投稿日 2021/11/08

最上級スイートルームを 「個室レストラン」 にするディナープランから、マーケティングに学べること


今回はマーケティングで、「体験からのブランド化」 というテーマで書いています。

✓ この記事でわかること
  • 2人で1泊48万円の最上級スイートルームでのフレンチディナー
  • 狙いをマーケティングの観点から掘り下げ
  • マーケティングに学べること

 「ミニサイズ」 での体験機会と価値の提供という話を、あるホテルの取り組みを例にご紹介します。

マーケティングのものの見方や考え方、施策へのヒントや参考になればと思います。ぜひ最後まで読んでみてください。

最上級スイートルームでのディナー


阪急阪神ホテルズが、運営する 「ホテル阪急インターナショナル」 と 「第一ホテル東京」 の最上級スイートルームを使って、フレンチディナーを提供するプランを始めました (公式サイトはこちら) 。

ホテル阪急インターナショナルでは34階にプレジデンシャルスイートルームがあり、宿泊価格の定価は2人1泊でおよそ48万円です。

ホテル阪急インターナショナルのプレジデンシャルスイート (出典: まいどなニュース

第一ホテル東京のプルミエールスイート (出典: まいどなニュース

最上級のスイートルームを 「個室レストラン」 として利用でき、1日1組限定、2人で7万円のディナープランです。利用時間は最大6時間です。



ディナープランの狙い


ここからは最上級スイートルームでのディナープランの狙いを、マーケティングの観点から掘り下げていきましょう。

一言で言えば、狙いは 「資産の有効活用による価値提供」 です。今回の例では資産とは最上級のスイートルーム、他にはサービスやディナーです。

スイートルームは通常は宿泊に使われますが、フレンチディナーを提供する 「個室レストラン」 として有効活用をしています。

ホテル阪急インターナショナルの最上級スイートルームの宿泊は2人で48万円で、利用する機会は普通はないですよね。しかし、2人で7万円ではあるものの宿泊ではなく食事であれば、スイートルームでディナーを楽しみたい人に利用してもらえる可能性は広がります。ホテルでのサービスを体験してもらうハードルを下げ、利用機会を提供しています。


体験からのブランド化


スイートルームでのディナー体験が忘れられない思い出になれば、ホテルへの良い印象と記憶が残ります。

こうした体験とホテルへの価値イメージができあがると、次にまた何か機会があれば選ばれやすくなります。ホテルのレストランでの食事や宿泊で 「ホテル阪急インターナショナルがいい」 、「第一ホテル東京がいい」 と、「~ でいい」 という消去法的ではなく、「~ がいい」 と能動的な選ばれ方になるのです。

マーケティングの視点で言えば、ホテルが他とは独自化されたブランドになるということです。


学べること


では最後に最上級スイートルームでのディナープランから、マーケティングに学べることを整理してみましょう。

学びは、「利用機会を提供し、商品やサービスの価値を体験してもらおう」 です。

今回の例で言えば最上級スイートルームという 「商品」 を個室レストランに変え、スイートルームサービスやディナープランを体験してもらいます。利用機会からスイートルームの雰囲気、ホスピタリティのあるサービス、おいしいディナーから幸せになれる時間という価値を提供したわけです。

この話を一般化すれば、自社の商品・サービスの良さを知ってもらうために、低価格や時にはあえて無料にして実際に体験してもらう機会をつくる打ち手です。

化粧品や健康サプリでは試供品 (サンプル品) の配布は一般的ですが、同じようなことを小サイズや限定メニューに絞って利用や体験のハードルを下げられないかを考えてみると、自社のマーケティングのヒントになります。


まとめ


今回は阪急阪神ホテルズの取り組みである、最上級スイートルームでのディナープランからマーケティングに学べることを掘り下げました。

最後にまとめです。

最上級スイートルームでのディナー
  • 阪急阪神ホテルズが 「ホテル阪急インターナショナル」 と 「第一ホテル東京の最上級スイートルーム」 で、フレンチディナーを提供するプランを開始
  • 最上級のスイートルームを 「個室レストラン」 として利用でき、1日1組限定、2人で7万円のディナープラン

ディナープランの狙い
  • 資産である最上級のスイートルームを有効活用し、ディナーからの幸せな時間という価値を提供する
  • スイートルームでのディナー体験からホテルへの良い印象と記憶が残り (他とは独自化されたブランド化) 、次の機会に選ばれることを狙っている

学べること
  • 利用機会を提供し、商品やサービスの価値を体験してもらうと良い
  • 自社の商品・サービスの良さを知ってもらうために、低価格や時にはあえて無料にして実際に体験してもらう機会をつくってみよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。