投稿日 2021/09/18

歴史 「項羽と劉邦」 に学ぶ、企業や組織が衰退する要因5つ


今回は、歴史から学べることです。

✓ 企業や組織が衰退する要因
  • 内向きの権力闘争
  • 外部への無関心
  • 情報伝達の機能不全
  • 恣意的な意思決定
  • 驕りと油断

この記事では中国史 「項羽と劉邦」 を取り上げ、現代のビジネスへの示唆を掘り下げています。

漫画 「項羽と劉邦」 


横山光輝の漫画 項羽と劉邦 を読みました。


漫画のストーリーは秦が中国を統一し、政が始皇帝と名乗るところから始まります。「項羽と劉邦」 の漫画では、次の王朝である漢王国までの群雄割拠の争いの時代が描かれます。


国が滅ぶ要因と現代ビジネスへの示唆


読みながら思ったのは、国が滅びたり戦いに勝てなくなる要因には共通点があることです。具体的には次の5つです。

✓ 滅亡につながる要因
  • 内向きの権力闘争
  • 外部 (国や民, 敵国の外部環境) への無関心
  • 情報伝達の機能不全
  • 恣意的な意思決定
  • 驕りと油断

これらの5つは、現代の私たちにも学びがあります。国を企業や組織に置き換えると、企業や組織が衰退する要因と同じなのです。

ではそれぞれについて、現代のビジネスへの示唆を併せて見ていきましょう。

内向きの権力闘争


国の状態がおかしくなる要因の1つは、国王が自分の権力や富の豊かさを誇示するようになることです。

例えば過酷なほどの重い税を課して取り立てたり、豪華な宮殿を建てる、生前から自分の墓をつくります。多くの国民に強制労働をさせ、国民にはメリットはなく自分のためだけにやっています。

他には、王の周囲にいる権力のある人物たちが自分の出世や保身ばかりに走ります。

ではこうした 「内向きの権力闘争」 からは、現代のビジネスに何が学べるでしょうか?

現代ビジネスへの示唆

国王が自分の権力や富の豊かさを誇示することを現代に当てはめれば、社長室がやたらと豪華で高価な骨董品や絵画、贅沢な設備をそろえることです。自己満足や優越感に浸るだけではなく、社長室に来る社員に自分の権力を見せつけるためです。

また、幹部社員の経費な私的な流用も当てはまります。他には、社内政治や派閥争いばかりに明け暮れるのも現代の内向きな権力闘争です。

外部への無関心


2つ目の滅亡の要因を見ていきましょう。「外部への無関心」 です。

自国内の状況、国民の声に目を向けず、やっていることは城の奥の宮殿内で女性や酒で遊んでばかりいると、国が機能しなくなるのは当然です。

外部に無関心になるので、自国だけではなく隣国や敵国の状況も把握できていません。1つ目にもつながりますが、内向きな権力争いにしか頭が働いていないので、外部に関心を示さなくなるのです。

現代ビジネスへの示唆

現在のビジネスに当てはめれば、現場やマーケットに目が向いていない状態です。

競合他社や競合商品・サービス、そして何よりもお客のほうに意識が向いていません。顧客不在な内向き姿勢になると、マーケットと自社が乖離していき、事業や組織はおかしくなります。

情報伝達の機能不全


3つ目の要因は、王や将軍などのトップへの情報伝達が機能しないことです。

外部の情報がかろうじて王に入ったとしても、自分たちにとって都合の良い情報だけになり、悪い情報はもみ消されるか、もしくは黒の情報が白に変えられて伝わります。例えば敵国との情報は、戦況の良いものしか上がらなくなります。

現代ビジネスへの示唆

情報伝達の機能不全を現代に当てはめれば、現場や顧客・競合の情報が社内で階層が上がることにフィルタリングされ、社長や経営陣に届く頃には聞こえの良い情報だけになってしまう状態です。

トップたちは顧客のことが理解できず、現場やマーケット感覚を失います。現状把握すらできず、これにより次の 「意思決定の誤り」 につながります。

恣意的な意思決定


秦では、始皇帝が法による法治国家を実現させました。

しかし次第に法が恣意的に運用されるようになります。例えば、気に食わない武将を排除させるために、次のようなことが起こります。

戦いで敵国に苦戦をしていると、軍を率いてるその武将のことを 「王の命令を聞かず、真剣に戦っていないのは怠慢だ」 として死罪にするのです。最前線では文字通り必死で戦っているにもかかわらずです。

現場からの正確で迅速な情報がなく、権力者への反対の意見や諌めの言葉がないために、一部の人たちが評価基準を自分の都合の良いように使い意思決定プロセスが機能しなくなります。

現代ビジネスへの示唆

恣意的な意思決定を現代に当てはめると、人事評価基準の乱用です。例えば、気に入らない人物や生意気な部下を低評価にして左遷させることです。

他には、事業の意思決定を KPI でマネジメントしているものの、実は KPI が絵に描いた餅で機能せず社内で声が大きい人の意見だけが通る状態です。その人は自分の部署のことだけや、さらには自分の出世と保身のためにやっていたりします。

驕りと油断


自分たちの驕りの気持ちや慢心が強くなると、敵国や将軍、相手の軍の力を甘く見てしまいます。

王や将軍が、全能感からまわりの反対意見や忠告に耳を貸さず、全てを独断で決めて暴走してしまいます。

現代ビジネスへの示唆

ビジネスに当てはめると、リーダーが周囲のメンバーの意見を全く聞かず、全てを独断で決める状態です。リーダーの直感や判断が正しいうちは良いですが、リーダーの感覚が顧客ニーズなどのマーケット感覚からずれると、組織全体で誤ってしまいます。


まとめ


今回は歴史に学べることで、「項羽と劉邦」 から企業や組織が衰退する要因を見てきました。

最後にまとめです。

国が滅ぶ要因と現代ビジネスへの示唆
  • 内向きの権力闘争。権力や地位の誇示、出世や保身が第一優先になる
  • 外部 (国や民, 敵国の外部環境) への無関心。顧客や競合などの外部環境に目が向かずマーケット不在の内向き姿勢
  • 情報伝達の機能不全。良い情報だけが上層部へ伝わる。悪い情報はもみ消される
  • 恣意的な意思決定。法やルールの解釈を勝手につくり乱用する
  • 驕りと油断。競合他社を甘く見てリーダーが周囲の反対意見や忠告を聞かず独断で判断。リーダーが誤ると組織全体で間違う


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。