投稿日 2021/11/18

ニュースサービス Vingow の失敗に学ぶ、自分自身をペルソナにする功罪


今回のテーマは、商品開発とマーケティングです。

✓ この記事でわかること
  • ニュースサービス Vingow
  • プロダクトアウトの極致で失敗
  • Vingow の失敗に学べること
  • 自分自身をペルソナにする功罪
  • 顧客理解の2つのアプローチ
  • マーケターが最終的に行き着く境地

Marketing Native のインタビュー記事を読んで、商品開発やマーケティングに学べることで、具体的にはペルソナ設定や顧客理解の方法について解説しています。

よかったらぜひ最後まで読んでみてください。

Vingow の失敗


Marketing Native の記事を読みました。

災害に、選挙に大活躍! JX 通信社代表・米重克洋が語る 「2つの PMF を達成した考え方と国際総合通信社への道」 | Marketing Native

インタビューの中で、ニュースサービスの Vingow (ビンゴー) について触れられていました。

以下は記事からの該当箇所の引用です。

―― ピンチもあったのですか。

そうですね。2011 ~ 12年頃、テクノロジーで報道の編集に関する機械化やコストカットを実現したいと考え、その延長線上で一般向けに Vingow (ビンゴー) という BtoC のニュースサービスをリリースしました。タグを選択することで自分好みの情報を集められるアプリです。

ところが今考えると、ニュースマニアの私自身をペルソナにした、プロダクトアウトの極致のようなサービスになっていました。自分が欲しい情報を言語化し、タグとしてフォローしてまでニュースを能動的に集めたがる人はそれほど多くなく、リリース当初から苦戦しました。

一方、同時期にリリースされた Gunosy (グノシー) さんや SmartNews (スマートニュース) さんは順調に成長し、我々は競争に負けてしまったのです。それが2014年から15年のことでした。当時、会社としても十数名の従業員がいましたので、非常に厳しかった記憶があります。

失敗に学べること


では商品開発やマーケティングの観点から、Vingow の失敗に学べることを見ていきましょう。

一言で言えば、「自分自身をペルソナにすることの功罪」 です。

ペルソナとはマーケティングのターゲット顧客を具体化する方法です。顧客の象徴的なモデルとして、1人の具体的な人物像を解像度高く描きます。

ペルソナの要素は例えば、名前、年齢や職業・学歴、家族構成、趣味、考え方や価値観、悩み、ライフスタイルです。ちなみにペルソナの語源はラテン語で 「仮面」 を意味する 「persona」 です。

話を Vingow に戻すと、Marketing Native の記事に 「ニュースマニアの私自身をペルソナにした」 とありました。ここに学びがあります。


自分自身をペルソナにする功罪


自分をペルソナにすることのメリットは、顧客のニーズがイメージできることです。自分の欲しいもの、便利だと思ったり使っていて楽しいと思うものだからです。自分のことなので求められるニーズが理解できています。

一方で注意点があります。そもそも自分と同じニーズを持つ人が実在するのか、いたとしてビジネスとして成立する人数規模があるのかです。ここを見誤るとペルソナのデメリットになってしまいます。

Vingow の失敗はまさにここでした。ペルソナにした米重さんのような情報リテラシーが高い人、自分でおっしゃっていたようなニュースマニアは実際には世の中にいる数は多くなく、普通の人には Vingow は敷居の高いニュースサービスになってしまったわけです。


顧客理解の2つのアプローチ


今回の学びをもう少し掘り下げてみます。

自分自身をペルソナにするとは 「お客 = 自分」 とみなすということです。この意味で顧客理解とは自分の理解です。

顧客理解の方法にはもう1つ別のアプローチがあります。それが 「お客 ≠ 自分」 という、顧客ノットイコール自分とする方法です。

このやり方のベースにある考え方は、「どこまでいっても本質的には自分とお客は他人である」 です。お客の見えている世界と自分の見ている世界は違うという現実を受け入れ、自分は赤の他人であるお客にはなれないという前向きな諦めがあります。

諦めに 「前向き」 とつけた意味は、そこで止めるのではなく現実を直視した上で、それでもなお自分ではないお客の立場になろうとする姿勢を持つことです。

こうした 「自分は本質的にはお客になれない」 という葛藤を乗り越えての顧客理解が、マーケターが最終的に行き着く境地なのではないか、そんなことを Vingow から考えさせられました。


まとめ


今回は JX 通信社のニュースアプリ Vingow から、商品開発やマーケティングに学べることでした。

最後にまとめです。

Vingow の失敗
  • 自分が欲しい情報を言語化しタグとしてフォローしてまでニュースを能動的に集めたがる人は、それほど多くなくリリース当初から苦戦した
  • ニュースマニアをペルソナにしたプロダクトアウトの極致だった

失敗に学べること
  • Vingow から学べるのは自分自身をペルソナにすることの功罪
  • 自分をペルソナにするメリットは、顧客のニーズ (自分が欲しいと思うもの) がイメージできる
  • 注意点は自分と同じニーズの人が実在するのか、ビジネスとして成立する人数規模を見誤ること
  • Vingow はペルソナにした情報リテラシーが高いニュースマニアは多くなく、普通の人には敷居の高いニュースサービスになってしまった

顧客理解の2つのアプローチ
  • 自分自身をペルソナにするとは 「お客 = 自分」 とする方法
  • もう1つは 「お客 ≠ 自分」 。自分は他人であるお客にはなれないという現実を受け入れ、それでもなお自分ではないお客の立場になろうとする姿勢を持つ
  • この葛藤を乗り越えての顧客理解が、マーケターが最終的に行き着く境地


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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最も力を入れているのはニュースレターです。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。