投稿日 2021/09/08

メルカリのリアル店舗 「メルカリステーション」 の狙い。リアルならではの集客と価値提供

出典: メルカリ

今回は、メルカリを取り上げます。メルカリステーションです。

✓ この記事でわかること
  • メルカリのリアル店舗 「メルカリステーション」
  • リアル店舗にメルカリが進出する狙い3つ
  • 丸井と組む意味

メルカリステーションについて、戦略やマーケティングの観点から掘り下げています。ぜひ最後まで記事を読んでいただき、何か少しでも参考になればうれしいです。

メルカリステーションとは


皆さんは、メルカリは利用されているでしょうか?

今回ご紹介したいのは、「メルカリステーション」 です。メルカリステーションとは、メルカリを体験できるお店です (公式サイトはこちら) 。


メルカリに詳しいスタッフが教えてくれ、その場で撮影し出品したり、梱包と配達手配もできます。2020年6月からスタートしていて、店舗は独自ではなく百貨店の丸井内に出店しています (当時のニュースリリースはこちら) 。


メルカリステーションでできること


メルカリステーションでは、具体的に次のようなことができます。

メルカリ教室 (出典: メルカリ)

出品物の撮影 (出典: メルカリ)

梱包 (出典: メルカリ)

発送手続き (出典: メルカリ)


リアル店舗に進出する狙い


ではここからは、オンラインプレイヤーであるメルカリがリアル店舗に進出する狙いを見ていきましょう。

3つです。

✓ メルカリステーションの狙い
  • 新規ユーザーの獲得
  • 既存ユーザーの利用頻度の向上
  • ユーザー理解

では順番に見ていきましょう。

新規ユーザーの獲得


メルカリがリアル店舗を持つ1つ目の狙いは、新規ユーザーを獲得することです。

日経クロストレンドの記事によれば、メルカリの自社調査から分かったことで、2021年3月時点でメルカリ月間利用者は1904万人に対して、「メルカリアプリでの出品意向はあるが使ったことがない人」 は3610万人とのことです。月間利用者の2倍近い規模です。

出品をしたいと思っているのに実際は利用していないのは、何かしらの物理的または心理的なハードルがあるからです。解消するための打ち手が、丸井の中で出店してのリアル店舗であるメルカリステーションなのです。

メルカリステーションでは先ほども見たように、スタッフがメルカリの使い方を丁寧に教えてくれます。メルカリステーションの来店者で最も多い年代が 40 ~ 50 代とのことで (日経クロストレンド記事より) 、おそらく意向あり未利用者の3600万人の中でも多い層がこの年代ではないでしょうか。

新規ユーザーの獲得を、リアル店舗でのメルカリ体験からやっていくのが1つ目の狙いです。

既存ユーザーの利用頻度の向上


メルカリステーションは新規ユーザーの獲得だけではなく、すでにメルカリを使ってる人にも利用されています。ちなみにメルカリステーションの来店リピート率は、同じ日経クロストレンドの記事によれば約 20% とのことです。

既存のユーザーでもメルカリの使い方がまだ十分に分かっていない人もいるわけで、メルカリの使い方を教えてくれるメルカリステーションは、その人たちの受け皿になっています。

また、メルカリステーションに出品する物を持っていけば、撮影、出品、梱包からポスト投函まで全てができます。出品物の撮影は専門ブースでやれば見栄えが良くなり、売れやすくなります。

メルカリステーションは既存ユーザーにも訪れる価値があり、メルカリへの満足度や利用頻度の向上につながります。

ユーザー理解


メルカリステーションでは、利用者はメルカリの使い方を体験教室やアドバイスから学べます。一方の運営するメルカリとっても学べる場になっています。

日経からの引用です。

例えば、メルカリステーションで顧客から聞かれた 「商品を発送するときの値段が分かりづらい」 という声から、アプリでの出品時に 「配送の方法」 を選ぶ際、配送料金表を掲載するようにした。

メルカリステーションというリアル店舗で利用者 (新規と既存ユーザー) と直接のやり取りをすることによって、ユーザー理解ができるわけです。メルカリがリアル店舗を持つ3つ目の狙いです。

具体的には次のようなことです。

✓ メルカリステーションでのユーザー理解
  • 利用意向はあるのに一度も使ったことのない人には、何が初めての利用のハードルなのか
  • すでに使ったことがある人にとってのメルカリの不便さや、機能でまだ理解されていないことは何か
  • メルカリに限らず普段利用している他のサービスは何か (競合情報の収集)

これらは、特に気持ちの面はメルカリアプリの利用履歴では捉えきれないことです。

アンケート調査やインタビュー調査は実施していると思いますが、アンケートでのユーザー理解はどうしても表面的、インタビューは実施できる対象者の人数は限定的です。

メルカリステーションでは日々運営しているので、インタビューなどの調査に比べて常にユーザーを理解ができる機会が仕組みとしてできています。


丸井と組む意味


出典: メルカリ

ここまで、オンラインプレイヤーのメルカリが、メルカリステーションという実店舗 (オフライン) に進出している狙いを見ていきました。

メルカリは独自で店舗を構える選択肢もあったはずですが、丸井というすでに好立地での店舗があり、来店するお客を持っているプレイヤーと組むことを選びました。丸井と組むことにより、メルカリは自分たちは持っていない実店舗の運営や対面での接客などのノウハウを学ぶことができます。

これがメルカリにとって丸井と組む意味で、メルカリアプリでのオンラインでのサービスレベル向上につなげられます。


まとめ


今回はメルカリステーションを取り上げ、メルカリの狙いを掘り下げました。

最後にまとめです。

メルカリステーション
  • メルカリが丸井の店舗に出店しているメルカリを体験できる店
  • メルカリに詳しいスタッフが教えてくれたり、出品物を持っていけばその場で撮影から出品したり梱包と配達手配もできる

メルカリステーションの狙い
  • 新規ユーザーの獲得。特に 40 ~ 50 代のシニア層
  • 既存ユーザーの利用頻度と満足度の向上
  • ユーザー理解。対面で直接やりとりをすることによって使い始める時のハードル、既存ユーザーの使い方や不満点 (ペインポイント) を観察・インタビューする機会にできる
  • 丸井と組むことにより、実店舗の運営や対面での接客などのノウハウを学び活用する


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。