投稿日 2021/09/28

ゴミを出さないスーパー 「斗々屋」 に見る、令和時代の消費と飲食スタイル


今回は、興味深いと思ったスーパーを取り上げます。

✓ この記事でわかること
  • ゴミを出さないスーパー 「斗々屋」 
  • スーパーと飲食店で食材を廃棄させない仕組み
  • 思ったこと2つ
  • ① 買いものスタイルの揺れ戻し
  • ② 「便利な価値」 よりも 「意味のある価値」 

斗々屋は、令和時代の消費者の価値観に応えるスーパーです。「意味のある価値」 という観点から掘り下げています。

よかったらぜひ最後まで読んでみてください。

ゴミを出さないスーパー


今回ご紹介したいのは、ゴミを出さずに 「地球1個分の暮らし」 の実現を目指している斗々屋です。「ゼロウェイストスーパー」 というコンセプトを掲げています (公式サイトはこちら) 。


斗々屋では食品や日用品を売っていて、商品は個包装せず、量り売りが基本です。お客さんにはなるべく袋や容器を持参してもらい、容器に商品を入れて、専用の量りで計量し会計をします。



スーパーとレストランの一体経営


斗々屋の直営店は東京の国分寺ですが、新たに京都に2021年7月にオープンしました (京都本店の紹介記事はこちら) 。

斗々屋のスーパー (出典: サステイナブル・ブランド・ジャパン

京都店では午後6時以降はレストランを営業しています。

レストランでは食品ロスを避けるために、昼間のスーパーで売れ残った食品を食材として活用した料理を提供します。日によって食材が変わるため、固定したメニューはないとのことです。


レストランで余った食材は密封の瓶詰めにして保存食として売っています。ゴミを出さない仕組みがてきています。


考えさせられたこと


ここからは斗々屋について思ったことです。

2つあります。

✓ 考えさせられたこと
  • 買いものスタイルの揺れ戻し
  • 便利よりも意味のある価値

では順番にご説明しますね。

買いものスタイルの揺れ戻し


あらためて考えると、買いたいものを必要な分のみを取り、持参した袋や容器に入れてという買いものスタイルは、スーパーやコンビニが普及する前の時代では一般的なことでした。近所の八百屋や魚屋に行く買いものは昭和の高度経済成長前ではごくありふれた日常たったわけです。

このように時間軸を長く取った時に、斗々屋での量り売りはこうした買いものスタイルへの大きな揺れ戻しと捉えることができます。

ただし昭和と全く同じやり方に戻るのではなく、新しい技術や仕組みを取り入れて令和の時代に合わせたアップデートしています。揺れ戻しではあるものの、新たに進化しているのがおもしろいです。

便利よりも意味のある価値


2つ目に思ったことです。

量り売りは最新のセンサーが使われるなどの買いやすいような工夫はされています。とはいえ、スーパーやコンビニに比べれば、斗々屋での買いものは効率や利便性はスーパー・コンビニよりも劣ります。すでに容器に分けられていて、レジでさっと買うほうが手間は少なく早いです。

しかしこうした便利さよりも多少の不便さがあったとしても、ゼロウェイストというゴミを出さない買いものに価値を見出しているのが斗々屋です。ここに共感するからお客は斗々屋を選ぶわけです。

また、夕方6時以降の飲食店も同様です。

売れ残った食材でメニューが作られるので行ってみないとメニューは何かが分からない不便さがあります。斗々屋のレストランをうがった見方をすれば、売れ残りが使われた料理が提供されることには、新鮮ではない素材を使っていると感じたり、安っぽいイメージ、そもそもとして抵抗感を抱くかもしれません。

しかし見方を変えれば、売れ残ったり使い切れない食材を廃棄せず、環境負荷を少しでも和らげていると捉えれば、意義や意味合いを持たせることができます。利便性よりも意味性という価値があるわけです。

このように、価値を大きく 「役に立つ価値」 と 「意味のある価値」 に分けた時に、斗々屋は後者の意味性により重きを置いています。

斗々屋は令和時代の新しい消費や飲食スタイル、そして価値観を提供する小売・飲食店として興味深いです。


まとめ


今回は 「ゼロウェイストスーパー」 を掲げ、ゴミを出さないお店を実現する斗々屋を取り上げました。

最後にまとめです。

ゴミを出さないスーパー 「斗々屋」 
  • ゼロウェイストスーパーというコンセプトで 「地球1個分の暮らし」 の実現を目指している
  • 商品は個包装せず量り売りが基本。客は持参した容器に入れて持ち帰る
  • 京都店では18時以降は飲食店になり、料理にはスーパーで売れ残った食品を食材に使う。使いきれなかった食材は瓶詰めの保存食として販売

買いものスタイルの揺れ戻し
  • 斗々屋での量り売りは、昭和のスーパーやコンビニが普及する前の買いものスタイルへの大きな揺れ戻し
  • ただし当時と同じやり方ではく、新しい技術や仕組みを取り入れて令和の時代に合わせアップデートし進化している

便利よりも意味のある価値
  • 量り売りのスーパーや売れ残りを食材にするレストランは、売る側・買う側の両方に不便さや非効率がある
  • しかし見方を変えれば、斗々屋では環境負荷を和らげる意義や意味合いを持てる
  • 「役に立つ価値」 と 「意味のある価値」 の2つでは、斗々屋は後者を重視。令和時代の新しい消費と飲食スタイルを提供している


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。