投稿日 2021/09/30

マッサージボディソープ 「hogusuu」 に学ぶ、顧客に刺さる商品名のつくり方


今回はマーケティングの話で、ネーミングについて見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • マッサージボディソープ 「hogusuu (ほぐすぅ〜) 」 
  • ブランド名に注目した理由
  • 顧客ニーズと顧客インサイト
  • ネーミングに込められた意味
  • マーケティングへの学び

この記事を読んでいただきたいと思うのは、マーケターの方です。 マーケティングの施策アイデアを作ったり、商品名を考えたりする役割にある方には参考になればと思います。

新登場したマッサージボディソープを事例に、マーケティングに学べることを解説しています。ぜひ最後まで読んでみてください。

マッサージボディソープ 「hogusuu」 


今回取り上げたいのはマッサージボディソープの 「hogusuu (ほぐすぅ〜) 」 です (公式サイトはこちら) 。


以下は hogusuu を紹介している日経新聞の記事からの引用です。

クラシエホームプロダクツの新ブランド名。読みは 「ほぐすぅ~」 。9月に 「hogusuu マッサージボディソープ」 を発売する。

自社調査によると、肩こりやむくみなど体の不調はお風呂でケアしたいという女性が多いことが分かった。

 「ほぐして、すぅっと、深呼吸。」 をコンセプトに、体を洗いながらマッサージできる商品を開発。名称は、「ほぐす」 + 「すぅ~と体も気持ちも軽くなる」 = 「ほぐすぅ~」 とした。体がほぐれると浅くなっていた呼吸がすぅっと深く吸え、気持ちも前向きになれるのではとの思いを込めた。

開発の背景は自社調査結果からでした。肩こりやむくみをお風呂でケアしたい女性をターゲットに、体を洗いながらマッサージできる商品を開発しました。

ブランド名の 「hogusuu (ほぐすぅ〜) 」 は、「ほぐす」 と 「すぅっと体も気持ちも軽くなる」 からです。


ブランド名に注目した理由


ここからは、「hogusuu」 というネーミングに注目をして掘り下げていきます。

ブランド名に注目した理由は、hogusuu には顧客ニーズと顧客インサイトの両方が入っているからです。具体的には、「肩こりやむくみをほぐしたい」 というのが顕在化している顧客ニーズ、「体と心を軽くしたい」 という気持ちが顧客インサイトです。


顧客ニーズと顧客インサイトの違い


マーケティングでは顧客ニーズに応えるだけではなく、顧客インサイトを理解し、顧客のインサイトまでを満たすことが大事です。

では、そもそもの顧客ニーズと顧客インサイトの違いを整理しておきましょう。

顧客ニーズ


ニーズとは、ここでは厳密にはすでに顕在化している欲求のことを指しています。

ニーズは顧客に訊けば答えてくれたり、アンケート調査から出てきます。hogusuu の例では 「肩こりやむくみを解消したい」 という欲求は、女性が常日頃から意識していることです。

顧客インサイト


一方の顧客インサイトは、普段は意識はしていなく自覚はないが、そうだと何かしらのきっかけで気づかされれば、欲しい・使いたい・買いたいなどの行動につながる奥にある気持ちです。

シンプルに一言で表現すれば、顧客インサイトは 「人を動かす隠れた気持ち」 です。マーケティングでは顧客インサイトや消費者インサイトを 「心のツボ」 や 「心のポットボタン」 と言ったりします。少し硬い言葉を使えば、インサイトを刺激することを 「心の琴線に触れる」 と言います。


ネーミングに込められた顧客インサイト


顧客ニーズと顧客インサイトについて整理ができたので、あらためて hogusuu のネーミングについて見ていきましょう。

hogusuu というブランド名は、「ほぐす」 と 「すぅ〜と体も気持ちも軽くなりたい」 を合わせてできたものでした。後者の 「軽くなりたい」 は、普段から自覚しているわけではないはずです。自覚できているのはあくまで 「肩こりなどの体をほぐしたい」 までのレベルです。

つまり、顕在化している顧客ニーズが 「体をほぐしたい」 、顧客インサイトは 「体も気持ちも軽くなりたい」 なのです。

hogusuu というネーミングは、単にやわかい表現でかわいらしいイメージからのブランド名というだけではなく、ターゲットとなる女性の心のツボまで理解し、「お風呂の時間を心も体も満たしてほしい」 というつくり手の想いが込められています。


マーケティングに学べること


hogusuu が教えてくれるのは、顧客理解や消費者理解の重要性と活用です。

理解の度合いを表面的なレベルで終わらず、顧客や消費者本人が認識していないような奥にある感情 (無自覚な欲求や不満) までです。

このような顧客インサイトは、普段は意識されない気持ちです。本人が気づいていなかったり、何となく感じているが言葉にはできないものです。こうした無意識下の感情は直接訊いても相手からは出てきません。マーケター側が相手を深く理解することにより能動的に自らが見出すものなのです。

hogusuu は 「体も気持ちも軽くなりたい」 という顧客インサイトをネーミングに反映させました。ただし、ネーミングはあくまで顧客インサイトの活用の1つの手段です。

必ずしも商品名に入れなくてもよく、デザインやパッケージ、コミュニケーションでなど顧客インサイトを生かす方法に唯一のものはありません。大事なのは、「その商品や施策アイデアはどんな顧客インサイトに基づいているのか」 を明確にすることです。


まとめ


今回は、マッサージボディソープの 「hogusuu」 のブランド名から、マーケティングに学べることを掘り下げました。

最後にまとめです。

マッサージボディソープ 「hogusuu」 
  • 肩こりやむくみをお風呂でケアしたい女性をターゲットに、体を洗いながらマッサージできる商品として開発
  • ブランド名の hogusuu は 「ほぐす」 + 「すぅ~と体も気持ちも軽くなる」 = 「ほぐすぅ~」 から

ネーミングに込められた顧客インサイト
  • hogusuu には顧客ニーズと顧客インサイトの両方が入っている
  • 「肩こりやむくみをほぐしたい」 が顕在化している顧客ニーズ、「体と心を軽くしたい」 という気持ちが顧客インサイト

マーケティングに学べること
  • hogusuu というブランド名が教えてくれるのは顧客理解の重要性と活用
  • 理解の度合いを表面的なレベルで終わらず、顧客や消費者本人が認識していないような奥にある感情 (無自覚な欲求や不満) まで掘り下げよう
  • 大事なのは 「商品や施策アイデアはどんな顧客インサイトに基づいているのか」 を明確にすること


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。