今回は DX についてです。
✓ この記事でわかること
- DX の本質と3つのポイント
- 小売 DX 事例から解説
- [事例 1] ウォルマートの従業員向けアプリ 「Me@Walmart」
- [事例 2] 凸版印刷の店頭プロモーション 「リアル DATA サイネージ」
具体的な2つの事例から、DX のポイントがわかる内容になっています。
この記事を読んでいただきたいと思うのは、特に想定をしているのは社内で DX の仕事に関わっていらっしゃる方です。小売の事例なので異業種かもしれませんが、他社の成功事例は自社の DX 化のヒントになると思います。
また、DX とは何か、DX のポイントは何かを具体的に知りたいと思った方にも少しでも参考になればうれしいです。ぜひ最後まで読んでいただき、お仕事での参考になればうれしいです。
DX の本質
ここでは私の一言の定義をご紹介させてください。DX とは経営や事業のコア領域をデジタル化し、ビジネスモデルを進化させることです。
これは裏を返せば、単なる IT ツールの導入は DX の一部分にしかすぎません。これをもって DX 化しているとは言えないのです。DX は事業や経営の成長のための手段です。
DX のポイント3つ
では、DX のポイントについても見てみましょう。3つです。
✓ DX のポイント
- 情報のデジタル化と集約
- プロセスの省力・効率化
- 価値の創出
それぞれについて補足しますね。
1つ目の 「情報のデジタル化と集約」 とは、これまではアナログだったこと、ブラックボックスだったことをデータ化し一元管理できる状態にします。
2つ目の 「プロセスの省力・効率化」 は、例えばこれまでは紙の書類で手間がかかっていた作業、人の手により行っていたのでミス発生の原因になっていた業務プロセスをデジタル化・自動化することです。効率化や精度の向上が期待できます。
3つ目の 「価値の創出」 とは、デジタル化によって新しい価値が生まれることです。効率化により時間ができるのでその分を大事なことに使えたり、顧客への提供価値に貢献します。機会損失がなくなり、売上や収益が増えることもあります。
* * *
ここまでは DX についての概念的な話でした。ここから先は具体的な事例で DX について掘り下げていきます。
小売の DX 事例
ご紹介したい事例は2つです。いずれも小売業界の DX です。
✓ 小売の DX 事例
- ウォルマートの従業員向けアプリ 「Me@Walmart」
- 凸版印刷の店頭プロモーション 「リアル DATA サイネージ」
では順番に見ていきましょう。
[DX 事例 1] ウォルマートの従業員向けアプリ 「Me@Walmart」
アメリカの小売最大手のウォルマートは、Me@Walmart というアプリを従業員向けに使っています。ウォルマートの従業員数は160万人ですが、そのうち74万人が使用しています (2021年6月時点) 。
出典: Walmart
Me@Walmart の詳細は、以下のウォルマートのニュースリリース (2021年6月) に書かれています。
Walmart Unveils All-in-One Associate App, Me@Walmart, and Gives 740,000 Associates a New Samsung Smartphone
特徴は4つです。
✓ Me@Walmart の特徴 (機能)
- 勤務スケジュール
- 出退勤の記録
- 従業員間のコミュニケーションツール (トランシーバー機能)
- 音声アシスタント 「Ask Sam」 (iPhone の Siri のように声で訊くと答えてくれる。例えば在庫があるか, どこにあるか)
スマホの中にあるアプリ内に、仕事で必要で優先度の高い情報が集約され、従業員の作業効率化に役立っています。
Me@Walmart は DX の3つのポイントのうち、1つ目の 「情報のデジタル化と集約」 、2つ目の 「プロセスの省力・効率化」 が当てはまります。
[DX 事例 2] 凸版印刷の店頭プロモーション 「リアル DATA サイネージ」
では2つ目の DX 事例です。
ご紹介したい小売の DX 事例は凸版印刷の店頭サイネージです。
出典: 凸版印刷
以下は凸版印刷からのニュースリリースです (2021年6月) 。
凸版印刷、店頭プロモーションをしながら購買行動データを取得できる 「リアル DATA サイネージ™」 を提供開始
特徴は2つあります。
✓ リアル DATA サイネージの特徴
- 店頭でのサイネージ (映像ディスプレイ)
- サイネージに取り付けられたカメラでの来店客の購買行動データ収集
リアル DATA サイネージは、この2つからメーカーの店頭プロモーションを支援するサービスです。
従来はサイネージは商品情報を流すアウトプットのみでした。しかしリアル DATA サイネージはインプットの機能も持っています。インプットとはお客の買いもの行動データの収集です。
具体的には、
✓ 買いもの行動のデータの例
- 店内の商品棚の前を通った人の人数
- 棚前での滞在時間
- 来店客の性別年代
出典: 凸版印刷
従来は店頭での客の行動はブラックボックスでした。店員が目で見て観察すればお客の買いものの仕方はわかりましたが、大量のデータは取れませんでした。
リアル DATA サイネージは、店内の購買行動データという今まではアナログ情報でブラックボックスだったことをカメラでデータ収集しデジタル化します。これが DX の1つ目のポイントである 「情報のデジタル化と集約」 です。
そしてリアル DATA サイネージは、収集した購買行動データから販促プロモーションなどのマーケティング施策に活用できます。
メーカーの売上が増えるだけではなく、来店する消費者にとっても自分が欲しいと思える商品の品揃えが充実し、見つけやすい・買いやすい店のレイアウトになります。つまり小売・メーカー・消費者の全員にベネフィットを提供しています。DX の3つ目のポイントである 「価値の創出」 です。
まとめ
今回は DX についてでした。
最後にまとめです。
✓ DX の本質
- DX とは経営や事業のコア領域をデジタル化しビジネスモデルを進化させること
- 単なる IT ツール導入は DX の一部分にしかすぎない
- DX のポイントは、① 情報のデジタル化と集約、② プロセスの省力・効率化、③ 価値の創出
[DX 事例 1] ウォルマートの従業員向けアプリ 「Me@Walmart」
- スマホのアプリ内に仕事で必要で優先度の高い情報が集約され、従業員の作業効率化に役立っている
- DX の3つのポイントのうち、1つ目の 「情報のデジタル化と集約」 、2つ目の 「プロセスの省力・効率化」 が当てはまる
[DX 事例 2] 凸版印刷の店頭プロモーション 「リアル DATA サイネージ」
- 店内の購買行動データ (今まではブラックボックスだったこと) をカメラでデータ収集
- 収集した購買行動データから販促プロモーションなどのマーケティング施策に活用する
- DX の1つ目のポイントである 「情報のデジタル化と集約」 、3つ目の 「価値の創出」 につながっている
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