投稿日 2021/11/21

東京23区のマンホールの老朽化をゲーム化で解決。ゲーミフィケーションの本質と活用方法


今回のテーマは、ゲーミフィケーションと問題解決です。

✓ この記事でわかること
  • 東京23区のマンホールをコンプリートするイベント 「マンホール聖戦」 とは?
  • 社会問題をゲーム化で解決する方法
  • ゲームに熱中するサイクル
  • 学べること

おもしろいと思ったイベントを取り上げ、ゲーム化による問題解決という観点から掘り下げていきます。

よかったらぜひ最後まで読んでみてください。

イベント 「マンホール聖戦」


ご紹介したいのは、社会インフラの課題をイベントにして問題解決をする取り組みです。イベント名は 「マンホール聖戦」 です (公式サイトはこちら) 。

知ったのは TechCrunch の記事からでした。

インフラ危機をゲームで解決!? マンホール蓋をスマホで撮影・投稿しポイントを稼ぐ#マンホール聖戦 ~ 東京23区コンプ祭り|TechCrunch


以下は TechCrunch の記事からの引用です。

鉄とコンクリートの守り人は、国内のインフラ老朽化の課題に対し、日本にあるすべてのマンホール蓋を守り人 (プレイヤー) が力をあわせて撮影・投稿しポイントや特典を得ながら、インフラの安全を確保することを目的とした 「社会貢献型位置情報ゲーム」 。

マンホールコンプというゲーム性を採用し、写真の投稿やレビューによって日本全国のマンホール地図を力を合わせて完成させることを目指す。
出典: TechCrunch

イベントでのマンホール写真の投稿ルールは、次のようになっています。

✓ 写真投稿ルール
  • 投稿する写真は 「周囲の状況写真」 と 「マンホール本体写真」 の2つをセットにする
  • 状況写真は、マンホールとまわりがわかるような角度をつけた写真
  • 撮影前に 「この場所は安全に徒歩でアクセスできますか?」 という質問を表示されるので回答する
  • 「はい」 の場合は周囲の確認写真を投稿し、マンホール本体写真の撮影に進む
  • 「いいえ」 の場合は周囲の確認写真の投稿だけになるが、報酬は得られる

なお、以前に渋谷区を限定にして開催されていて、その時の紹介動画がこちらです。



社会問題をゲーム化で解決


マンホール聖戦の取り組みは興味深いです。

マンホールのことは普段の日常生活では意識することはないですよね。歩いている時にマンホールは足元にあるはずですが、目に入ることがない存在です。もし、「今日、近所のマンホールをスマホで撮影し、写真を投稿してください」 と頼んでも誰もやらないでしょう。

しかし、ゲームの要素を取り入れてイベント化し、お祭りのような仕掛けにすれば参加者が集まり、わざわざ出かけてマンホールの写真を撮って送ってくれるのです。

人は、自分ごと化できる動機が得られると行動し、集団でやれば社会的なムーブメントにまでなるのです。


ゲームに熱中するサイクル


皆さんは、寝食を忘れるくらいゲームにハマったことはないでしょうか?

ゲームは熱中すると時間を忘れてしまいます。あらためてなぜゲームに熱中するかを考えてみると、次のようなサイクルが好循環で回り続けるからです。

✓ ゲームに熱中するサイクル
  • 興味
  • 行動
  • 達成
  • 褒美


ゲームサイクルの補足


4つそれぞれを補足すると、はじめにゲームそのものに興味を抱くところからです。「ちょっとやってみよう」 と気軽な気持ちからです。

次に実際にゲームをプレイすると言う 「行動」 がきます。ゲームの設計はうまくできていて、最初のプレイでは初めての人でもうまくできるような難易度になっています。

クリアすると達成したことが視覚的にも体験できます。達成すると、プレイヤーはポイントなどのご褒美がもらえます。

こうした達成感が気持ちよく、次もまたやりたい、またこの達成や充実感を得たいと思うわけです。1つ達成されると、次のプレイやステージ、ストーリーが用意されています。つまり、2周目のゲームサイクル 「興味 - 行動 - 達成 - 褒美」 に入るわけです。


学べること


では最後に、ご紹介した 「マンホール聖戦」 と 「ゲームにハマるサイクル」 から学べることを整理してみましょう。

例えば仕事では、おもしろみがない単純な作業に見えても、何か自分で工夫しゲーム化できないかを考えてみると良いです。具体的には制限時間を作ってみたり、今までよりももっと成果物の品質を高められないかとゲームで高得点を狙うイメージです。

他のゲーム化の応用は、同僚などの人を巻き込んだり何かを頼みたい時もゲームサイクルの 「興味」 や 「達成」 をどう作れば相手は動いてくれるかを工夫してみると良いです。

これは、お客や生活者へのアプローチでも 「ゲーム化によって楽しみやワクワクをつくり、訴求できないか」 を考えると、企画アイデアのヒントになります。


まとめ


今回は、マンホール聖戦というイベントやゲーム化からの問題解決について見てきました。

最後にまとめです。

社会問題をゲーム化で解決
  • 「マンホール聖戦」 はマンホールコンプというゲーム性を採用し、写真の投稿やレビューにより社会インフラの問題解決を目指す
  • ゲームの要素を取り入れてイベント化し、お祭りのような仕掛けにすれば参加者が集まり、わざわざ出かけてマンホールの写真を撮って送ってくれる
  • 人は、自分ごと化できる動機が得られると行動し、集団でやれば社会的なムーブメントにまでなる

ゲームに熱中するサイクル
  • 興味 - 行動 - 達成 - 褒美
  • 1つ達成されると、次のプレイやステージ、ストーリーが用意されている。2周目のゲームサイクルに入り熱中していく

学べること
  • 単純な作業に見えても、何か自分で工夫しゲーム化をしてみる (例: 制限時間を作る)
  • 人を動かしたり頼みごとをする時に 「ゲーム化によって楽しみやワクワクをつくり、訴求できないか」 を考えてみよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。