活動の成功が、社会をより良くすることにつながっている構図をつくり上げます。社会的な存在価値を起点に、共鳴と誇りを生み出し、社内外のステークホルダーとの連帯・共創を実現するのです。
パーパスブランディング実践への準備
パーパスブランディングの中身に 「説得力と再現性」 を持たせるためには、客観的な環境分析による戦略の基盤づくりが不可欠です。
環境分析には 「PEST 分析」 と 「3C 分析」 を使います。
PEST 分析
PEST 分析 (Politics, Economy, Society, Technology) は、多くの人が外部環境分析として知っているでしょう。
しかし本書では、PEST 分析は現状把握のためにとどまらず、「未来のチャンスを組織で発見するための土台づくり」 として位置づけられます。
ポイントは 「過去と現状の把握」 ではなく、「未来へのヒント」 を探ること。そのためには、変化を 「自社にどう引き寄せるか?」 を中心に分析・議論します。
- その変化は、自社のどの事業・ブランドに影響するのか?
- 自社にとって、リスクになるのか? それともチャンスか?
- 何が足りないか?
ここで重要なのは、正解を出すことではなく 「見方を揃えること」 です。
異なる部門・職種のメンバーが、同じ変化を見つめ、それぞれの立場から意味づけを試みる。このプロセスがあるからこそ、PEST 分析から 「組織の共通言語」 が生まれ、後のパーパスや戦略にも一貫性が生まれます。
3C 分析
PEST 分析で見えた新たなニーズ・市場機会をもとに、「価値創造のための勝ち筋」 を描くための思考フレームが 3C 分析です。
重要なのは、分析する順序です。PEST 分析で得られた新たなニーズや市場機会を元に、次の順序で進めます。
- どのような市場 (Customer) に、どのような新たなニーズや機会があるか?
- その市場にどのような競合 (Competitor) が存在し、どのポジションを占めているか?
- その中で、自社 (Company) の強み・独自性は何か? どの立ち位置を取るのか?
Customer 、Competitor 、Company の順序で考えることで、外部起点で自社の価値を再定義できます。3C 分析は、「私たちは、どんな未来のために、どんな立ち位置で、どんな価値を届けていくのか?」 という、ブランドの根幹を言語化する戦略的なアプローチです。
Brand PRISM
PEST と 3C で構造的な分析で土台を築いた後、いよいよパーパスを具体的な 「社会に共鳴されるストーリー」 へと落とし込みます。
企業活動全体を貫く軸を設計するためのフレームワークが 「Brand PRISM」 です。
パーパスブランディングを構造化する 7 ステップ
Brand PRISM は、「誰の、どんなうれしさ・喜びが広がることで、どんな社会が実現するのか?」 というパーパスストーリーを段階的に描く設計になっています。
7 つのステップで構成されます。
- 価値観ペルソナ: 最も重要な顧客像とその価値観を定義する
- ブランド提供価値: 顧客に提供できる実利的 & 感情的なうれしさを明確にする
- ブランドパーパス: そのうれしさの先に、どんな社会を実現したいかを描く
- ブランドパーソナリティ: ブランドが共有すべき価値観とふるまいを設定する (ブランドに人格を持たせる)
- ブランドポジショニング: 相手の 「誰の中で」 「どんな役割」 を果たすのかという立ち位置を定義する
- ブランドアクト: 社内外の行動、施策として実装する
- ブランドステートメント: パーパスを言語化したスローガン・宣言文として発信する
7 つの順番には意味があります。企業内部の狙いや意図から始めるのではなく、社会や顧客といった 「外部視点」 からスタートします。
Brand PRISM は、企業都合の自己満足的なパーパスではなく、「相手や社会から共鳴され、選ばれる存在価値」 を描き出すことができるよう設計されています。
進め方
パーパスブランディングは、「私たちはどうありたいか?」 の前に、「誰に、どんな喜びを届けたいのか?」 という外部視点から始まります。
価値観ペルソナ
そこで最初にくるのが ① の 「価値観ペルソナ」 です。最も重要な顧客像とその価値観を定義します。
- 誰の、どんな悩みを軽くしたいのか?
- 誰の、どんな理想を実現したいのか?
- 誰の、どんな喜びに貢献したいのか?
こうした問いへの答えていきながら、注力顧客像を具体化し、特に想定顧客は何に価値を見出したり大切にしているかの価値観を理解します。
ブランド提供価値
次の ② の 「ブランド提供価値」 では、理解した注力顧客に提供できる実利的または感情的な喜びを明確にします。相手がうれしいと思うことに対して、自分たちはどんなことを顧客価値として届けるかです。
顧客価値は 3 つの層で考えます。実利価値、感情価値、自己実現価値です。
ブランドパーパス
③ のブランドパーパスでは、視点をさらに広げます。お客さんにもたらしたい 「喜び (顧客価値) 」 の先に、どんな社会を実現したいかを描きます。
例えば介護保険商品を扱う企業なら、「介護や認知症に備える保険商品を提供する」 から 「介護や認知症ケアで悩むことなく、安心して暮らせる社会を支える」 へ。提供する価値が社会全体に行き渡ったときに、どのような未来が実現されるのかを 「社会視点」 から構想します。
ブランドパーソナリティ
④ の 「ブランドパーソナリティ」 は、ブランドが共有すべき価値観とふるまいを設定します。パーソナリティというブランドに人格を持たせるイメージです。
ブランドパーソナリティは、パーパスのことを相手 (顧客や社会) が 「自分ごととして感じられるストーリー」 に変えるカギを握ります。
例えば、「人々に勇気を届けたい」 というパーパスでも、親しみやすいユーモアな人格で後押しするのか、誠実な対話で静かに背中を押すのか、あるいは斬新なアイデアで強力に引っ張っていくのかによって、ブランドとの感情的なつながりが変わります。
ブランドポジショニング
その次が ⑤ の 「ブランドポジショニング」 です。相手の 「誰の中で」 「どんな役割」 を果たすのかという立ち位置を決めます。
パーパスが 「社会における存在価値」 を描くものなら、ポジショニングは 「市場における選ばれ方」 を設計するものです。パーパスで理想の社会を描き、ポジショニングによって 「その未来に向かうためのブランドの役割 = 立ち位置」 を設定します。
ブランドアクトとブランドステートメント
パーパスブランディングを実行するにあたって、パーパスを言語化した言葉をスローガンや宣言文として発信します。
パーパスストーリーを、実際の社内外の行動・施策 (ブランドアクト) と、言語化されたスローガン・宣言文 (ブランドステートメント) として発信し、一貫性をもって社会に実装していきます。
外部起点で描く 「社会的な存在価値」
本書が一貫して強調するのは、「外部起点」 という視点です。
少なくない企業は、自社の技術や製品、組織にある想いから出発してパーパスをつくったり語ろうとします。しかし、それでは社会や顧客の共鳴を得られません。
外部視点とは、「私たちはどうありたいか?」 ではなく、「誰に、どんな喜びを届けたいのか?」 になることです。
外への視点の転換がパーパスブランディングの出発点です。PEST 分析で 「未来の兆し」 を捉え、3C 分析で 「戦う場所と強み」 を明確にする。そして Brand PRISM で 「社会に共鳴されるストーリー」 へと落とし込む。
本書 「パーパスブランディングの教科書」 が提示するのは、単なる理念づくりではありません。待遇競争を超え、人材難の時代を生き抜き、「社会から選ばれ続ける価値ある存在」 になるための再現性のある手順です。
パーパスは組織に誇りを与え、従業員の会社への誇りや意欲・やりがいを高め、離職を防ぎ、採用力を強化し、商品・サービスをお客さんに選んでもらえるという持続的な競争力の源泉となります。そして何より、事業の成功が社会をより良くすることにつながる。そんな未来を描くためにあるのが 「パーパスブランディング」 です。
あなたの会社は、誰に、どんなよろこびを届けたいですか?
まとめ
書籍 「パーパスブランディングの教科書 - 人材難時代に選ばれ続けるブランド戦略の全手順 (羽田康祐 k_bird) 」 を取り上げ、学べることを見てきました。
学びのポイントをまとめておきます。
- パーパスブランディングは、パーパス (社会に対する存在価値) × ブランディング (感情移入) をかけ合わせ、経営・組織・人材・マーケティングを一本化して 「指名で選ばれ続ける」 状態をつくること
- パーパスは自社視点の 「存在意義」 ではなく、社会や顧客にどのような 「存在価値 (うれしさ・喜び) 」 を提供できるかの定義
- パーパス策定には PEST 分析で多角的に 「未来のチャンス」 を組織の共通言語として捉える
- 3C 分析で 「新たなニーズ」 を起点に 「誰 (顧客) の中で、他にどのような競合がいて、どんな立ち位置 (自社) 価値をつくるか」 という戦略的な勝ち筋を描く
- Brand PRISM でパーパスブランディングを体系化し実行する
- 7 つのステップで構築。① 価値観ペルソナ → ② 提供価値 → ③ パーパス → ④ パーソナリティ → ⑤ ポジショニング → ⑥ アクト → ⑦ ステートメント
- 「自分たちはどうありたいか」 よりも、「誰に、どんな喜びを届けたいか」 。この視点転換により、常に社会・顧客視点からはじめ、共鳴され選ばれる存在価値を生み出す
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