投稿日 2021/09/02

人工サーフィン施設 「神戸レイーズ」 に学ぶ、マーケティングでの顧客設定と価値提供


今回は、マーケティングの話です。

✓ この記事でわかること
  • 人工サーフィン施設 「神戸レイーズ」 
  • ターゲット顧客はサーフィンの初心者
  • 初心者ならではの困りごと
  • 神戸レイーズの提供価値
  • マーケティングに学べること

この記事を読んでいただきたいと思うのは、マーケターの方です。ビジネスでの事例から、顧客設定の重要性とターゲット顧客に価値を提供する方法を見ていきます。

ぜひ最後まで読んでいただき、お仕事での参考になればうれしいです。

人工サーフィン施設 「神戸レイーズ」


今回ご紹介するのは、神戸市内にある人工サーフィン施設の 「神戸レイーズ」 です (公式サイトはこちら) 。


サーフィン用の波が人工で作られ、サーフィンを楽しめます。イメージはテーマパーク内などの大きなプールでの 「波の出るプール」 です。

実際の様子はこちらの YouTube からご覧ください。


以下は日経新聞の記事からの引用です。

2016年にオープンし、レスポンスエンジニア (神戸市) が運営する。

 (中略) 

波は、鉄製の箱形搬送器で勢いよく水を押し出すことで発生させる独自の仕組みだ。水槽での実験を繰り返し、左右に割れていく良質な波を生み出した。「キャリー式造波装置」 として日本や米国などで特許も取得している。

オープン当初は小さかった波も、21年は1.1メートルと十分なサイズを楽しめる。サイズを調節することも可能だ。波は85 ~ 95秒の等間隔で発生する。

料金は1セッション100分1万450円 (午後2時以降は定員12人で1セッション150分) 。

ターゲット顧客の設定


ここからは神戸レイーズについて、マーケティングの観点で掘り下げていきます。

特徴的なのはターゲット顧客を 「サーフィン初心者」 に絞っていることです。

先ほどの日経からの引用です。

施設のターゲットは初級者だ。実際の海では、上級者が占拠していたり、混雑していたりする。また十分な大きさの波が来ないなど思うように波乗りを楽しめる機会は意外と少ない。

一方、定員が6人に設定され、確実に波がある神戸レイーズではその心配がない。反復練習にはうってつけの環境だ。

サーフィン初心者の 「不」 


サーフィンの初心者にとって悩ましいのは、思う存分にサーフィンをやる機会が少ないことです。

具体的には、次のような 「不」 があります (中上級者にも共通することも含めています) 。

✓ サーフィン初心者の 「不」 
  • 近場に海がない (アクセスしにくい)
  • 海へ行っても他のサーファー (特にそこに通っている上級者) には遠慮してしまう
  • 良い波がなかなか来ない
  • 波が来ても上級者に譲ってしまう
  • 中上級者たちはコミュニティができているが、初心者は輪に入れず疎外感を感じる


神戸レイーズの提供価値



これらのサーフィン初心者の不に対して、神戸レイーズは人工サーフィン施設によって解決しています。

以下が神戸レイーズが顧客にもたらす価値です。

✓ 神戸レイーズの提供価値
  • 神戸市内でアクセスしやすい (神戸の中心地より車で20分) 
  • 人工の波が一定間隔で同じ高さで出てくるので繰り返し練習ができる
  • 定員枠が決まっているので、混み具合など周りの人を気にすることなくサーフィンができる
  • 自分が初心者だからといって遠慮しなくていい
  • 受付前や入り口付近でたむろすることを禁じているので、誰もが来やすい雰囲気がある


マーケティングに学べること


では、神戸レイーズからマーケティングの観点で何が学べるでしょうか?

一言で表現をすれば、顧客を絞るからやることが明確になることです。

神戸レイーズはあえて 「サーフィン初心者」 にターゲット顧客を絞りました。ターゲットを絞ると、自分たちの 「やること」 と 「やらないこと」 が明確になります。

もし上級者を相手にするなら、海での本物の波と遜色ない波を人工的に再現することが求められます。一方、人工の波は上級者には物足りなくても、初心者には練習に適した波になります。

なぜやることが明確になるかと言うと、ターゲット顧客を絞ると顧客像が解像度高く具体化できるからです。サーフィン初心者というターゲット顧客を理解しているからこそ、サーフィンでの悩みや困りごと、何を求めたり希望しているかを時には本人以上に理解し、寄り添えるのです。

神戸レイーズから、私たちが学べることを一般化すると次のようになります。

✓ マーケティングに学べること (価値提供のプロセス) 
  • ターゲット顧客の明確化
  • 顧客の理解 (困りごと, 希望) 
  • 「やること」 と 「やらないこと」 を決める
  • 顧客へのソリューション実現
  • ソリューションから顧客に価値を提供する

基点になっているのは 「顧客を絞ること」 です。

ターゲットの切り口は様々ありますが、神戸レイーズのように 「初心者」 とするのは有効なアプローチです。


まとめ


今回は人工サーフィン施設の 「神戸レイーズ」 を取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げました。

最後にまとめです。

人工サーフィン施設 「神戸レイーズ」 の提供価値
  • 神戸市内でアクセスしやすい (神戸の中心地より車で20分) 
  • 人工の波が一定間隔で同じ高さで出てくるので繰り返し練習ができる
  • 定員枠が決まっているので、混み具合など周りの人を気にすることなくサーフィンができる
  • 自分が初心者だからといって遠慮しなくていい
  • 受付前や入り口付近でたむろすることを禁じているので、誰もが来やすい雰囲気がある

マーケティングに学べること (価値提供のプロセス) 
  • ターゲット顧客の明確化
  • 顧客の理解 (困りごと, 希望) 
  • 「やること」 と 「やらないこと」 を決める
  • 顧客へのソリューション実現
  • ソリューションから顧客に価値を提供する


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。