投稿日 2021/09/07

コロナ禍の逆境を跳ね返した 「ミンティア + MASK」 。ヒット理由のマーケティング解説


今回は、あるヒット商品を取り上げ、マーケティングの視点でヒットの理由を掘り下げています。

✓ この記事でわかること
  • ヒット商品 「ミンティア + MASK」
  • 開発の背景と課題感 (かつての強みが弱みに)
  • 弱みの解消と強みの復活
  • 開発からネーミングまでのコンセプトの一貫性

この記事を読んでいただきたいと思うのは、商品やサービス開発、マーケティングの仕事をされている方です。異業種の話になるかもしれませんが、他の業界の取り組みから商品やサービスのアイデアへのヒントになると思います。

他には、ヒット商品の秘密をマーケティングの視点で知りたいと思った方にも参考になればうれしいです。

ミンティア + MASK


今回ご紹介したい商品は ミンティア + MASK です。コロナ禍の変化にうまく適用したヒット商品です (公式サイトはこちら) 。


以下は日経新聞の記事からの引用です。

アサヒグループ食品のタブレット菓子 「ミンティア + MASK」 が新型コロナの逆風下で売り上げを伸ばしている。

ミンティアは通勤・通学中の購入も多かったが、コロナ禍で外出機会が減少。そこで新たな生活様式に対応し、マスク着用時でも目に染みず、香りがマスク内にとどまるように工夫した新商品を開発した。

3月の販売開始から4カ月半で年間売り上げ目標金額を突破したという。

引用した最後にあったように、「ミンティア + MASK」 は年間の売上目標をわずか4ヶ月半で達成したヒット商品です。


開発の背景と課題感


ミンティアの特徴は、爽快感や清涼感、強い刺激です。しかし、コロナによって逆効果となってしまいました。

というのは、外出時やオフィスでも常にマスクの着用が一般的になり、マスク着用時にミンティアを食べると刺激の強さが目に染みてしまうのです。

つまり、今までの他の類似商品にはないミンティアの 「強み (独自化要素) 」 が 「弱み」 になってしまったのです。弱みとは、それがあることによって選ばれにくくなってしまう要因です。

マスクを付けていても美味しく食べられるように新しく開発されたのが 「ミンティア + MASK」 です。香りは鼻まででとどまり、目に染みない清涼感を実現しました。

 「マスク着用時に食べるミンティア」 という食べるシーンを具体的に絞り込んだコンセプトが明確だったからこそできたことです。


強みが弱みになる要因



ここまで見てきたように、ミンティアの強みが一転して弱みになってしまいました。

新型コロナウイルスの流行と、コロナによるマスク常時着用という消費者のライフスタイルが変わったからです。こうした外部環境の変化によって、強み (刺激があり強い清涼感) が、マスク着用時には目に染みてしまうという思わぬ現象が起こってしまったわけです。


弱みの解消と強みの復活


そこでミンティアは新しい強みを獲得しようとしました。

正確に表現すれば、弱みになってしまったことを解消し、もともとあった強みを再び消費者に認識してもらうことです。具体的には、マスクをつけていても清涼感があるという強みを残し、目に染みないという弱みをなくしました

商品のネーミングに 「MASK」 と入っているところがいいです。

商品名を見ただけで、マスクをしていても食べられる、もっと言えばマスク着用時のミンティアということがパッと見てわかります。

CM でもマスク着用時という利用シーンを訴求しています。


開発からネーミングまでのコンセプトに一貫性があるからこそ、ヒット商品になれたのが 「ミンティア + MASK」 です。


まとめ


今回はヒット商品の 「ミンティア + MASK」 を取り上げ、ヒットの理由を分析しました。

最後にまとめです。

タブレット菓子 「ミンティア + MASK」
  • コロナ禍での新たな生活様式に対応した新商品
  • マスク着用時でも目に染みず、香りがマスク内にとどまるように工夫されている

強みが弱みに
  • ミンティアの特徴は爽快感, 清涼感, 強い刺激だが、マスク着用時にミンティアを食べると刺激の強さが目に染みてしまう
  • 消費者のライフスタイルという外部環境の変化によって、今までの他の類似商品にはないミンティアの 「強み (独自化要素) 」 が 「弱み」 になってしまった

弱みの解消と強みの復活
  • ミンティア + MASK はマスクをつけていても清涼感はある強みを残し、目に染みないという弱みをなくした
  • 商品のネーミングに 「MASK」 とあり、マスク着用時のミンティアということがパッと見てわかる
  • 開発からネーミングまでのコンセプトに一貫性があるからこそヒット商品になれた


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。