投稿日 2021/11/03

カメラのお試しサブスクに学ぶ、購入前の見込み客の背中を Win-Win で押してあげる方法


今回はマーケティングです。

✓ この記事でわかること
  • 買う前のカメラのお試しレンタルサービス
  • マーケティングの観点からの掘り下げ
  • ポイントは実際の利用シーンへの組み込み
  • マーケティングに学べること

この記事を読んでいただきたいのは、マーケティングの仕事をされている方です。

特に想定しているのは、自分たちの商品・サービスは、他の類似商品よりも優れていることはわかっているものの、なかなかその良さがお客に伝わらずに悩んでいる状況にある方です。

積極的な利用機会の提供によって購入につなげる方法を、「カメラのお試しサブスク」 という具体的な事例から解説をしていきます。ぜひ最後まで読んでみてください。

カメラのお試しレンタル


ビックカメラが、カメラブと資本業務提携を発表しました (ニュースリリースはこちら) 。

カメラブは、カメラ機材のサブスクリプションサービス 「GooPass」 を展開しています。

提携からの具体的な取り組みの第一弾が 「テイクアウトレンタル」 です。新品のカメラを買う前に持ち帰ってお試しができるサービスです。まずは実験的な試みとして、2021年12月4日からビックカメラ渋谷東口店本館で始めます。

出典: カメラブ

テイクアウトレンタルを利用すれば、ビックカメラの店頭でカメラ機材を買うかどうかその場で決めずに、有料で新品在庫をレンタル品として持ち帰って試せます。レンタル料金だけで一定期間にカメラを使うことができ、気に入れば後から購入できます。


マーケティングでの意味合い


では、テイクアウトレンタルをマーケティングの観点で掘り下げてみましょう。

一言で言えば、購入の心理的ハードルを下げる打ち手です。買うかどうかは迷っている人にレンタルからカメラを使ってもらい、買う理由を持ってもらうことを狙います。買うことへの背中を押してあげるようなサービスです。

一般的に人には、お金を払って何かを買うことに大なり小なりで心理的な抵抗感があります。特にカメラのような値段が高く、買う前に色々と調べて比較検討をするものが当てはまります (こうした商材のことを専門用語で 「高関与商材」 と言います) 。

商品やサービスのことを知って興味を持ち、そこから買うと決めるまでには心の中で迷いが生まれます。

こうした心理的ハードルを下げるのがテイクアウトレンタルです。購入までの 「興味 → 比較検討 → 購入」 のプロセスにおいて、購入の前に 「利用」 を入れるわけです。


実際の利用シーンがポイント



テイクアウトレンタルの特徴は、その人の 「実際の利用シーン」 で買うかを考えたり迷っているカメラを使ってもらうことにあります。

確かにお店でもカメラを手に取ったり、その場で写真を試しに撮ることはできます。しかし店頭という非日常の空間では、本当に自分が撮影したい対象 (例: 自然風景, 動物, 建築物, 人物など) ではありません。店頭で少し試すぐらいでは、自分が求めるカメラなのかの判断は難しいです。

一方のテイクアウトレンタルでは、カメラを最低でも1ヶ月は自由に使えます。本当に買う価値のあるカメラかどうかが、自分の普段での利用シチュエーションから決められます。


学べること


では最後に、テイクアウトレンタルからマーケティングに学べることを整理してみましょう。

学びは、「商品・サービスの利用機会を積極的に提供し、購入への心理的ハードルを下げよう」 です。

商材にもよりますが、カメラのテイクアウトレンタルのように有償での実際の利用シーンで試してもらう機会の提供は、お互いにとってメリットになります。利用機会をなるべく相手 (見込み客) の生活シーンや仕事での業務プロセス内で提供できると良いです。


まとめ


今回は、カメラのお試しサブスクであるテイクアウトレンタルから、マーケティングに学べることを掘り下げました。

最後にまとめです。

カメラのお試しレンタル
  • ビックカメラとカメラブの提携からの取り組みの第一弾が 「テイクアウトレンタル」
  • 新品のカメラを買う前に持ち帰ってお試しができる有償レンタルサービスを実験的に開始

マーケティングでの意味合い
  • テイクアウトレンタルは購入の心理的ハードルを下げる打ち手
  • 人には、何かを買うことに心理的な抵抗感があるが、購入までの 「興味 → 比較検討 → 購入」 のプロセスにおいて、購入の前に 「利用」 を入れる
  • レンタルからカメラを使ってもらい、買う理由を持ってもらうことを狙っている

学べること
  • テイクアウトレンタルのポイントは実際の利用シーン
  • 商品・サービスの利用機会を積極的に提供し、購入への心理的ハードルを下げると良い
  • 利用機会をなるべく相手 (見込み客) の生活シーンや仕事での業務プロセス内で提供しよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。