投稿日 2021/09/22

マクドナルドのブランド再定義に見る、ブランドの本質とつくり方


今回はマーケティングです。

✓ この記事でわかること
  • 日本マクドナルドの50周年
  • マクドナルド CMO の言葉に見るブランドの本質
  • ブランドのつくり方
  • マクドナルドの打ち手

この記事を読んでいただきたいと思うのは、マーケターの方です。特に商品やサービスのブランディングを担当されている方です。

マクドナルドの事例を取り上げてマーケティングでのブランドを解説しているので、自社のマーケティングのヒントになればうれしいです。

また、マクドナルドのマーケティングに興味がある方にも参考になればと思います。

マクドナルドのブランド再定義



今年2021年は日本にマクドナルドが登場してちょうど50年です。

日経 MJ の特集記事で、マクドナルドの50年と未来について取り上げられていました。

以下は記事からの引用です。

近所にあるから、安いから、誰もが知っているから……。これまでのファストフードは価格や立地で差異化をしようとしてきた。マクドナルドも 「デフレの勝ち組」 と称され、かつてはハンバーガーの値下げ戦略などで安売りのブランドイメージも強かった。

ズナイデン CMO は 「マクドナルドを自分にとって必要と思われるブランドにしたい」 と語る。マクドナルドが取り組むマーケティング戦略の背景には、これまでのイメージ脱却への意欲も見える。

日本マクドナルドは自らのブランド価値を再定義することで、家族や友人らと気軽に集まることができる憩いの場としての価値を訴求しようとしている。「商品だけの結びつきだと、マクドナルドで食べるものも代替が効くものになる。ブランドと顧客の気持ちが結びつく関係にしなければならない」 (ズナイデン CMO) 。

ブランドとは



あらためてブランドについて考えてみます。

引用内にあったマクドナルド CMO の言葉は、ブランドの観点から興味深いです。「商品だけの結びつきだと、マクドナルドで食べるものも代替が効くものになる。ブランドと顧客の気持ちが結びつく関係にしなければならない」 です。

では、そもそもブランドとは何でしょうか?

マーケティングの文脈でのブランドとは高級商品だけではなく、洗剤やシャンプーなどの日用品にもブランドはあります。

これは私の一言のブランドの定義ですが、ブランドとは 「顧客からの好ましい感情が伴った商品やサービス」 です。好ましい感情とは、好き・共感・満足・誇り・憧れ・応援する気持ちです。これらの感情が深いほど強いブランドです。

ブランドを数式で表せば、「商品 + 感情 = ブランド」 です。


ブランドのつくり方


マーケティングの文脈でブランドとは、顧客の頭の中にある価値イメージです。

この意味で、売り手や提供者側はブランドを直接管理することはできません。あくまで間接的に相手に働きかけをして顧客に商品・サービスへの感情移入をしてもらい、頭の中にブランドが結果としてできるようにします。

商品やサービスがブランドになっていくプロセスを整理すると、次のようになります。

✓ ブランドのつくられ方
  • 商品やサービスのことを知ったり使う (ユーザー体験) 
  • 体験から好ましい感情が生まれる
  • 感情移入から商品・サービスへの価値イメージができる (ブランド化) 

ブランドができるプロセスは 「体験 → 感情 → 価値イメージ → ブランド」 です。ブランドになると選ばれ方が 「~ でいい」 消去法的なものから、「~ がいい」 という能動的になるのです


CMO の言葉の意味


ここで話をマクドナルドに戻します。

先ほど引用した中にあった CMO の言葉は 「商品の結びつきではなく、気持ちの結びつきを」 でした。ここで言う 「気持ちの結びつき」 とは、マクドナルドのハンバーガーやお店でのマクドナルド体験から生じる好ましい感情のことです。具体的には楽しい・おいしい・満足・好きなどです。

体験からのこうした気持ちが良い記憶として1つ1つ蓄積し、価値イメージが形成され、マクドナルドはブランドになります。


 「ちょいマック」 からのブランディング


ブランド形成のためのマクドナルドの打ち手の1つが 「ちょいマック」 です。

2020年当時の 「ちょいマック」 (出典: 週刊アスキー

実は以前は 「おてごろマック」 という名前でした。ここには 「値段がお手頃」 という意味が入っていました。

一方の 「ちょいマック」 は価格訴求もさることながら、気軽にお店に来てほしい、楽しんでほしいという思いが込められています。つまり単にメニューへの結びつけだけではなく、マクドナルドのお客さんに体験から感情で結びついてほしいという狙いがあるのが 「ちょいマック」 なのです。

体験と感情移入によって、消費者の頭の中にマクドナルドは 「家族や友人らと気軽に集まることができる憩いの場としての価値イメージ」 ができあがり、ブランドになるのです。


まとめ


今回はマクドナルドから、マーケティングのブランドについて見てきました。

最後にまとめです。

ブランドの本質
  • ブランドとは 「顧客からの好ましい感情が伴った商品やサービス」 
  • 好ましい感情とは、好き・共感・満足・誇り・憧れ・応援。これらの感情が深いほど強いブランド
  • 数式で表せば、「商品 + 感情 = ブランド」 

ブランドのつくられ方
  • 商品やサービスのことを知ったり使う (ユーザー体験) 
  • 体験から好ましい感情が生まれる
  • 感情移入から商品・サービスへの価値イメージができる (ブランド化) 
  • ブランドになると選ばれ方が 「~ でいい」 から 「~ がいい」 という能動的なものになる

マクドナルドのブランド再定義
  • 商品の結びつきではなく気持ちの結びつきを実現する
  • 気持ちの結びつきとは、マクドナルドのハンバーガーやお店での体験から好ましい感情 (楽しい・おいしい・満足・好き) が伴うこと
  • 体験と感情が良い記憶として1つ1つ蓄積し価値イメージが形成され、マクドナルドはブランドになる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。