投稿日 2022/11/16

インスタで思わず買ってしまう心理と行動を、Google の 「パルス型消費」 から読み解く


今回のテーマは、消費者の購買心理と行動です。

おもしろいと思った SNS での買い物の調査結果を取り上げ、Google が提唱する消費者理論から掘り下げていきます。

✓ この記事でわかること
  • SNS での買い物の実態 (調査結果) 
  • Google が提唱する 「パルス型消費」 とは
  • パルス型消費が起きる人の心理と行動

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

SNS での買い物実態


ネオマーケティングが 「SNS での商品購入に関する調査」 を発表しました (2022年8月のリリースはこちら) 。

調査は、2022年7月5日 (火) ~ 2022年7月7日 (木) の3日間に、全国20 ~ 69歳までの男女984名を対象にした行われました。

SNS を見て買い物をする人の割合


調査結果を見ると、各 SNS において、その SNS を見て 「よく購入する」 「時々購入する」 の2つの合計は、いずれも4割を超えています。

  • Instagram: 48.3% (n=557) 
  • Pinterest: 48.2% (n=110) 
  • TikTok: 44.8% (n=174) 
  • YouTube: 43.7% (n=813) 
  • Twitter: 41.8% (n=649) 

それぞれの SNS で n が異なるのは、分母を利用者としているからです。

買うつもりがなかったのに買った


興味深いのは、購入した商品を SNS で見る前から買う予定があったかどうかの結果でした。

インスタで購入した人のうち、75.9% が 「買う予定がなかった」 と回答しています。ツイッターや LINE でも7割超でした。

買う予定がなかったと回答した人の割合 (出典: 日経


パルス型消費


ここまでの話、SNS での購入予定がないものを買ってしまったという話につながるのが、Google が提唱している消費者行動理論の 「パルス型消費」 です。

パルス型消費とは


パルス型消費とは、スマホを操作している時に気になる商品を発見し、瞬間的に買いたい気持ちになり購入を完了させる消費者行動です。Google が2019年に打ち出しました。

従来の消費行動で一般的に言われていたのは、購買プロセス AIDMA の 「認知 - 興味 - 欲求 - 記憶 - 行動」 が徐々に進み、階段を上がっていくようなプロセスでした (ジャーニー型購買プロセスで下図の左) 。

パルス消費の特徴は瞬間的に買いたい気持ちが生まれ、一気に欲しいまで駆け登ります (右側がパルス) 。
左は従来の 「ジャーニー型」 、右が 「パルス型消費」 (出典: Think with Google

パルス型消費の具体例


パルス型消費の実際のイメージとして、Google は次のように説明しています。

 「パルス型消費行動」 の特徴として、特定の商品を購入する意図を持たない情報収集から開始する場合が多いことが挙げられます。

具体的には、ひどい花粉症に悩んでいる人が、「花粉症の時期には沖縄に旅行にいく」 というブログをスマホで目にした結果、衝動的に沖縄旅行を予約してしまうといった行動です。

この例でいえば、花粉症に悩んでいる人は多くの場合すでに薬を飲んでいます。それでも好転しないという 「悩み」 に対して、旅行という想定外の 「ソリューション」 を偶然知るのです。

この場合、「花粉でつらい自分」 という意識が高まった状態で情報に接触しています。このためブログの記事にセレンデピティを感じ、商品の存在を知った瞬間、それまで想定していなかった購買行動に一気に踏み切ったと考えられます。

パルス型消費が起きる具体例を整理すると、

✓ パルス型消費の具体例
  • 花粉症がつらい状況
  • ブログで偶然 「花粉症のシーズンには沖縄へ旅行に行く」 という話を知る
  • 「沖縄に行けば花粉症でつらい思いをしなくてもいいのでは!?」 と思ってもみなかった新しい解決策に出会う
  • その場で沖縄旅行の予約をする

起こし方


では、どうすればパルス型消費を生み出すことができるのでしょうか?

ネオマーケティングの SNS での買い物実態調査に戻ると、調査を取り上げた日経新聞の記事には次のように書かれていました。

SNS での商品購入の決め手を聞いたところ、43.2%が 「商品の紹介動画」 を挙げた。ネオマーケティングによると 「実際の使用感が想像しやすいことが、購入のきっかけとなるようだ」 と見ている。

引用の最後の 「」 内に書かれていた、実際の使用感、利用用途、使うシーンを自分ごと化して想像してもらえるかが、パルス型消費につなげるポイントです。

自分が知らなかった方法、商品やサービスが、抱えている問題 (例: 花粉症で毎日つらい) を解決しそうだとピンくれば、思わず買うところまで駆け上がるのです。

もちろん、売り手の伝えることの全てが、買い手にとって偶然の出会いのようなドラマチックなものになるとは限りません。既になんとなくでも知っていて、驚きは少ない場合もあるでしょう。

パルス型消費は狙ってできる簡単なものではありませんが、少なくとも消費者心理と行動の理解としてこういう買い方があることは知っておくといいです。

お客さんにとって、見せられて初めて 「そうそう、これが欲しかった」 にできるためには、的確な問題提起や課題を掘り起こし、そしてソリューションをセットで実際の使用感とともに伝えられるかです。ここにマーケティングの役割があります。


まとめ


今回は SNS での買い物実態調査と、Google が提唱する 「パルス型消費」 から、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ 消費者の買い物の心理と行動
  • パルス型消費は、スマホを操作している時に気になる商品を発見し、瞬間的に買いたい気持ちになり購入を完了させる消費者行動
  • 商品やサービスが、抱えている問題を解決しそうだとピンくれば、思わず買うところまで駆け上がる
  • 的確な問題提起や課題を掘り起こし、ソリューションをセットにして、実際の使用感を伝えよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。