投稿日 2021/09/12

ライオン 「ブライト STRONG 衣類の爽快シャワー」 。勝負のポイントを前にずらした 「戦わないための戦略」 と利用者ベネフィット


今回は、戦略とマーケティングについてです。

✓ この記事でわかること
  • ライオンの洗濯用プレ洗剤 「ブライト STRONG 衣類の爽快シャワー」
  • 洗濯の常識にとらわれない 「洗濯かごから洗濯がスタート」 という着眼点がおもしろい
  • 勝負のポイントを前にずらした 「戦わないための戦略」
  • 利用者ベネフィット

ユニークな衣類の洗濯用洗剤を取り上げ、戦略やマーケティングの視点で掘り下げています。

洗濯かごから洗濯はスタート


ご紹介する商品はライオンの洗濯用プレ洗剤 ブライト STRONG 衣類の爽快シャワー です (公式サイトはこちら) 。

出典: ライオン

汚れた衣類をすぐに洗えない時に、衣類に洗濯液をかけておけば後から都合のよい時に洗濯ができる洗剤です。

おもしろいと思ったのは洗濯の常識にとらわれない発想です。一般的には 「洗濯は洗濯機でやるもの」 と思われていますが、「洗濯かごから洗濯はスタートしている」 という考え方です。

 「ブライト STRONG 衣類の爽快シャワー」 の紹介動画です。


具体的な使い方は、次のようになります。

出典: ライオン

使い方の特徴は、洗濯機で洗う前に気になる汚れ部分に洗剤液をつけ、6時間以上そのまま置いておきます。放置した後に洗濯機で普通に洗えば、酵素 (洗浄ブースト成分) が汚れを落としてくれます。

あらかじめ 「衣類の爽快シャワー」 をかけておき、いつもの洗濯で他の衣類と一緒に洗うのですが、これをたとえるなら、事前に学校の授業の予習を前日にすることによって、翌日の授業本番でより理解が進むイメージです。


戦略とマーケティングでの掘り下げ



ではここからは、ご紹介している 「ブライト STRONG 衣類の爽快シャワー」 を戦略とマーケティングの観点から掘り下げていきます。

ポイントは2つです。

✓ 戦略とマーケティング
  • 戦わないための戦略
  • 利用者ベネフィット


戦わないための戦略


着眼点でおもしろいと思ったのは、「洗濯は洗濯機でやるもの」 ではなく、「洗濯かごから洗濯はスタートしている」 としていることです。洗濯という利用シーンを 「点」 ではなく 「線」 で捉えています。

ここで言う 「点」 とは洗濯機で洗う時です。点ではなく 「線」 とは、時間軸をもっと前に引き伸ばし洗濯機で洗う6時間以上前に利用シーンをつくったことです。

一般的な話になりますが、洗濯用洗剤の市場で起こっている競争は、「洗濯機に入れる洗剤として選ばれ買ってもらえるかの争い」 です。洗濯洗剤の市場には多数の洗剤ブランドがあり、競争は激しい市場です。

しかし 「プレ洗濯市場」 、つまり洗濯機を使う前の利用シーン (競争) はホワイトスペースで、そこには競合商品はいません。「ブライト STRONG 衣類の爽快シャワー」 は競争の激しい洗濯市場から、プレ洗濯市場というブルーオーシャンに移ったわけです。ここに 「戦わないための戦略」 を見ます。


利用者ベネフィット



では次にマーケティングの視点でも掘り下げてみましょう。

 「ブライト STRONG 衣類の爽快シャワー」 の利用者への提供価値は2つあります。

✓ 利用者ベネフィット
  • 不安の解消
  • 都度洗わなくて済む (手間がはぶける) 

不安の解消


前者の 「不安の解消」 について、例えば服にコーヒーやソースがついてしまった時です。汚れた服を翌日に洗濯すると、洗濯までの間に汚れが服に染み込み、洗ってもシミが残るのではないかと、こんな不安にならないでしょうか。

しかし 「ブライト STRONG 衣類の爽快シャワー」 を使えば、6時間以上の時間をあけることが必要で、これはつまり安心していつもの洗濯のタイミングまでそのまま放置できます。「もしかしたらこの汚れは落ちないかもしれない」 という不安を取り除いてくれます。これが1つ目の利用者ベネフィットです。

都度洗わなくて済む


利用者ベネフィットの2つ目の 「都度洗わなくて済む」 についても補足しますね。

例えば赤ちゃんや小さい子どもは、食事のたびに服を食べ物で汚してしまいます。汚れがひどいと親は毎回の食事ごとに手洗いをすることになります。それだけの少量なので洗濯機を回すほどでもないからです。

手洗いをしている時は赤ちゃんから目が離れるので、赤ちゃんのことを見ていられません。しかし 「ブライト STRONG 衣類の爽快シャワー」 を使っておけば、晩や翌朝に他の服とまとめて洗えます。

他には、一人暮らしで洗濯の量が毎日するほどでもない状況でも重宝しそうです。気になる汚れ、例えばシャツの首回りの襟部分だけは 「衣類の爽快シャワー」 をつけておき、後でまとめ洗いができます。ちなみに 「爽快シャワー」 は服に洗剤液をつけてから最大で1週間程度は持つとのことです。


まとめ


今回はライオンの 「洗濯用プレ洗剤」 を取り上げました。

最後にまとめです。

ライオンの洗濯用プレ洗剤 「ブライト STRONG 衣類の爽快シャワー」 
  • 汚れた衣類をすぐに洗えない時に、衣類に洗濯液をかけておけば後から都合のよい時に洗濯ができる洗剤
  • 洗濯の常識にとらわれない 「洗濯かごから洗濯がスタート」 という着眼点がおもしろい

戦わないための戦略
  • 一般的に洗濯用洗剤の市場で起こっている競争は、「洗濯機に入れる洗剤として選ばれ買ってもらえるかの争い」 。多数の洗剤ブランドがあり、競争は激しい市場
  • プレ洗濯市場という洗濯機を使う前はホワイトスペースで競合商品はいない。競争の激しい洗濯市場から、プレ洗濯市場に移った
  • 勝負のポイントを前にずらし、洗濯の利用シーンの時間軸を 「点」 ではなく 「線」 で捉えている

利用者ベネフィット
  • 服が汚れても洗濯液をつけでおけば、安心していつもの洗濯のタイミングまでそのまま放置できる。「もしかしたらこの汚れは落ちないかもしれない」 という不安を解消してくれる
  • 服が汚れて都度洗わなくて済む。例えば赤ちゃんの食事での汚れもその場で洗う手間がはぶける


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。