今回は、ヒット商品の戦略についてです。ソニーのスマートウォッチを取り上げます。
✓ この記事でわかること
- ソニースマートウォッチ 「wena3」 の特徴
- wena3 のヒットの理由
- 美しい2つの戦略 「戦わない戦略」 と 「共存戦略」
ソニーのスマートウォッチ wena3 について、ヒット理由を戦略の観点から紐解きます。
この記事を読んでいただきたいと思うのは、仕事で戦略を考えたり作る役割にある方です。wena3 の 「戦わないための戦略」 をご紹介し解説するので、お仕事へのヒントになればと思います。
他には、ソニーのスマートウォッチのヒット理由や戦略に興味を持った方にも参考になればうれしいです。
ソニーのスマートウォッチ 「wena3」
今回ご紹介するのはソニーのスマートウォッチ wena3 です (公式サイトはこちら) 。
出典: ソニー
バンドがスマート
wena3 の特徴は、腕時計のバンド部分にスマートウォッチ機能とディスプレイが埋め込まれています。ディスプレイがあるのは手首の内側です。
付いている機能は例えば Suica や、スマートスピーカーに対応しています。
他社の時計にも使える
もう1つ特徴があり、バンドではなく文字盤の部分 (手首の外側 (手の甲) ) には、ソニー純正の時計 (文字盤) だけではなく他社の時計も取り付けられます。この場合はバンドは wena3 で、文字盤は他社製品という組み合わせです。
こちらの公式サイトには色々な時計との組み合わせが紹介されています。
掲載されている利用者の声を引用します。
大ぶりな時計が好みですがただ大ぶりなだけでなく、手書きの文字が可愛らしくてそのギャップに惹かれたアニエス・ベーの時計!
wena のバンドに付け替えてからさらに便利に使いこなせるようになりました!毎日身につける時計で、お店でお会計ができたりスマホにきたお知らせがわかるなんてものすごく便利!
子供が一緒のときには特に、自分の荷物はミニマムにしたいし身軽に動きたい。そんな願いを叶えてくれました。
引用: wena
3倍近い売上
wena3 は2020年10月に発売され、発売半年での売上は以前の wena シリーズに比べて3倍近いとのことです。以下は日経の記事から引用です。
「アナログ時計とのハイブリッド分野で、確固たる地位を築けた」 。ウェナシリーズ発案者の対馬哲平統括課長は6年以上開発してきた同シリーズの最新作に自信を見せる。発売から半年間の売り上げは、以前の3倍近いという。
wena3 の美しい戦略
ではここからは、wena3 のヒットの理由を戦略の観点から掘り下げていきます。
wena3 には美しい戦略があり、具体的には次の2つです。
✓ wena3 の戦略
- 戦わない戦略
- 共存戦略
では順番にご説明しますね。
戦わない戦略
wena3 はスマートウォッチというよりも正確には 「スマートバンド」 です。システム的な機能やディスプレイはスマートウォッチですが、外見的な見え方や使われ方は腕時計のバンドです。
戦略の観点での意味合いは、スマートウォッチとして戦うのではなく 「スマートバンドとして戦う場所を変えたこと」 にあります。
スマートウォッチには他社製品が多くあり、従来の時計メーカーからだけではなくアップルの Apple Watch など異業種メーカーも参入しています。それだけ競争環境が厳しい市場でレッドオーシャンです。
wena3 は正面から他のスマートウォッチと争うのではなく、スマートバンドとして生き残る道を選びました。スマートバンドという戦場に移り、そこには競争相手がいなくブルーオーシャンです。
共存戦略
腕時計は、バンド部分だけでは時計として成立しません。
本体である時計の文字盤とバンドがセットになって初めて腕時計として機能します (そもそも wena3 がバンドだけで良いのであればそれはつまりスマートバンドではなくスマートウォッチですよね) 。
wena3 が 「スマートバンド」 として生き残るためには文字盤が必要です。wena3 がうまいと思うのは、文字盤をソニー製以外でも使えるようにしていることです。他社の時計にも wena3 のバンドを取り付けることができます。
やっていることは共存戦略です。先ほど見た 「スマートバンドへの戦場の変更」 からつなげると、wena3 にはスマートウォッチとしては 「戦わない戦略」 があり、スマートバンドとして生き残るために 「 (他社製も含めた) 時計の文字盤との共存共栄の戦略」 をとっています。
戦略とは戦うことが絶対ではありません。戦略という文字は 「戦いを略す」 と書きます。wena3 の戦略がまさに当てはまります。
スマートウォッチとは直接戦わず、すでに人が持っている腕時計にバンドとして使ってもらえ、アナログ時計を wena3 によってスマートウォッチ化するアプローチをとっています。ここに wena3 の 「戦わずして勝つ」 という美しい戦略があります。
まとめ
今回はソニーの wena3 を取り上げました。
最後にまとめです。
ソニーのスマートウォッチ 「wena3」
- 腕時計のバンド部分 (手首の内側) にスマートウォッチ機能とディスプレイが埋め込まれている
- 文字盤部分 (手首の外側) には、ソニー純正だけではなく他社の時計も取り付けられる
- 発売半年で以前の wena シリーズに比べて3倍近い売上
wena3 の戦略
- 正面から他のスマートウォッチと戦うのではなく 「スマートバンド」 として戦う場所を移し生き残る道を選んだ [戦わない戦略]
- 文字盤をソニー製以外の他社のものでも使えるようにしている。アナログ時計であっても wena3 によってスマートウォッチ化するアプローチ [共存戦略]
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