投稿日 2021/11/11

売上を1000倍にした 「スライスようかん」 に学ぶ、アイデアのつくり方と商品開発の方法

出典: PR TIMES

今回のテーマは商品開発です。

✓ この記事でわかること
  • 売上を1000倍にした亀屋良長の 「スライスようかん」 とは?
  • 原動力は和菓子への危機感
  • 開発アイデアのヒントは朝食のあるシーン
  • 商品開発に学べること

この記事を読んでいただきたいのは商品開発をされていて、商品やサービスの新しいアイデアを考える役割にある方です。

和菓子のヒット商品 「スライスようかん」 の開発ストーリーから、アイデアのつくり方と商品開発の方法を解説していきます。

スライスようかん


今回ご紹介したいのは、亀屋良長 (かめやよしなが) の 「スライスようかん」 です (公式サイトはこちら) 。亀屋良長は創業が1803年で、京都にある老舗の和菓子屋です。

出典: PR TIMES

商品パッケージの写真からもイメージできるように、食パントーストにスライス状になったスライスようかんを載せて食べられ、これが人気につながっています。

出典: PR TIMES


和菓子への危機感


スライスようかんの開発の背景は、和菓子業界とようかんへの現状と危機感からでした (参考: PR TIMES) 。

和菓子業界は洋菓子人気に押され年々売上が下がり、特に 10 ~ 40 代の若い人たちの和菓子離れが起こっていました。

ようかんは20年前の約半分の購入額になっていて、亀屋良長で販売していた昔ながらのようかんは、毎年売上は落ちていました。

一時期は亀屋良長では、ようかんの販売が年間に50本程度にまでなったそうです。年間に50本というと、1週間に1本売れる程度です。


開発アイデアのヒント


スライスようかんの開発のきっかけは、毎日の家族での朝食シーンからでした。

亀屋良長の女将である吉村由依子さんの長男が食パンのトーストにスライスチーズを食べていて、次男はトーストにあんこをバターのように塗って食べていました。長男はスライスチーズを載せてすぐに食べられるのに、一方の次男はあんこをトーストに塗るのはやりづらそうでした。

この様子を見た吉村さんは、「ようかんをスライスチーズみたいにできないか」 と思いました。

やってみたら意外にうまくできそうで、本格的に商品開発に取り組み、試行錯誤の末に生まれたのが 「スライスようかん」 です。

売上は年々伸び続け、1年目は160倍、2年目550倍、3年目には1000倍になったとのことです。直近では、年間で15万袋を売り上げるヒット商品となりました (参考: PR TIMES) 。



新しい市場を創ったスライスようかん


普通のようかんに比べて、スライスようかんは 「食べる人」 と 「食べられるシーン」 が異なるとのことです。スライスようかんによって、ようかんを食べる男性のお客が増え、食べるシーンもおやつから日常での朝食に変わったそうです。

これをマーケティングの観点で言えば、スライスようかんは新しい顧客を獲得し、新しい利用シーンを生み出しました。つまり市場創造を実現したのです。


たった1人のための商品開発


ここからは、スライスようかんの商品開発から何が学べることを掘り下げていきます。

一言で表現をすると、n1 からの商品開発です。

n1 とはサンプルサイズが 1 のことで、「n1 からの商品開発」 の意味合いは、目の前のたった1人のために商品開発をすることです。スライスようかんの場合は、朝食であんこをトーストに塗りにくそうにしていた次男です。

次男が食べやすいようにできないか考え、その場に一緒にいた長男が食べていたスライスチーズから着想を得ました。吉村さんは 「スライスチーズを考えた人は天才」 と思い、ここから 「ようかんをスライスチーズのようにする」 というアイデアが生まれたのです。

 「ようかんをもっと気軽に楽しみたい」 「朝食で甘いものを食べたい」 というニーズは世の中にあり、スライスようかんは人気商品になりました。


学べること


では最後に、スライスようかんから商品開発に学べることを整理してみましょう。

スライスようかんの開発ヒントになったのは、次の2つからでした。

✓ スライスようかんの着想
  • 次男がトースターにあんこを塗りにくそうにしていた
  • スライスチーズを長男が食べていた

この2つをビジネスへの一般化をすると、以下となります。

✓ 商品開発に学べること
  • 「この人のため」 という1人のための商品開発 (n1 分析からの商品開発) 
  • 異なるカテゴリーや他の業界の成功事例をヒントにする (スライスようかんの場合は、チーズ業界では当たり前のスライスという形状を和菓子のようかんに取り入れた) 


まとめ


今回は和菓子のヒット商品である亀屋良長の 「スライスようかん」 を取り上げ、商品開発に学べることを見てきました。

最後にまとめです。

売上を1000倍にした亀屋良長の 「スライスようかん」 
  • 開発のきっかけは、毎日の家族での朝食シーン
  • 長男が食パントーストにスライスチーズを載せて食べていて、次男があんこをトーストに塗りにくそうなのを見て 「ようかんをスライスチーズみたいにできないか」 と思ったことから
  • 本格的に商品開発に取り組み、試行錯誤の末に生まれた

商品開発に学べること
  • 「この人のため」 という1人のための 「n1 分析からの商品開発」 
  • 異なるカテゴリーや他の業界の成功事例をヒントにする
  • スライスようかんの場合は、チーズ業界では当たり前のスライスという形状を和菓子のようかんに取り入れた


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。