投稿日 2020/04/17

尊敬してやまないマーケターに学ぶ、アイデアのつくり方




今回は、アイデアのつくり方です。


この記事でわかること


  • そもそも戦略とは何か (本質)
  • 戦略的フレームでのアイデアのつくり方
  • アイデア出しの前にやるべきこと


私が尊敬する、あるマーケターのアイデアのつくり方を取り上げています。

ぜひ記事を最後まで読んでいただき、お仕事での参考にしてみてください。


アイデアをつくる戦略的フレーム


最初にご紹介したい本があります。





USJ のジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? には、森岡毅さんのアイデアのつくり方が書かれています。森岡さんは、私が尊敬してやまないマーケターです。

この本に書かれていた、アイデアのつくり方を一言で言うと、戦略的にアイデアを生み出す方法です。具体的には、3つのステップでアイデアを考えていきます。


アイデアをつくる戦略的フレーム
  • 目的
  • 戦略
  • 戦術 (具体的なアイデア)


3つ目の戦術が各論でのアイデアです。

よく 「アイデア出しの100本ノック」 のような、できるだけ数多くのアイデアを出すやり方があります。戦略的フレームでアイデアをつくるのは、100本ノックを実際にやる前に 「目的」 と 「戦略」 を磨き込むことに時間を使います。

では、具体的にどんな方法でやっていくといいでしょうか?


戦略的フレームの例


この本に書かれていた例でご紹介します。


戦略的フレームの例
  • USJ への年間来場者数1000万人 [目的]
  • ファミリー層の獲得 [戦略]
  • 「新ファミリーエリアのユニバーサル・ワンダーランド」 の建設 [戦術 = 具体的なアイデア]


ここから、あらためて戦略について掘り下げてみます。

そもそも戦略とは何でしょうか?


戦略の本質


みなさんは、もし 「戦略とは何か」 と聞かれたら、どのようにお答えになるでしょうか?

戦略とは、目的を達成するために 「やること」 と 「やらないこと」 です。目的達成のためのリソース配分の指針が戦略です。

戦略の肝は、「やらないこと」 にあります。やらないことが明確になっているからこそ、やることに集中できます。有限なリソースを投下できるのです。

では、アイデア出しの戦略フレームに話を戻します。


ポイントは 「必勝要件」


3つの要素 「目的」 「戦略」 「戦術」 を使うアイデア出しのポイントは、「必勝要件」 を明確にすることです。

必勝要件とは、目的と戦略を設定した後に設定する目的達成のための条件です。先ほどの例 (ファミリー層の獲得) では、必勝要件は以下でした。


必勝要件の例 (ファミリー層の獲得)
  • 消費者の 「USJ は小さな子どもと行くと楽しめない」 という認識を覆すもの
  • 数割増えるであろう来場者の十分なキャパがなくてはならない
  • 計画予算の範囲で実現できなければいけない
  • 既存資産と相乗効果があり経営効率を高めるアイデアであればなお良い


これらの必勝要件を満たすアイデアが、「新ファミリーエリアのユニバーサル・ワンダーランド」 の建設でした。

それでは、必勝要件の本質とは何でしょうか?


必勝要件の本質


ここで言う必勝要件とは、アイデアをつくるための 「切り口」 であり 「制約条件」 です。

切り口とはアイデアを生み出すための着眼点です。

そして制約条件とは、アイデアを考えるためのルールのようなものです。具体的なアイデアを出していく前に制約を明確にするわけです。

では、必勝要件をつくることのメリットは、どこにあるのでしょうか?


必勝要件を設定するメリット


私が思う、各論のアイデアを出す前に必勝要件を明確にするメリットは、以下です。


必勝要件を設定するメリット
  • 制約によってクリエイティブなアイデアが生まれる
  • アイデアの偏りを防げる
  • 筋の良いアイデアかどうかの判断基準になる


最大のメリットだと思うのは、1つ目の 「制約があるからこそクリエイティビティが高まる」 です。


アイデア出しの前にやるべき Why と What


アイデアを考えるのは、そもそもの目的があって、その目的を達成するためです。

アイデア出しは手段にもかかわらず、具体的なアイデアを考えていると、ともすれば手段の目的化が起こります。

大事なのは、How の前に Why と What を明確にすることです。

How は具体的なアイデア出し、Why は目的、What は戦略と必勝要件です。「目的 - 戦略 - 必勝要件」 に時間をしっかりと使い、各論のアイデアを考えるのはその後です。


まとめ


今回は、戦略的フレームを使ったアイデアのつくり方でした。

最後に今回の記事のまとめです。


1.
戦略的フレーム (目的 - 戦略 - 戦術) と例
  • USJ への年間来場者数1000万人 [目的]
  • ファミリー層の獲得 [戦略]
  • 「新ファミリーエリアのユニバーサル・ワンダーランド」 の建設 [戦術 = 具体的なアイデア]


2.
ポイントは 「必勝要件」 の明確化。目的と戦略の後に設定する目的達成のための条件。
必勝要件とは、アイデアをつくるための 「切り口」 であり 「制約条件」 。


3.
必勝要件の例 (ファミリー層の獲得)
  • 消費者の 「USJ は小さな子どもと行くと楽しめない」 という認識を覆す
  • 数割増えるであろう来場者の十分なキャパがなくてはならない
  • 計画予算の範囲で実現できなければいけない
  • 既存資産と相乗効果があり経営効率を高めるアイデアであればなお良い


4.
必勝要件を設定するメリット
  • 制約によってクリエイティブなアイデアが生まれる
  • アイデアの偏りを防げる
  • 筋の良いアイデアかどうかの判断基準になる


5.
具体的なアイデアを考えることは目的達成のための手段。How というアイデア出しの前にやるべきは Why と What 。「目的 - 戦略 - 必勝要件」 に時間をしっかりと使い、各論のアイデアを考えるのはその後。





USJ のジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? (森岡毅)

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。