今回は、マーケティングについてです。ジョブ理論を取り上げます。
- マーケティングの 「ジョブ理論」 とは?
- 普段からマーケティングを鍛える方法とは?
こんな疑問に答える内容でブログを書きました。
この記事でわかること
この記事でわかるのは、ジョブ理論です。
記事の後半では、ジョブという視点 (レンズ) から、普段からできるマーケティング力の高め方をご紹介しています。
マーケティングの考え方やものの見方は、直接のマーケティング担当者ではなくてもビジネスで汎用的に使えるスキルです。
ぜひ記事を最後まで読んでいただき、仕事での参考にしてみてください。
ジョブ理論
イノベーションのジレンマでも有名なクリステンセンが提唱するのが、ジョブ理論です。
ジョブとは、顧客や消費者が 「済ませたいこと」 です。英語では Jobs to be done と表現します。
実践 「ジョブ理論」 という本では、「特定の状況で顧客が成し遂げたい進歩」 と定義されています。
私の一言の定義は、ジョブとは 「顧客がその状況でやりたい望み」 です。
やりたいことには、「~ をしたい」 という積極的なものと、「~ しなければいけない」 という義務的なものがあります。
ジョブの例 (ミルクシェイク)
クリステンセンが著書 ジョブ理論 において、ジョブの具体的な説明で使っているのが、ミルクシェイクの事例です。
ミルクシェイクの売上を伸ばすために調査チームは、実際に店舗の現場に足を運び、観察やインタビューをしました。
この時に持っていた視点は、「ジョブとは何か」 です。ミルクシェイクを買った客が、本当に得たい価値は何かです。
現場に出てわかったのは、売上が増える時間帯によって、特定の2つの顧客層がいることでした。
[ミルクシェイクの顧客 1] 自動車通勤の労働者 (平日の朝)
1つ目の顧客は、平日の朝にミルクシェイクを買っていた自動車通勤の労働者です。
ジョブは、「退屈な長時間の運転中に最適な食事をしたい」 でした。
彼らは車での通勤に退屈さを感じていました。ミルクシェイクが自動車通勤の労働者に買われた理由は、以下でした。
ジョブの背景
- 全て飲み終わるのに時間がかかり、長時間の通勤に適している
- 運転中に手軽に食べられる (片手で持てハンドル操作に支障がない、ボトル入れに置けるカップサイズ)
- 腹持ちがよい
彼らへのインタビューでは、もしミルクシェイクを買えなければ、他にどんな選択肢があるかを聞きました。ミルクシェイクの競合に当たるのは、バナナ、ドーナツ、ベーグル、スニッカーズなどでした。
しかし、バナナはすぐに食べ終えてしまう、ドーナツは手が汚れる、ベーグルは乾いていて喉に詰まりやすい、スニッカーズは朝から甘いものを食べるのは罪悪感を感じる、などの理由で、ミルクシェイクが勝ったのです。
[ミルクシェイクの顧客 2] 子ども連れで買いものに来ていた父親 (休日)
2つ目の顧客層は、子ども連れの父親です。
ショッピングに来ていた子どもは、お店ごとにあれが欲しい・これが欲しいと親にねだります。子どものわがままに No と言っていた父親が、ミルクシェイクならと子どもに買ってあげていました。
顧客のジョブは、「ミルクシェイクを買ってあげ子どもが喜ぶ姿を見たい」 でした。自分のことを少しでも良い父親だと思いたい気持ちがありました。
その先にある 「本当の価値」
ミルクシェイクの2つの顧客層である、自動車通勤の労働者、子ども連れの父親のいずれのケースにも共通することがあります。
ミルクシェイクそのものはあくまでジョブの手段であり、その先に本当に得たい価値があることです。
価値の本質を理解していなければ、適切なミルクシェイクの売り方ができません。
自動車通勤の労働者の場合であれば、ボリュームは多めで、ミルクシェイクの粘り気を強くし飲み干しにくいほうがよいでしょう。
一方、子どもに飲ませる父親の場合は、分量は子ども用に少なく、子どもでも飲み込みやすいサラサラとしたミルクシェイクがいいわけです。
このように、ジョブを見る視点には 「顧客 × その状況」 が大切です。
「ジョブは何か」 という視点を持つ
マーケティングで重要なのは、消費者や顧客理解です。
顧客の立場で理解するときに、「ジョブは何か」 という視点 (レンズ) が有効です。
ジョブを見る意識を持つことによって、次のように、普段からマーケティング力を鍛えておけます。
ジョブの視点で得られること
- 顧客理解につながる
- 顧客の顧客 (その先にいる顧客)
- 商品・サービスを売って終わりではない
以下、それぞれについて解説します。
[得られること 1] 顧客理解につながる
ジョブとは何かを考えることによって、顧客理解が深まります。
2つあり、顧客そのものの理解と、その状況への理解です。ジョブの定義を 「顧客がその状況でやりたい望み」 としたように、顧客と状況の両方があってこそ、顧客理解につながります。
ミルクシェイクの例では、顧客はドライバーと父親の2つがいました。状況は、退屈な通勤の車内、買いものに来て子どものねだりにノーと言っているというものでした。
単に消費者の属性情報である、例えば男性30代でひと括りにしてしまうと、解像度が粗く、顧客と状況は見えてきません。
[得られること 2] 顧客の顧客 (その先にいる顧客)
ジョブは何かを意識することにより、購入者と利用者が同じではない場合にも、想像を膨らませることができます。
ミルクシェイクのケースでは、父親が購入者、利用者は子どもでした。
BtoB のビジネスでは、購入者と利用者が同じではないケースはよくあります。例えば、相手企業の担当者が自社プロダクトを買ったとしても、ユーザーは社内の現場にいる営業担当者たちという場合です。
ここでも 「ジョブは何か」 、つまり、誰がどんな状況におけるジョブなのかを考えることにより、顧客の顧客にまで視野が広がります。
[得られること 3] 商品・サービスを売って終わりではない
ビジネスの観点、特に PL 視点では、売上が発生し利益を得られるタイミングが重要です。
一方で、顧客の立場になれば商品やサービスを買った段階では、まだジョブは済んでいません (ストレス解消で買いもの自体が目的の場合は除きます) 。
買うのはジョブのためであり、顧客にとって大切な瞬間は、商品・サービスを使った時です。利用シーンにこそ、顧客が望む価値が得られます。
売り手は販売がゴール、買い手は購入がスタートです。このギャップを埋めるためにも、「ジョブは何か」 という視点が役に立ちます。
まとめ
今回は、マーケティングについてでした。ジョブ理論を取り上げ、ジョブ理論とは何か、普段からマーケティング力を鍛える方法をご紹介しました。
最後に今回の記事のまとめです。
ジョブとは、顧客や消費者が 「済ませたいこと」 (Jobs to be done) 。顧客がその状況でやりたい望み。
ミルクシェイクの例では、2つの顧客層がいた。自動車通勤の労働者、子ども連れの父親。
いずれも共通するのは、ミルクシェイクそのものはあくまでジョブの手段であり、その先に本当に得たい価値があること。ジョブを見る視点には 「顧客 × その状況」 の両方が大切。
「ジョブは何か」 という視点を持てば、普段からマーケティング力を鍛えておける。
ジョブ視点で得られることは、
- 顧客理解につながる
- 顧客の顧客 (その先にいる顧客)
- 商品・サービスを売って終わりではない
実践 「ジョブ理論」 (早嶋聡史)
ジョブ理論 (クレイトン・M・クリステンセン)