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投稿日 2012/09/29

Google が 「自動運転車は5年以内に一般の人が利用できる」 との見通し (2012年9月) 。自動運転車は普及するのか?


グーグルの自動運転車


グーグルは2012年9月25日、研究を進めている自動運転車について 「5年以内に一般の人が利用できるようになる」 との見通しを示しました。


グーグルの見通し


以下は、日経産業新聞の記事からの引用です (2012年9月27日) 。

グーグルは2010年に自動走行車の開発に着手。これまでに30万マイル (約48万キロメートル) の走行試験を実施した。

この計画を担当するブリン氏は 「視覚障害者など自動車の恩恵に浴していない人の生活を改善できる」 と指摘。交通事故の減少や渋滞緩和にも効果があると説明した。

実用化に関連しては 「センサーの性能向上などが課題となる」 という。自社製造ではなく、自動車メーカーへの技術供与を検討している。
投稿日 2012/09/02

reCAPTCHA:認証の裏にある秀逸なアイデア




reCAPTCHA (リキャプチャ) というユーザー認証サービスがあります。このサービスの裏にあるアイデアが素晴らしいのでご紹介します。


reCAPTCHA の2つの役割


ウェブサービスへの登録時やブログにコメントする時に、以下のような認証画面が表示されます。reCAPTHA はスパムプログラムと人間を見分けるためのものです。

実際の認証画面は以下のイメージです。一度は使ったことがある方も多いでしょう。
投稿日 2012/04/01

Google Consumer Surveys の価値:グーグルの新しいビジネスモデルはネットリサーチの破壊的イノベーションとなるのか


Free Image on Pixabay


グーグルが米国時間2012年3月29日に、新しいビジネスモデルを発表しました。

Google Consumer Surveys というマーケティング調査アンケートによるマネタイズを狙うものです。さすがグーグルと思ってしまう仕組みです。

今回のエントリーは、Google Consumer Surveys の仕組みと価値、要するに何を意味するのか (So what?) 、課題を書いています。
投稿日 2012/03/17

情報社会の未来:私たちはネットの世界に知らない間に閉じこもってしまうのか

ここ最近よく考えるのは「パーソナライズ化」というキーワードです。パーソナライズ化とは、簡単に言えば「あなただけにカスタマイズされたサービス」というイメージで、例えばアマゾンではこれまで買った商品と関連のあるものを「あなたへのおすすめ」という形でレコメンドする機能があります。同じアマゾンを利用しても購買行動によりパーソナライズ化がされています。あなたが見ているアマゾンと、私が見ているアマゾンは同じではないのです。

■パーソナライズ化って何?

ウェブでのパーソナライズ化は実はいろんなところで起こっています。自分のアカウントでログインして利用するサービスは、多かれ少なかれほぼ全てでパーソナライズ化されていると思っていいでしょう。例えばツイッターやフェイスブックではフォローする人やつながっている友達により中身が全然違ってきます。

あるいはグーグル。グーグルの検索では、自分のアカウントでログインしている状態とログアウトしている時での検索結果は、同じ検索キーワードでも微妙に違っていたりします(試しにやってみると実感できるかと思います)。なぜこのようなことが起こるかと言うと、グーグルでは過去の検索履歴やウェブ閲覧履歴、すなわちウェブでの行動履歴を取っているので、そこからグーグルはアカウントごとに特徴づけています。つまり、グーグルはウェブ行動から「あなたはこういう人だよね」という人物像をつくっていて、検索結果はそれに最適なものを返している。だからアカウントでのログイン状態(パーソナライズ化)でとログアウト状態(匿名化)では結果が異なるのです。

■なぜパーソナライズ化をするのか

ではなぜグーグルはパーソナライズ化をしているのでしょうか。同じキーワードでの検索結果は誰がやっても同じ結果を返すほうが仕組みとしてはシンプルです。でもグーグルはアカウントごとに「あなたにはこの検索結果が欲しかったんだよね」とカスタマイズしてくれているのです。

1つの理由は、ユーザーにとってより使いやすいサービスの提供です。同じキーワードでの検索でも、人によって知りたいことは違っていたりします。であれば、その人に最適なサービスを提供しよう、そうすればもっと自分たちのサービスを使ってもらえる、ユーザーも自分たちもWin-Winになれる、そういう考え方です。

別の側面としては、広告のパーソナライズ化でしょう。実はこっちがグーグルが本当にやりたいこと。広告のパーソナライズ化はあなたにとっての最適な広告を表示させることで、実現すればより効果的な広告をユーザーに提供できます。効果的というのは、より興味関心の持ってもらえる広告だったり、買いたくなるもの、一度買ったものをもう一度買いたくなるような広告です。グーグルの収益の大部分はネット広告から上げているので、これは企業としては当然の考え方だと思います。

■メリット

パーソナライズ化は一見するとユーザーにとってはとても便利に思えます。以前のエントリーでもパーソナライズ化について取り上げていますが(参考:重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化|思考の整理日記)、今もよく使っているキュレーションアプリであるzite。ziteとはiPhone/iPad用のアプリで、パーソナライズ化されるデジタルマガジンみたいな感じです。自分の興味あるテーマの記事を自動的に集めてくれるもので、例えば「ソーシャルメディア」、「モバイル」、「マーケティング」、「Google」、「Facebook」などのキーワードで登録しておくと、関連する記事が表示されます。さらに、ziteでの記事閲覧行動履歴データを集め、独自のアルゴリズムでパーソナライズ化してくれ、使えば使うほど「あなただけのデジタルマガジン」になる。雑誌には編集者がいますが、ziteの編集者は行動履歴データに基づくアルゴリズムというイメージ。

グーグルもアマゾンも自分に最適な情報を提供してくれる、より探していたもの、知りたかったこと、買いたかったものを見つけるメリットは大きいでしょう。あるいは、フェイスブックではよく知っている友達がいて、人間関係のパーソナライズ化ができている。これらはパーソナライズ化のメリットです。

■デメリット(問題点)

いきすぎたパーソナライズ化に警鐘を鳴らしているのが、最近読んで考えさせられた「閉じこもるインターネット―グーグル・パーソナライズ・民主主義」という本です。原題は「The Filter Bubble: What the Internet Is Hiding from You」。この本ではインターネットでパーソナライズ化されている状況をFilter Bubble(フィルターバブル)と表現していて、ユーザーがパーソナライズ化するフィルターで囲まれてしまった状態をあたかもバブル(泡)に包まれていると表現したもの。で、サブタイトルのWhat the Internet Is Hiding from You(ネットで見えなくなっているもの)はまさに著者の問題意識です。



パーソナライズ化とは、自分が見たい情報だけを取捨選択してくれる状態です。これは過去の大量の行動履歴データと高度に発達したアルゴリズムなどにより実現できている・されようとしているもの。著者はそこに落とし穴があると指摘します。私たちの考え方・思想、行動、そして民主主義にも悪影響を及ぼすとの主張です。

自分が見たい情報だけが見られるということは、逆に言えば自分と異なる考え方や未知なるものとの出会いが減っていくと著者は言います。これは例えばツイッターを考えると、自分の興味関心に近いユーザーをフォローする傾向にあるので、自分のタイムラインに流れる内容はわりと自分に近い考え方という状況がそれです。つまり、このようなタイムラインだけを見ていると、自分とは違った考え方、異なる視点でのものの見方に触れることができない、そうなるとますます偏った考え方になってしまうのではないか、これが懸念される影響です。

著者が問題視するものの1つに、パーソナライズ化は企業が勝手にやっているが故に、私たちはどうパーソナライズ化されているか見えないし、パーソナライズ化を訂正することが難しい、さらにはそもそも自分がパーソナライズ化されているとは気づかない点があります。「あなたが見ているネットと、わたしが見ているネットは同じではない」という状況に気づかない。人々の思想を変えるということは、極端なことを言うとパーソナライズ化をちょっとずつ調整することで、世の中の意見や世論もコントロールすることもできるのではないかというのが、著者の意見です。

もう少し現実的なイメージをすると、例えばレコメンドサービス。これは自分が今までに買ったものを参考にしているという認識だったのが(「XX」を買ったんだから「XX vol.2」も買うよねというレコメンド)、実は購買履歴以外にも広告販促費をより多くもらっていえる商品がレコメンドに含まれている場合でも、それはどういうロジックでレコメンドなのかこっちにはわからない。知らず知らずのうちに、何かを買うという行動もパーソナライズ化によってコントロールされることだってあり得るわけです。

■So What?

ネットでのパーソナライズ化の是非。正直これはまだ自分の中での結論は出ていません。今のところは自分に最適化されたサービスは、そうではないものより便利だと感じています。前述のziteがそうですし、アマゾンでもレコメンドを参考に本を買うこともあります。ツイッターでも情報が自分の興味・関心にだけ絞られているからこそ、おもしろい情報が流れています。こうしたサービスがもたらされること自体がすごいことだと思うし、これがなければ日々入ってくる情報の確度はもっと下がってしまうはず。その意味で情報を取捨選択してくれるパーソナライズ化の恩恵は一定は受けていると思います。

一方、こうしたパーソナライズ化された情報の外側はあえて知ろうとしないとわかることができないわけで、これがフィルターバブルの内側に閉じこもっている状態。これまでと違う考え方、自分とは違う価値観に触れる機会が減るというのは確かにあまり良くないかなとも思います。未知との遭遇があるからこそ、自分の中で考え方など何かが変わるのだと思うし、そういう複眼的なものの見方は意識してしておきたいもの。フィルタリングされることで自分に興味がないものは目に入らなくなるとすれば、考え方によっては全体像がどうなっているかがわからないとも言えます。つまり、目の前の情報がどの程度の代表性を持つか/偏っているかの判断できないのではないと。

間違いなくネットではパーソナライズ化の方向で進んでいくと思います。3月1日からグーグルのプライバシーポリシーが変更されましたが、これはグーグルが提供する各種のサービスでのユーザー利用情報を1つに統合するという変更。統合することでもっとユーザーのことがわかるようにしたいわけです。グーグルが強調しているのは統合することでより使いやすくなるとしていますが、本当にやりたいことはユーザー情報を統合し、その人により関連性のある広告を表示したいという意図でしょう。前述の「なぜパーソナライズ化をするのか」に書いた通りです。

では自分にできることは何か。今のところの考えは、あえてバブルの外側に出る、あるいは一度バブル自体を割ってしまうことではないでしょうか。例えばグーグルの過去の検索履歴やクッキー等をクリアすること。ひと手間をかけて違う意見や一次情報に当たってみること、そんなところから始める感じでしょうか。それと、自分が見ているものはパーソナライズ化されているという認識、「わたしのネットはあたなのネットと同じではない」こうした意識も持つことだと思っています。


※参考情報

重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化|思考の整理日記
The personalized web is just an interest graph away|GigaOM
グーグル広告部門幹部、「次なる狙いは検索と広告のパーソナライズ」と発言|Computerworld
プライバシー ポリシー|Google
Googleがソーシャル検索にシフトするのはウェブの世界が変わりつつあるから|思考の整理日記
「グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ(In the Plex)」から考えるデータ至上主義とGoogleの描く未来|思考の整理日記


閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義
イーライ・パリサー
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投稿日 2012/02/18

Screenwise panel から考える Google の本質、貪欲なまでのデータ至上主義




以下のモデル図は、グーグルとユーザーの関係を簡単に表したものです。グーグルは、ユーザーに無料で検索・Gmail・YouTube などの様々なサービスを提供しています。




グーグルが得ているのは、膨大なユーザーデータです。それをさらなるサービスの利便性向上や、グーグルの主要事業であるネット広告事業に活かしています。

ユーザーは利便性を享受し、グーグルも集めたデータを有効活用し、収益化しているというウィンウィンが成立しています。
投稿日 2012/01/21

書籍 「グーグル ネット覇者の真実 - 追われる立場から追う立場へ」 から考えるデータ至上主義と Google の描く未来




グーグルの提供価値とユーザーデータ


グーグルがやっていることを簡単に図にすると、以下のようになります。ポイントは、

  • 検索や Gmail などのサービスをユーザーに無料で提供する (ユーザーは利便性を享受)
  • 無料サービスを提供する代わりに、膨大なユーザーデータを取得する
  • ユーザーデータをさらなるサービスの利便性向上や、データをグーグルの主要ビジネスであるネット広告事業に活用




ネット覇者の真実


ここ最近読んだ中で興味深かった本は、グーグル ネット覇者の真実 - 追われる立場から追う立場へ でした。



書かれている内容が非常にリアルでした。著者はグーグルの中に入ることを許可され取締役会などにも参加し、延べ数百人にもわたる関係者への取材から書かれています。
投稿日 2012/01/14

Googleがソーシャル検索にシフトするのはウェブの世界が変わりつつあるから

グーグルがソーシャル検索という新しい検索機能をリリースしました。
Search, plus Your World|Official Google Blog



■3つのソーシャル検索機能

ソーシャル検索とは、検索結果をパーソナライズ化(個人への最適化)することであり、同じ検索をしても人によって異なる結果が返ってくるものです。なぜ各個人で結果が変わるかというと、例えばユーザーの属性情報(性別・年齢・居住地域・等)、ネット行動情報(閲覧履歴)、ソーシャルネットワークのユーザー同士のつながりや行動(発信情報、いいね/+1)、などの情報も考慮され検索結果を返すからです。今回グーグルが発表したソーシャル検索ではGoogle+での情報を検索と統合するようで、具体的に新しく追加されたのは3つです:Personal Results、Profiles in Search、People and Page

1.Personal Results
グーグルプラス内での友人と共有している情報やグーグルの写真共有サービスのPicasa情報が検索結果として表示される機能。例えば「沖縄」と検索すると、G+内で沖縄に関する情報を発信した友人が表示されたり、友達がピカサでアップした沖縄の写真が検索結果に表示されます。これらの情報はその友達とG+でつながっていない限りは検索結果のページ上位には表示されないので、検索結果がパーソナライズ化されていると言えます。検索結果はPersonalとPublicというボタンを使い分けることで、ソーシャル検索のON/OFFができるようです。

2.Profiles in Search
これから会う人だったりの名前を直接グーグルで検索する場合、検索結果にその人のGoogle+でのプロフィール(顔写真も)が表示される機能。イメージとしてはフェイスブックの友人検索に近い感じ。

3.People and Page
検索キーワードに関係性の強い人やGoogle+ページが表示され、その場でフォローできるもの。ここで言うフォローとは、Google+のAdd to circlesのこと。例えば「Music」と検索するとMusicに関連する著名人のGoogle+アカウントやGoogle+ページが表示されるようになるとのこと。

参考記事:Googleが、Google+連携でソーシャル検索を実現。ここ数年で最も大きな検索の進化と発表|in the looop

■指摘されている問題点2つ

発表されたグーグルのソーシャル検索については、問題点を指摘する声もあります。大きくは2つで、ソーシャルの情報ソースの偏りとプライバシー。情報ソースの偏りとは、要するにGoogle+やPicasaなどのグーグルの情報のみが検索結果に反映され、ツイッターやフェイスブックでソーシャル情報は対象外となっていること。ツイッターはグーグルのソーシャル検索を公式に批判しており、「この変更はサイト運営者、ニュース事業者、Twitterユーザーその他全員の不利益になる」と主張しています。(参考:Twitter、Google+とGoogle検索との連携を激しく攻撃|TechCrunch Japan

グーグルが今回の発表を「Search, plus Your World」と表現していますが、グーグルの言うYour Worldとは結局はグーグル内の世界にすぎないじゃないか、ということ。この主張は理解できると思っていて、グーグルの使命に「世界中の情報を整理しアクセスできるようにすること」がありますが、今回整理されたのはGoogle+の情報のみ。多くの人がそうだと思いますが、ソーシャル系でよく使うのはツイッターだったりフェイスブックなわけで、その情報が検索結果に反映されないのであれば、パーソナライズ化された検索結果と言って果たしていいのかどうか。どこまで「あなただけの検索結果」を返してくれるのかに疑問だったりします。

もう1つの指摘されている問題点はプライバシーで、検索結果をパーソナライズすることで、Google+のユーザーの個人データがさらにアクセスしやすくなってしまい、プライバシー問題が生じるという懸念です。(参考:プライバシー保護団体がグーグル「Search plus Your World」に異議|CNET Japan

■なぜGoogleはソーシャル検索なのか

ここからは、「なぜグーグルはソーシャル検索を強化するのか」について考えてみます。色々考えてみて自分の現時点での結論としては、「ウェブの世界が変わりつつあり、その変化に対応せざるを得なかったから」だと思っています。

ウェブの変化について。ウェブの特徴は双方向性だと思っていますが、双方向の例として各ウェブページ同士がリンクによりつながっています。様々なページがリンクされることでページごとの関係性が見えてきます。これを検索に応用したのが、グーグルがサイトの評価に用いているページランク。グーグルがやっているのは、あらゆるサイトを自動クロールさせることで各ページ内情報とリンク情報を収集・整理(インデックス化)し、検索キーワードに関連がある順番に検索結果として表示させています。

で、変化というのは、ソーシャルメディアが広く普及したことで、ウェブの世界にはユーザー同士が直接つながるという、これまでのページ単位でのリンクとは異なるリンクが存在するようになったということです。もちろん従来もウェブ上でユーザー同士のやりとりなどのつながりは存在していましたが、ユーザーアカウントが直接つながるソーシャルグラフが形成されてきた、というのがここでいうウェブ世界での変化。

グーグルの「世界中の情報を整理する」ことを実現するためには、これまでサイト情報を収集・整理していた方法では捉えきれなくなりつつあると思います。グーグルはフェイスブック内情報を全て捕捉しておらず、ツイッター情報も10年7月でグーグルのリアルタイム検索が突然終了してしまったように検索対象としては不十分な状況です。

しかし、この状況がこのまま続いてしまうと、グーグルの情報整理の対象がウェブの一部分になってしまう。これではグーグルは困るわけです。グーグルの基幹サービスは検索にあり、グーグルのビジネスモデルは、無料で検索や各種サービスを提供⇒Googleユーザー増⇒検索結果や各種サービス(Gメール等)に連動する広告から収入を得る、という確固たるもので、このモデルは今後もしばらくはマネタイズの主役であり続けるでしょう。ところが、上記のようなウェブの変化に対応しないと、このモデルが崩れかねない状況です。だからここ最近のグーグルの動きは、これまで独立していた様々なサービスをGoogle+をソーシャルを中心に据えた統合をものすごい勢いで進めているのだと思います。大きな視点に立つと、今回のソーシャル検索も検索サービス自体をGoogle+と統合したことを意味します。
Google+でプロダクト全体最適を進めるグーグル|思考の整理日記

■ソーシャル検索への期待。理想と現実

ソーシャル検索というコンセプト自体は実現されれば便利な機能になると思います。「実現されれば」とあえて書いたのは、現時点では少なくとも自分の場合はソーシャル検索が便利とはまだまだ思えず、それは今回のグーグルのソーシャル機能も同様です。Google+でのつながりはツイッターやフェイスブックでのそれに比べて少なく、その情報が検索結果に反映されても自分の求める情報が得られるのはごくわずかなケースに限られます。すなわち、Google+だけの情報がソーシャル検索結果のソースとなるのは不十分なのです。かと言ってツイッターやフェイスブックとの連携も簡単ではない。ここにグーグルのジレンマを感じるし、だから独自のソーシャルであるGoogle+を核とした形をつくらざるを得ないのではと思います。

グーグルの理想は全世界の70億人の人々がGoogle+やグーグルのいろんなサービスを使ってくれること。そうすれば人のつながりでも世界中の情報が整理できます。一方で、それは現時点では非常に難しいことも彼らは理解しているはずで、その中でどう情報やデータを集めるのか。Google+としては単純なユーザー数を追うのではなく、グーグルサービスをG+で統合することで最低限必要なウェブの世界の情報を取ることに注力しているのかもしれません。グーグルの新しいソーシャル検索はhttps://www.google.comでしか使えない(日本のgoogle.co.jpではまだ)ので取組みとしては始まったばかりですが、検索のパーソナライズ化は今後も注目しておきたいです。


※参考情報

Search, plus Your World|Official Google Blog
Googleが、Google+連携でソーシャル検索を実現。ここ数年で最も大きな検索の進化と発表|in the looop
Twitter、Google+とGoogle検索との連携を激しく攻撃|TechCrunch Japan
Googleの言う「あなたの世界」は、Google+だけの世界|TechCrunch Japan
プライバシー保護団体がグーグル「Search plus Your World」に異議|CNET Japan
プライバシー保護団体、グーグル新検索機能の調査をFTCに要請|CNET Japan
Google+でプロダクト全体最適を進めるグーグル|思考の整理日記


Search, plus Your World|YouTube

投稿日 2011/12/15

Google Map のビッグデータ活用事例と2つの課題

Google マップに新しいサービスが追加されました (2011年12月9日) 。

参考:交通状況が Google マップで見られるようになりました|Google Japan Blog


「交通状況」 という地図上で渋滞状況がわかる新しい機能です。今回のエントリーでは、グーグルマップの新機能と、ビッグデータ活用という観点からの課題について書いています。
投稿日 2011/11/19

Google+でプロダクト全体最適を進めるグーグル

Googleと言えばネットで何かを検索する時には当たり前のように使いますが、それ以外のサービスも色々と利用していることに気づきます。仕事とプライベートのスケジュール管理にはGoogleカレンダーは外せないですし、他にもGmail、Google Reader、Googleドキュメント、などと挙げていくと1つのアカウントで様々なグーグルサービスを活用しています。
投稿日 2011/10/29

高機能一辺倒へのテレビにはあまりワクワクしなくなったので、そろそろ次のテレビに期待したい

先日の24日にスティーブ・ジョブズ公認の伝記が発売されましたが、書かれていた内容で話題を呼んでいたのは、ジョブズがTVへの取り組みに強い意欲を持っていたことです。
Jobs's final plan: an ‘integrated’ Apple TV|The Washington Post

■ジョブズのTVへの熱意

書かれていたことは確かに興味深いものでした。ワシントンポストから引用したものがこちら。
“He very much wanted to do for television sets what he had done for computers, music players, and phones: make them simple and elegant,” Isaacson wrote. (引用者注:Isaacson氏はジョブズ公認伝記の著者)
Isaacson continued: “‘I’d like to create an integrated television set that is completely easy to use,’ he told me. ‘It would be seamlessly synced with all of your devices and with iCloud.’ No longer would users have to fiddle with complex remotes for DVD players and cable channels. ‘It will have the simplest user interface you could imagine. I finally cracked it.’”
これを読むと、ジョブズはコンピューター(Mac)・音楽プレイヤー(iPod)・携帯電話(iPhone)で成し遂げた、シンプルでエレガントなユーザー体験をテレビでも実現したいという熱意を持っていたことがうかがえます。ユーザーが持っているiPhoneやiCloudとも連携させることも構想していたようです。とにかくシンプルで、誰でも使えるようなテレビです。

そして最後にこう言っています。「I finally cracked it(その方法がついにわかった)」。crackというのは、この文脈では「暗号を解読した」みたいなイメージですが、ジョブズがこのように言ったとすればかなり具体的なイメージを描いていたのではないかと思います。ただ、「その方法」がどんな内容なのかは残念ながら、今回のジョブズの伝記には書かれていなかったようです。

■What is "I cracked it" for the next TV?

では、ジョブズはどのようなテレビを思い描いていたのか。上記のジョブズの言葉の中にはTVのリモコンについて不満を抱いていたことがわかります(No longer would users have to fiddle with complex remotes for DVD players and cable channels)。となると少なくともリモコンはもっとシンプルで使いやすいものになるはず。余分なものを徹底的にそぎ落とし、本当に必要なものだけしか残さないジョブズの哲学にも近い考え方です。

とすると、iPodのような本当に必要なボタンだけしかないリモコンになるのでしょうか。確かにそれは十分にあり得ることだと思います。自分の家にあるTVのリモコンを思い浮かべると、本当にたくさんのボタンがあるのに実際に使うボタンは最低限に限られます。中には一度ども押したことのないボタンもある。そういうのを割り切って削っていけば、かなりシンプルなリモコンにできそうなものです。

テレビを操作するのに別にリモコンではなくてもいいのでは、という発想で考えると違ったテレビのコントロールの仕方もでてきます。それがiPhone4Sで搭載された音声認識のSiri。つまり、直接テレビに話すことでコントロールするという考え方です。このSiriについては、実際に海外のブログとかを読んでいると、TVへの統合への期待がかなり高い印象を持ちました。Siriについてはまだ実際に使ったことがなく、YouTubeや使った人の書いたブログとかを読んだ印象ですが、「明日の天気は」「○○に行くにはどう行ったらいい」という質問にも的確に回答するなど、なかなかおもしろそうな機能です。Siriは単に人間の話した言葉を正確に聞き取ることだけではなく、質問やリクエストを理解しその答えを提案するというのは、既存のボイスメモやボイス検索とは大きく異なると思います。テレビにSiriがあれば、「野球が見たい」と言えば野球中継を映してくれ、もしかすると、「ちょっと退屈なので何か笑える番組を見たい」とテレビに話しかければ、ユーザーの好みや過去の視聴履歴などから、その人に合った番組を提案してくれるかもしれません。人によっては漫才などのお笑いかもしれないし、別の人には落語なんてことも。そこには、TV番組欄を見て今の時間に何がやっているかとか、適当にチャンネルを変え見たい番組を探すザッピングなどはもはや不要です。

音声認識のSiri以外だと、アップルは離れたデバイスを動かすのにジェスチャーを使うことを研究しているという話もありました。これも既存のリモコンだけに比べて、テレビの使い勝手を大きく変えてくれるかもしれません。ただ、SiriはすでにiPhone4Sに実装されていることに比べ、こちらはまだ少し先の話になりそうですが。
Apple exploring 3D gestures to control devices from a distance|AppleInsider

■そろそろフレームを変える時

あらためて考えてみると、今私たちの身の回りにあるテレビへの操作は、ほぼ100%リモコンを使っています(リモコン以外だと主電源のON/OFFくらい)。その状況でいろんな機能が次々に追加される一方でリモコン操作という形式が変わらなかった結果、とても使いにくいリモコンになってしまいました。とにかくボタンが多い割に実際に使うボタンは多くなく、わかりにくく使いづらいのです。

ところが多くのテレビメーカーはそこにはあまり注力していなく、より大きく、高画質な美しい画面、あるいはそれ専用の眼鏡を用意し3Dという立体的に見ることができる画面を実現し、ユーザーに提案してきています。これはよりいい機能を追加するという足し算の発想ですが、本当にそこにユーザーのニーズがあるのかは個人的には疑問です。さらなる高性能よりも利便性なのではないでしょうか。

番組配信の仕方もアップルは変えるのかもしれません。iCloudとも連携するということは、単に放送される番組を見るだけではなく、過去の番組も含めて見たい番組を見たい時に、その状況に適切なデバイスで見られるようになるのでしょう。家で見る時はリビングのアップルTVで、自分の部屋のベッドではiPadで、電車で続きを見る時はiPhoneで、といった感じで、アップルが得意とするユーザーに必要以上の設定をさせることなく、全ての端末が一連となって機能する仕組みです。

直感的な操作性に優れたテレビ、自分の好きな番組を好きなように見られるという、ユーザーにとって何が本当に価値があって、それに対して自分たちが提供できることは何か、これを徹底的に考え抜いた結果、ジョブズの頭にはすでにそのテレビは完成していたのではないでしょうか。

■次のテレビへの期待

こんな情報がありました。次のアップルTVは2012年あるいは13年頃にリリースされるというものです。
Apple Could Release TV Set in 2012 [REPORT]|Mashable
Apple Looking to Launch Siri-Enabled Television Set by 2013|MacRumors

アップル以外にも、グーグルとTVの話題も見かけました。方向性はアップルTVと似ており、シンプルにし利便性を高めるというものです。
An Update on Google TV|Google TV
Google TV gaining Android Market, simpler interface with new update|AppleInsider

昨今はTV離れが言われ、実際にそうしたことを示すデータを見かけることもありますが、少なくとも自分の身の回り、家族だったり、ツイッターやフェイスブックを見ていると、テレビの話題で盛り上がっていることが少なくありません。なんだかんだでテレビって、みんな好きなんだなと感じます。そんなテレビでイノベーションが起こるのか、そしてそれが私たちとテレビの関わりを変えてくれるのか。近い未来にその答えがわかる日がやってくるのかもしれません。


※参考情報

Jobs's final plan: an ‘integrated’ Apple TV|The Washington Post
Apple exploring 3D gestures to control devices from a distance|AppleInsider
Apple Could Release TV Set in 2012 [REPORT]|Mashable
Apple Looking to Launch Siri-Enabled Television Set by 2013|MacRumors
An Update on Google TV|Google TV
Google TV gaining Android Market, simpler interface with new update|AppleInsider


投稿日 2011/09/17

やっぱりグーグル先生の考えることはすごい。Google ローカルショッピングという挑戦

グーグルが実店舗の商品の価格や在庫情報を検索できる「Googleローカルショッピング」の提供を開始したと発表しました(11/9/16)。

参考:Google ショッピングで実店舗の商品を検索|Google Japan Blog


Google ローカルショッピングとは


このサービス内容をもう少し見てみます。


(引用:ヨドバシやマツキヨの商品、1200店の価格をグーグルで在庫情報も|日本経済新聞(2011/9/16))

上図は日経新聞からの引用ですが、現時点ではヨドバシカメラやマツモトキヨシホールディングス、良品計画など流通大手7社と組み、全国の実際の店舗にある商品価格や在庫情報をネット上で見られるようになっています。

Google マップと連携することでその店がどこにあるかや、電話番号・店舗までのルートも表示します。

実店舗での販売商品だけでなく、ネット通販サイトでの価格・在庫情報もわかるので、ユーザーは実際の店舗からネット上の店舗まで商品情報を簡単に比較することができます。

Google ローカルショッピングは無料でユーザーに提供されています。そして、小売の参加料も無料のようなので、グーグルにとっては直接このサービスでお金を稼ぐという位置づけではないようです(ページ上の広告表示はありますが)。

ここにグーグルの哲学を見ることができます。

あくまで情報を集めてきて整理をし、それを使うユーザーを増やすという考え方。つまり、「世界中の情報を整理する」というミッションに沿って、マネタイズはユーザーを増やすことでそこに表示させる広告効果を高めることを通じて実現するというものです。

このローカルショッピングの特徴だと思うのが、店舗の商品価格や在庫情報を小売側から提供を受けている点です。

というのも、グーグルはどちらかというと情報は自分で集めてくる傾向があり、例えば、Web上の情報はクロールロボットを徘徊させることで、ストリートビューはカメラ付きの自動車を実際に走らせていますし、Googleブックスなんかも自分たちで書籍をスキャンしています。

このようにオンラインもオフラインの情報も自分たちの手で集めているのですが、ローカルショッピングにおいては小売から提供してもらっています。

グーグルは12年末までに参加企業を100社程度まで増やすとしているようですが、拡大するにあたり、「精度を重要視している。急速に拡大したいが、密にやりとりして、クオリティを担保できればやっていくという形でパートナーを増やす」(グーグル プロダクト マネージャーの鈴木宏輔氏)という方針のようです。

参考:実店舗の商品価格や在庫も検索できる「Google ローカルショッピング」|CNET Japan


参加する小売側の狙いは Online to Offline


この CNET の記事にはさらに、ヨドバシカメラ取締役副社長の藤沢和則氏の次のようなコメントがあり、小売側にとっても参加する意義があることがうかがえます。

店頭でスマートフォンを見て、ネット販売の価格と比較して帰ると言う方もいる。(Google)ローカルショッピングで『実際の店舗も安い』と分かってほしい。ネットのほうが実店舗より安いという“都市伝説”を崩していく。

O2O(Online to Offline)という言葉をよく見るようになりました。

意味は、オンライン上にある情報がオフラインでの購買行動に影響を与えるというようなことですが、イメージとしては、お店に買いに行く前に価格コムなどで口コミ情報の価格情報を見て、口コミ評価の高い商品を最安値のお店で買う感じです。

パソコンだけではなくスマートフォンなどのモバイルにも対応していることも考慮すると、Google ローカルショッピングはまさにO2Oを促すサービスです。

上記のヨドバシカメラのコメントも、Online to Offline につなげる内容だということに気づきます。

小売にとってローカルショッピングへの参加は無料とはいえ、グーグルへこれまでは(ネット上には)非公開だった情報を提供することになります。

もちろん、今後は自分たちの競合他社も同様に情報を提供することになる可能性があり、グーグルのサービス上で情報が透明化されることで間違いなく価格などの競争が激しくなるでしょう。ローカルショッピングはまさに小売とグーグルの二人三脚です。


Google の挑戦


Googleローカルショッピングでは商品が、どこに・いくらで・どれだけ売られているかの情報や店舗の地図や電話番号がGoogleマップ上に表示されます。

これをグーグルが整理した情報としてユーザー側に提供する、うまく循環すれば、ローカルショッピングを見たユーザーが店舗に足を運び購入し、次もローカルショッピングを使うという形が生まれます。

何か買う時はグーグル先生にちょっと聞いてみるという人が増え、使用頻度も上がること、そして参加企業も拡大し実店舗からというオフライン情報がさらに集まってくる、これがグーグルが描く当面のゴールイメージでしょう(このへんを KPI で目標設定しているのではと思います)。

あらためてローカルショッピングというサービスを通じてグーグルがやっていることを整理すると、これまでは自力ではなかなか取得できなかった実店舗からの情報を、小売から日々定期的に提供してもらえる仕組みが構築できたことになります。

ネット販売の情報であればオンライン上なので情報を集めやすいことに比べ、集めにくかったオフラインの情報が手に入る。それも小売からオフィシャルな形で。実店舗の情報がオンラインに取り込まれ、Google マップなどの既存のオンラインサービスと連携することで価値が生まれます。

当然ここに Google+ などのグーグルが持っているサービスともつながってくるのではないでしょうか。グーグルにとってはこのローカルショッピングは意味のある一歩だなと感じます。グーグルはまた1つオフラインの情報をオンラインに引き込もうとしているのかもしれません。


※参考情報

Google ショッピングで実店舗の商品を検索|Google Japan Blog
ヨドバシやマツキヨの商品、1200店の価格をグーグルで在庫情報も|日本経済新聞(2011/9/16)
実店舗の商品価格や在庫も検索できる「Google ローカルショッピング」|CNET Japan
ヨドバシやマツキヨなどの店頭在庫をググれる「Googleローカルショッピング」始動|Gigazine
Googleがローカルショッピングの検索機能を公開。近隣店舗の商品価格と在庫情報が調べられる|TechCrunch JAPAN

投稿日 2011/08/27

日本の1万年の人口増減とFacebookのネクストステージ

先日、ツイッター上である先輩が「Facebookがそろそろ潮時かもしれない」というツイートをされていました。飽きたとか単純な理由ではなさそうだったので、ちょっと気になりReplyをすると、次のような状況からでした。
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色々な「友達」が増えすぎてなんとなく投稿がしにくくなった。フェイスブックには最近できた友達から中学時代の友人までいるので、投稿内容を妙に意識してしまう結果、無難なことしか書けない。今は不特定多数の人に見られるtwitterのほうが逆に気軽に投稿しやすい。
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■なぜFacebookでは無難な投稿内容になるのか

上記のリプライをもらった時に、確かにそうだなと思いました。フェイスブック(以下、FB)上にはいろんな「友達」がいます。地元の友達や大学の友人、仕事でお世話になっている方、等々です。FBに投稿するとき、どこかで見られることを意識してしまいます。例えば、投稿内容が特定のグループにしか意味・背景が通じないことだったりする時は書き込むのを結局やめたり、あるいはどこかで自分のことを良く見せようという気持ちがあるような気がします。つまり、書き込み内容にフィルターがかかってしまい、結局フィルターを通るのは無難な内容になってしまうのです。最大公約数的な感じで。

一方のツイッターの場合、気軽にできるのは不特定多数の人というところがポイントだと思っています。というのも、不特定多数だと投稿内容から自分がどう思われてもある程度構わないという意識があり、だからFBほど投稿内容にフィルターがかからなく、無難なことでなくてもアップできる。もちろんその中にはFBと同じように知り合いや友達、同僚もいるわけで、ツイートする/しないのフィルターをかけますが、それでも気楽にツイートできてしまいます。

■Facebook上の友達が増えるとどうなるか

FBに話を戻しますが、FB上で友達の数が増えることで次第に投稿内容がPersonalな内容が少なくなるという記事がありました。
Do Growing Friend Lists Mean Shrinking Facebook Use?|All Facebook

以下の図は同記事の元記事からの引用ですが、それによればFB上でつながっている友達の数により、より個人的なネットワークであるPersonal Networkから、Social Network、Professional Networkの3つに分かれると指摘しています。

NETWORK OVERLOAD: WHY FACEBOOK IS SINKING UNDER ITS OWN POPULARITY (WARNING TO GOOGLE+)|GREAT FINDSから引用

記事では同じ内容でも、Personal、Social、Professionalの3つで表現が次のように変わると言います。「週末をJaneと過ごしてとても楽しかったよ」(Personal)、「楽しかったハワイ旅行から今戻ってきた」(Social)、「ハワイで有意義な時間を過ごした」(Professional)。

もちろん、人により様々だとは思いますが、友達が増えるということは冒頭で書いたように色々な人間関係がFB上にできるので、個人的な内容やプライベートの話が中心だったものが、人数が多くなることでより公なメッセージになるというこの記事での指摘は理解できるものだと思います。

この引用記事のタイトルは「Do Growing Friend Lists Mean Shrinking Facebook Use?」(友達が増えることでフェイスブックの使用が減る?)です。確かに、フェイスブック疲れというか、フェイスブック離れみたいなものもちらほらと聞いたり、ネット上でも見かけるようになりました。(理由は様々で一概に友達の人数とは限らないことだと思いますが)

■1万年間の日本人口の趨勢からの示唆

「2100年、人口3分の1の日本」(鬼頭 宏 メディアファクトリー新書)という本をちょっと前に読んだのですが、そこにおもしろいことが書かれていました。2005年をピークに日本が人口が減少期に入ったと言われていますが、本書によると縄文時代以来の約1万年間において、日本では少なくとも4回の人口増加期と減退期があったようです(p.47-48)。

人口が増加するのは、海外から新しい技術や物産・社会制度が導入され新しい文明システムへと転換していく時代、一方で人口減退が起きるのはそれが定着して社会が成熟し発展の余地がなくなる時代だと言います。一例を引用します。狩猟採集社会であった縄文時代、人口密度は狩猟採集で成り立つ社会として世界一と考えられてるようですが、一方で生活は環境に左右され縄文時代後半は寒冷化も進んだことで人口は減少したようです。ですが、人口減退に歯止めをかけたのが稲作文化の流入でした。日本に水稲農耕が定着すると人口増加期に入ったようです。つまり、原始的な狩猟社会に稲作という新しいシステムが外部から入ったことで、新しい段階に移ったのです。 

人口から読む日本の歴史から引用

■外部からの「変化」がFacebookに何をもたらすのか

個人的に思うのが、これと同じようなことがフェイスブックにも起きているのではないかということ。もちろん全然仮説レベルなのですが、FBも転換期にあり、これまでのユーザー数が爆発的に増大しているフェーズから次の段階に移りつつあるんじゃないかなと。さっきの日本での人口増加・減退の歴史を参照すると、FBが次のフェーズに入り、さらに成長するためには外部からの新たな文化・システムが必要ということになります。それは何なのか。

そのきっかけになるのでは思っているのが、つい最近FBが発表した複数のアップデートです。その中には投稿の公開範囲を制限するのが簡単になるとあります。ユーザーが投稿を下書きしている時点で公開範囲のオプションが表示され、Friends(友だち), Public(一般公開)、Custom(カスタム)と選べるようです。
Making It Easier to Share With Who You Want|The Facebook Blog
Facebook、友だちがタグ付けした写真を事前に承認できるようになった―その他改良多数発表|TechCrunch JAPAN

これの発表内容を見た時に連想させられたのがGoogle+のCircleです。G+とFBの違いの特徴として、G+はサークル機能により投稿内容が指定しやすくなっていることがあります。G+では他のユーザーをフォローする時にそのタイミングでどのサークルに含めるかを決めますが、FBではこれまではリストはあまり有効に使われていない印象でした。それが、今回のFBの発表でG+のシステムを意識した変更のように思えました。

この変更がFBや私たちユーザーに何をもたらすのか。投稿の公開範囲が選びやすくなったことで、冒頭で書いたような無難な投稿内容にとどまらなずより活発なコミュニケーションができるようになるのでしょうか。今後の様子を見る必要がありそうですが、次のフェーズに入るための「外部からの新しい文化・システム」になるのか、興味深いところです。


※参考情報

Do Growing Friend Lists Mean Shrinking Facebook Use?|All Facebook
NETWORK OVERLOAD: WHY FACEBOOK IS SINKING UNDER ITS OWN POPULARITY (WARNING TO GOOGLE+)|GREAT FINDS
Facebook Sees Big Traffic Drops in US and Canada as It Nears 700 Million Users Worldwide|Inside Facebook
人口から読む日本の歴史
Making It Easier to Share With Who You Want|The Facebook Blog
Facebook、友だちがタグ付けした写真を事前に承認できるようになった―その他改良多数発表|TechCrunch JAPAN
Facebook、プライバシー機能をアップデート--投稿の公開先指定やタグ付けの承認などで変更|CNET Japan


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投稿日 2011/08/07

民放5社×電通のネットテレビは普及するのか?期待したいVODを考えてみる

先日、テレビに関してある発表がありました。民放キー局 5 社と電通が共同でインターネットテレビを来春に実用化するというものです。

電通のプレスリリースでは、「インターネットTV上において、民放各社が主体となった有料課金型のVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスを共同で推進していくことに基本合意」とあります。

参考:民放キー局 5 社と電通が共同でVODサービスを推進|電通


民放5社 × 電通の VOD サービスとは


電通によるリリース内容をもう少し見てみます。

この民放VODは、テレビの価値を向上させるという共通認識のもと、視聴者により多くのテレビ番組への視聴機会を提供することで、テレビ番組の視聴者層を拡大し、テレビ番組のファンを増やそうとするものです。

(中略)

民放VODは、簡単で誰でも使いやすいユーザーインターフェイスを開発し提供することを検討しています。

(中略)

この民放VODを、インターネットTVだけではなく、スマートフォン・タブレット端末などマルチデバイスにも広げ、リアルタイム視聴に繋げる流れを作り出すことにより、テレビの価値の最大化を図っていきます。

リリースでは抽象的な表現にとどめている印象ですが、この方向性は正しいと思います。つまり、TV番組視聴者を増やすために、ユーザーインターフェイスに優れ、TVだけではなくスマホやタブレットPCでも視聴可能としていくというのですから。

もう一つ印象的だったのは、電通が民放5社をとりまとめている点。個人的にこれができるのは電通以外に見当たらないのではと思います。

このニュースを上記のリリース前に報じていたのが日経でした。電子版では同日の午前2時頃に、紙媒体でもその日の朝刊に掲載されていました(テレビでネット動画も自在に 民放5社と電通、来春に|日本経済新聞)。

こちらではVODサービスのイメージ(右図は日経から引用)や課金体系など、少し具体的な内容が報じられています。中身を見ると、少し残念な気持ちになりました。そこに書いてあったのはこの方法で本当に普及するのかという内容だったからです。


普及への3つのハードル


有料課金型VODということでその価格体系ですが、1時間番組が1本300円前後となる予定だそうです。

会員登録をすれば銀行からの引き落としなどで課金されるとのこと。300円を払ってでも見たいような番組がどれくらいあるかというのが、1つ目に感じた普及へのハードルです。

もちろん、関連する動画も見られるという付加価値があるので単純には現在の放送内容との比較はできません。しかし、それにしても番組1本で300円というのはかなり強気な価格設定だと感じます。

サービスを実際に見てみないとなんとも言えませんが、個人的には1ヵ月で10本までは無料、見放題は300円/月くらいのイメージ。これでもVODは使わないかもしれません。

2つ目のハードルがコンテンツです。

日経には、「民放5社合計でドラマやドキュメンタリー、スポーツなど過去に放送した動画は6500本あり、今後増えていく。」とありました。

今後は増えていくことに期待はしたいですが、現時点で5局で番組動画数が6500本というのは少ないです。このVODサービスで期待したいのは、上図にあるようにどれだけ関連する動画と連動するかだと思いますが、コンテンツの量が不足する感が否めません。

コンテンツ数を増やすとともに有料の価値に見合う質も求められますが、個人的には現在TVで放送されている番組の質からすると、300円という価値に見合うかというとちょっと厳しいと感じます。

3つ目のハードルについてです。

現在発売されているテレビではこのサービスを受けられないため、家電数社が来春にも対応機器を発売する方向で準備を進めている点です。TVの買い替えが必須というのは普及には相当にハードルが高いです。

この間、エコポイントやアナログ放送終了に伴う地デジ対応TVの買い替えが大量に発生しています。電通のリリースでは14年度の本格運用を目指しているとありますが、TVの平均使用年数は10年以上というデータもあります(家電リサイクル法の施行状況|経済産業省)

例えば、せめてアップルTVのように既存のTVにつなげるだけでOKとかでないと、この有料VODのためにすぐにTVの買い替えが起きるとはなかなか思えません。

以上3つを整理すると、価格(Price)、コンテンツ(Product)、見るために新しいTVが必要(Place)ということで、マーケティング4Pで言うところのうち、普及には3つのハードルが存在します。(残りのPromotionは、日経がフライング気味で具体的に報じたことで特にネット上で否定的な意見が多いように感じるのはうがった見方かもしれませんが)


なぜ電通はVODサービスに取り組むのか


さて、ここであらためて考えてみたいのが、なぜ電通がこの有料課金型VODを推進するのかという論点です。個人的な印象ですが、民放5社のとりまとめは簡単ではなかったように感じます。それをやってでも電通にとって得られるメリットは何なのかです。

電通のリリースでは「テレビ番組の視聴者層を拡大し、テレビ番組のファンを増やす」とありますが、やはりここにはTV広告を拡大させるという意図があると考えるのが自然だと思います。

そもそもこのVODサービスが純粋に視聴者からの60分番組1本で300円という課金だけで成立するのか、課金+広告というビジネスモデルなのかは現時点では不明ですが、電通が絡んでいることを考えると後者となるように思います。では広告をどんな形で入れてくるのか、実はこのVODのニュース発表の数日前にあるリリースを発表しています。

参考:電通とジュピターテレコム(J:COM) VOD サービスにおける新たな広告モデル『CM 割』を開始|電通


中身を要約すると、JCOMのVODサービスで、企業のCMを視聴すると視聴料が割り引きとなる広告モデル「CM割」を9月1日から3か月間試験的に始めるとのことで、割引は105円。このニュースを報じたAdverTimes(アドタイ)によれば、視聴料は60分のテレビ番組で315円とあります。

参考:CM視聴で視聴料105円割り引き 電通とJCOM、VODで新たな広告モデル|AdverTimes(アドタイ)


60分番組が300円程度。これで電通の意図も見えてくるのではないでしょうか。つまり、これは偶然の一致ではなく、民放5社とのVODを考慮した上での広告モデル構築のためのパイロットテストではないかと思います。

JCOMと取り組んでいる試験サービスでは、既存のTVの広告モデルよりもう一歩踏み込んでいる印象があります。というのは、用意されているCMは60秒~180秒の長尺版で(ジャンルの異なる8つのCMの中から見たいものを1つ選ぶ)、ユーザーは視聴後に簡単なアンケートが用意され、その後に番組視聴となるようです。

電通の説明では、「視聴者は複数業種の中から自ら選んだCMを視聴するので好意を持って見てもらえる。また長尺タイプのCMを見てもらうことで、より商品・ブランド理解につながる」とあります。

個人的には、315円から105円の割引があってもまだ高いように気がしますが、広告無しの視聴を追加で課金するのではなく、広告ありを割引するという「引き算」の発想はなかなかおもしろい試みです。


期待したいVODサービス


最後に、VODサービスに関してあらあめて思うことを少し。今回の発表では民放5×電通という組み合わせでしたが、これが電通ではなく例えばニコニコ動画やYouTubeだとどうなったか、これを少し考えてみます。

YouTubeであれば、ユーザー数という規模のメリットがあります。つまり世界中にユーザーがいる。もちろん日本語のTV番組は基本的には日本語なのですが、

Googleには音声翻訳やYouTubeへの自動字幕表示技術があります。もっと技術精度を上げる必要はありそうですが、この当たりをうまく活用すれば日本語番組を自動的にその国の言語で字幕表示させることも可能になることが期待できます。

参考:Google、音声入力で57言語を翻訳できるアプリ『Google Translate』配信開始|Searchina
参考:YouTube、日本語音声を認識して字幕を自動生成・表示する機能を追加|INTERNET Watch

グローバルに日本のTV番組を配信できるとして、アニメなど日本には有力なコンテンツがあります。あるいは四季折々の日本や文化遺産、観光地としてもアピールできるかもしれません。

民放5社、あるいはNHKも含めた日本のコンテンツ資産をグローバルで普及しているYouTubeと組み合わせることで日本の良さを知ってもらえるかもしれません。

あとはYouTube(Google)、TV局、コンテンツプロバイダー、広告主の各プレイヤー間でうまくマネタイズできる仕組みがあり、ユーザーにとっての優れたユーザーインターフェイスがある。これら価値に見合う価格体系。これくらいの構想であればわくわくします。


※ 参考情報

民放キー局 5 社と電通が共同でVODサービスを推進|電通
テレビでネット動画も自在に 民放5社と電通、来春に|日本経済新聞(11年8月3日)
民放5社が新たなインターネットテレビを来春に実用化、専用テレビも同時発売|GIGAZINE
家電リサイクル法の施行状況|経済産業省
電通とジュピターテレコム(J:COM) VOD サービスにおける新たな広告モデル『CM 割』を開始|電通
CM視聴で視聴料105円割り引き 電通とJCOM、VODで新たな広告モデル|AdverTimes(アドタイ)
Google、音声入力で57言語を翻訳できるアプリ『Google Translate』配信開始|Searchina
YouTube、日本語音声を認識して字幕を自動生成・表示する機能を追加|INTERNET Watch

投稿日 2011/07/17

Googleが計画する「ウェブデータ取引所」は、あなたと広告のミスマッチを解消してくれるのか

それにしてもスケールの大きなニュースです。Ad Age DIGITALによれば、グーグルがウェブデータの取引所を創設する構想を持っているとのことです。
Google Readies Ambitious Plan for Web-Data Exchange|Ad Age DIGITAL

■グーグルが計画中のウェブデータ取引所とは

まずは開発中とされるグーグルのこの取り組みについて見てみます。簡単に言うとグーグルがやろうとしているのは、ユーザーデータが売買できる仕組みおよび場(取引所)を提供するということです。ユーザーデータは、ネットでの行動履歴データで例えば訪れたサイトや検索した時に入力した単語(検索ワード)など。このデータが売買されるわけですが、売り手はウェブサイトなど、買い手は広告主となります。

広告主は何のためにデータを買うかというと、広告をどういう人たちに表示をさせるかというターゲット情報を得るためです。広告の基本は、1.人の集まるところに出す(だからTV広告では視聴率が重宝される)、2.広告を見てほしい人に見てもらう、だと思っていますが、この2点を考えるためにターゲット情報が活用されます。ここで言うターゲット情報というのが、上記のウェブサイトなどから提供される「ネットでの行動履歴」に当たりますが、ネットでの行動履歴というのは、言い換えればその人の興味・関心のデータです。というのは、ネットで何かのサイトや動画を見る、検索をするなどは、そこに何かしらの興味があってのことで、上記のAd Ageの記事では「新車を購入しようとしている人」、「旅行を計画中の人」などの例が書かれていますが、行動履歴を積み重ねるとその人が何に興味を持っているのか、さらにはどういう人なのかもある程度はわかるようになります。

グーグルが開発しているこのデータベースが実現すれば、広告主は自分の広告を表示させたいターゲットを抽出することができ、広告を見てもらいやすくなり購入にもつながることが期待できます。ユーザーデータについて需用と供給が成り立つことで、それに対してグーグルの役割は、あらゆるユーザーデータを一つに集約した巨大データベースを構築し、売り手と買い手の間で円滑にデータが売買されるような仲介役なのです。

■あなたにとってどういう意味があるのか

では、仮にグーグルのウェブデータ取引の仕組みが実現されるとして、その場合に私たちに一体何をもたらすのかということを考えてみます。認識としてあらためて考えてみたいのが、自分たちのまわりにはたくさんの広告であふれているものの、それらのうちどれだけの広告に興味・関心を持ち、さらにはその広告の商品・サービスを買うところまで至ったかという点です。ウェブ上でも多くの広告が表示されますが、個人的には大部分はクリックすることはなく、もっと言えば何の広告かの認識すらしていないこともあります。

この状況を冷静に考えてみると、現在の広告は多くの場合でミスマッチが起こっているのではないでしょうか。つまり、広告が表示されていても、見る人にとってその時点で興味関心は持たれていない、本当に見てほしい人(見てくれる人)に表示されないというミスマッチです。これはあらためて考えてみると残念な状況です。とういのも、ミスマッチが発生しているということは、その広告の広告主・消費者・広告媒体の三者それぞれにとっても望ましい状況ではないと言えるからです。広告出稿費を払ったのに広告の効果が出ない、見たくはない広告が表示される、表示広告に効果が見えにくいと広告媒体としての価値が上がらない、といった感じに。

広告というのは必要な人に適切なタイミングで提供できれば、消費者と広告主の双方にメリットがあるものだと思っています。広告の中には関心を抱くものも多少はあるわけで、広告で存在をはじめて知ったり、ちょっと買ってみようかなと思うこともある。あるいは実際に広告の影響で買うこともあります。

少し前置きが長くなりましたが、グーグルの取り組みが実現されるとこうしたミスマッチが解消していく可能性があると考えます。グーグルが提供している検索連動型広告は検索ワードという興味・関心に連動した広告なわけですが、それよりも幅広いネットでの行動履歴をベースに広告を表示させるターゲットを選んでくることができるからです。これにより、広告が必要な人に適切なタイミングで提供されることが期待できます。ふと○○が欲しいと思った時に向こうから知らせてくれたり、自分の中で完全なニーズになっていないことまで提案してくれる、なんてことが実現できるかもしれません。

■独占とプライバシーの問題

一方で、自分のネットでの行動履歴が使われることに対しての反発も当然起こってくるでしょう。このようなウェブのユーザーデータはクッキーという機能を活用することになるのですが(他にも仕組みはあるのですが)、自分のデータが提供されることがわかっていて許諾が得られている場合はいいとして、ユーザーにとっては自分のウェブデータが活用されていることにも気づいていないケースもあり、このあたりは個人情報やプライバシーの問題が必ず出てくると思います。

それにただでさえグーグルは独占禁止法やプライバシー問題で、アメリカやヨーロッパの独禁・司法当局からの監視の目が増している状況です。そんな中、グーグルが個人のウェブデータを集約し、売買できるようなデータベース・仕組みを構築するとなれば、独占禁止法とプライバシー問題の両方で懸念の声が出てきてしまう恐れがある。その実現は簡単ではないというのが個人的な見解でもあります。
フェイスブック・米当局…グーグル支配に包囲網|日本経済新聞(11年7月7日)
[FT]グーグルに独禁法関連の疑い相次ぐ 今度は欧州で訴訟 |日本経済新聞(11年6月28日)

■グーグルにとってなぜこのプロジェクトなのか

それでもなお、グーグルはこのプロジェクトを前に進めていくのでしょう。なぜなのかを整理するために、ここではグーグルの目的を考えてみます。1つ考えられるのは、ユーザーの行動履歴というウェブデータが集まるデータベースが構築できそこにデータを売る/買うプレイヤーが集まる、こうしたプラットフォームをグーグルが支配することです。支配できれば、課金モデルが構築できます。一定の手数料という形でグーグルにとっては持続的な利益を得ることができる。

この可能性はなくはないのですが、個人的にはグーグルの目的はこのビジネスモデルではないのではと思っています。それはグーグルがアンドロイドOSを無償提供し、あくまでアンドロイドの普及を進めているのと同じで、グーグルにとって大事なのはあらゆるウェブのデータが集まることです。グーグルの目的は、データが集まり、広告主がそのデータベースからターゲットを抽出できる、本当に必要な人に広告が表示でき広告のマッチング精度・効果が上がる、そしてオンライン広告の価値がより向上すること。これがグーグルが描いていることなのではないでしょうか。

冒頭で引用したAd Ageの記事はタイトルにAmbitious Planという表現が入っており、さらに記事ではこのプロジェクトに詳しいグーグルの幹部によれば「one of the most ambitious in Google's march to become a brand advertising giant.」と表現し、グーグルがブランド広告の巨人になるためは最も重要なプロジェクトの1つと指摘しているのです。グーグルの目的はウェブデータ取引所で広告主にデータを活用してもらい、オンライン広告へこれまで以上に投資してもらうこと、ひいてはそれが広告媒体としてグーグルの収益に結びつくという構図です。

■個人データ活用への期待

最後に、このニュースについて自分はどう思うかを少し書いておきます。ウェブのデータ活用にはメリット/デメリットがあるものの、結論としては期待のほうが大きいと思っています。マイナス面としては自分のウェブ上の行動履歴がデータとして誰かに(知らないところで)活用されるという不安がありそうですが、一方でウェブを使い以上はある程度の自分のデータが提供されてしまうのは不可避だと考えます。自分の個人情報をウェブ上に預けることで、利便性を享受できている面もあります。であるならば、データが提供されることを受け入れ、そこから個人データをいかに活用し、どうすれば世の中をもっと豊かにできるかを考えたいというのが個人的な思いです。

※参考情報
Google Readies Ambitious Plan for Web-Data Exchange|Ad Age DIGITAL
データが通貨になる Googleが「ウェブデータ取引所」機能構築へ=米報道【湯川】|TechWave
フェイスブック・米当局…グーグル支配に包囲網|日本経済新聞(11年7月7日)
[FT]グーグルに独禁法関連の疑い相次ぐ 今度は欧州で訴訟 |日本経済新聞(11年6月28日)


投稿日 2011/07/03

グーグルが新SNSのGoogle+をリリースする2つの意味とわくわく感

ついにGoogleも動いてきました。同社が世界に発表した新しいSNSであるGoogle+です。(11年7月2日現在まだパイロットテスト段階で、一部のユーザー限定で使用が可能)

参考:Introducing the Google+ project: Real-life sharing, rethought for the web|The Official Google Blog

今回のエントリーでは、Google+について以下のような論点で書いています。

  • Google+とは何か?Facebookとの違いは?
  • なぜGoogleはSNSに取り組むのか?
  • Google+が普及するとどうなるのか?そして期待すること
投稿日 2011/04/03

Googleは「+1」でソーシャル検索を実現できるのか?

グーグルがアメリカ時間の3月30日に、グーグル検索結果のページで「+1」(プラスワン)ボタンの表示を開始したと発表しました。
+1’s: the right recommendations right when you want them—in your search results | Official Google Blog

+1の表示イメージ

出所:Official Google Blogから引用

今回のエントリーでは、グーグルの「+1」の仕組みと、自分は+1をどう思っているかを中心に書いています。

■「+1」の仕組み

ユーザーが気に入ったページや良いと思った広告を「+1」ボタンで推薦し、友人に対してより良い検索結果、検索連動広告(AdWords)を提供できるというものです。+1の使用イメージは「Google Inside AdWords」ブログでの掲載記事にあった説明イメージがわかりやすいです。(引用:The +1 button & AdWords | Google Inside AdWords

1.グーグルの検索結果に表示される「+1」ボタン


 2.「+1」クリック後 (青くなる)


3.友人の検索結果 (友人Brianが「+1」をクリックしたことがわかる)


ボタンのイメージとしてはFacebookの「いいね!」ボタン、mixiの「mixiチェック」と同じような印象です。グーグルは「+1」ボタンにより、これまでの独自アルゴリズムに基づく検索結果表示とは異なった、自分の友人のおすすめが反映されるというソーシャル検索をリリースしたのです。

今のところ(11年4月3日時点)ではアメリカのみのリリースですが、+1を使用するためにはグーグルアカウントでログインをした状態で検索を行う必要があります。現時点でグーグルが認識するユーザーの友人というのは、グーグルアカウントに関連付けられている友人・知人のようで、GmailあるいはGoogle Talkのチャットリストに登録されている人々、Googleコンタクトに登録されている人々、Google ReaderとGoogle Buzzでフォローしている人々に限定されているとのこと。(参考:Googleが「+1」ボタン発表、Facebookの「いいね!」に似たソーシャル検索|INTERNET Watch

それでは、グーグルの+1は、ソーシャル検索として普及するのでしょうか。個人的には様子見か、やや少し懐疑的に見ています。以下、その理由を3つ書いています。

■理由1:ソーシャルグラフ

ソーシャル検索で重要な要素は自分が持っているソーシャルグラフ、つまり、(ネット上での)人間関係です。既存のグーグルの検索アルゴリズムであれば、誰が検索をしても返ってくる結果は変わりません。自分が知りたい情報が見つかるかは、検索するキーワードの選び方がポイントになります(もちろん、これだけではないですが)。一方のソーシャル検索では、検索キーワードに加え、自分の友人がどういったサイトをおすすめしているかによって、検索結果が異なります。

現在のところ、+1に反映されるソーシャルグラフはGoogleアカウントに限定されています。個人的には、SNSやツイッターのほうが充実しており、今のGoogleアカウントに紐づくソーシャルグラフでは少し物足りないように感じます。ただ、この点はグーグルも取り組んでいくとしており、公式ブログではツイッターなどとも連携を目指すと言っています。ツイッターのソーシャルグラフがグーグルの検索結果に加われば、ソーシャル検索の精度は高まるかもしれません。

■理由2:ユーザーインターフェイス

2つ目の理由は、ユーザーが「+1」ボタンをクリックする時の使いやすさ(ユーザーインターフェイス)に関するものです。+1を自分が使うイメージを具体的に想像してみると、(1)グーグルで何かを検索する ⇒(2)知りたかった情報が掲載されたサイトが見つかる ⇒(3)そのサイトからグーグル検索結果に戻って「+1」ボタンをクリック、となります。

フェイスブックの「いいね!」ボタン(あるいはmixiチェック)と比較すると違いが明らかになりますが、「いいね!」はニュースサイトやHP上に設置されているのに対し、+1は現時点ではグーグルの検索結果ページに設置してあります。故に、上記(3)のように、一回戻って「+1」をクリックする必要があり、これは自分であれば、一回戻るだけとはいえちょっと面倒な流れです。

もっとも、同じくグーグル公式ブログによれば、グーグル検索結果ページ以外にも「+1」ボタンを展開していく姿勢を出しているので、「+1」ボタン設置のブラグインが提供されるのは時間の問題だとは思います。ただ気になるのは、今でも多くのページですでに「つぶやく」「いいね!」「はてブ」・・・などのソーシャル系のボタンが複数設置されていて、さらに「+1」も増えることになる点です。

■理由3:「+1」のユーザーメリット

3つ目の理由は、+1をクリックするユーザーのメリットに関してです。3つの理由のうち、この3つ目が最も気になる点です。では、+1とフェイスブックの「いいね!」とで比較してみます。

「いいね!」ボタンを押すと、フェイスブック上の友人のニュースフィードや自分のウォールに『○○さんがリンクについて「いいね!」と言っています。』と表示されます。自分の「いいね!」情報が友人にリアルタイムで共有ができます。

翻ってグーグルの「+1」ボタン。+1をクリックすると、その結果が反映されるのはグーグルの検索結果ページです。逆に言えば、自分の友人がそのページに含まれるキーワードをグーグルで検索するまでは、自分の「+1」の情報は共有できないのです。

フェイスブックの「いいね!」やツイッターのRTと、グーグルの+1では、そもそもの設計思想が違うように思います。つまり、いいね!やRTは友人同士で共有するためのツール、+1は検索精度を向上させる・検索連動型広告の品質を高めるためのツールです。

フェイスブックの「いいね!」、あるいはツイッターのRTもそうですが、なぜわざわざ自分がこの手間を1つ行うかというと、自分が共感したモノ・コトを簡単に発信して共有したい気持ちからだと思います。これがインセンティブ。しかし、グーグルの「+1」では、共有されるのは友達がグーグルで検索をしたタイミングに限定されるという条件が付きます。なので、今の時点での+1には、「いいね!」やRTほどのユーザーメリットが直観的にはないような気がしました。(長い目で見れば、多くの人が+1を使用すればグーグルの検索精度は全体的に向上するユーザーメリットはあるのですが)

■最強はGoogle+Facebook?

検索にソーシャル性を組み合わせるのは、グーグルにとっては一大プロジェクトだと思います。グーグルの検索結果はアルゴリズムによる機械的なものでしたが、ここにソーシャルというこれまでとは異なる概念が入り込むからです。グーグルという巨人がその歩む方向を変えつつあるようにも感じます。その意味では今後が楽しみです。

自分が信頼のおける人からの情報は有益だと感じてしまうことからも、ソーシャル検索は今後の有望な領域だと思います。実際に、すでにマイクロソフトとフェイスブックはタッグを組み、マイクロソフトの検索サービスBingにフェイスブックの「いいね!」情報を反映させる取り組みを進めています。個人的には、この記事が指摘するように、Google+Facebookと組んでくれるのが、ユーザー側からするとありがたいのですが。
ブラウザー拡張機能「+Like」があればGoogle +1は不要?|Tech Crunch

いずれにせよ、グーグルの+1についてはもう少し様子を見るとともに、今後も注目しておきたいです。


※参考情報

「+1」(プラスワン)|Google
+1’s: the right recommendations right when you want them—in your search results | Official Google Blog
The +1 button & AdWords | Google Inside AdWords
Googleが「+1」ボタン発表、Facebookの「いいね!」に似たソーシャル検索|INTERNET Watch
ブラウザー拡張機能「+Like」があればGoogle +1は不要?|Tech Crunch


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。