投稿日 2021/11/22

トガッた生活者から未来トレンドを読み解く方法。「エクストリーム n1」 がおもしろい


今回のテーマは、商品開発やマーケティングです。

✓ この記事でわかること
  • 先進的な生活者からの 「エクストリーム n1」 とは?
  • トガッた生活者から未来トレンドを読み解く方法
  • 未来トレンドの例
  • エクストリーム N1 の2つの難しさ
  • 商品開発やマーケティングに学べること

この記事を読んでいただきたいのは、商品開発や新規事業の立ち上げを担当されている方です。

日々、商品アイデアや新しい企画を考えたり提案されている方の参考になればと思います。

また、マーケティングの仕事をされている方にも生活者理解への何かヒントになればうれしいです。

エクストリーム n1


MarkeZine の記事を読みました。

時代を先行する独特の価値観がネクストヒットを作る - “ エクストリームな N1 “ が示唆する近未来トレンド|MarkeZine

この記事では、独特な価値観を持つ 「トライブ」 と呼ぶ人を観察し分析することで未来トレンドを見出し、商品やサービスの開発へのヒントにつなげるアプローチが書かれています。

トライブとは、多くの人が抱えている、または今後抱えるであろう潜在ニーズや課題を、すでに何らかの方法で解決している先進的な生活者のことです。

出典: MarkeZine

トライブの人たちの特徴は、現状に対して 「もっとこうしたい」 という欲求を強く持っていることです。その欲求を自ら行動し積極的に解決しようとしています。

彼ら・彼女らには独自の哲学や明確な行動理由があり、ここを掘り下げると価値観が見えてきます。一見すると個人的なマニアックな嗜好のようですが、数年後には他の普通の人にも共通する考え方や行動として波及していくと見るわけです。

このようなアプローチが、トガッた生活者から未来トレンドを読み解く 「エクストリーム n1」 という方法です。


未来トレンドの事例


では、ご紹介している MarkeZine の記事から、おもしろいと思った未来トレンドをいくつか見てみましょう。

ネオノマド


1つ目の未来トレンドの事例は 「ネオノマド」 です。

出典: MarkeZine

ここからの読み解きが 「出島時間の欲求」 と記事で書かれていたのが興味深かったです。

出島時間は、他者に入り込まれない時間のことで、例えば、静かに本を読む、考えごとをする、戦略を練ったりする時間に価値を感じ、日々の中にこうした時間を確保したい欲求です。

出典: MarkeZine

ドクターシューマー


2つ目の未来トレンドの事例は 「ドクターシューマー」 です。

ドクターシューマーは、完全栄養食品やサプリメントを摂取し、普段の生活の中で科学的にストイックな体調管理をしている人たちです。

出典: MarkeZine

この事例からの示唆は、「これからは栄養補給と効率性を重視する “義務食” と、食事体験の全体を大切にする “娯楽食” に二極化するのでは」 です。

出典: MarkeZine

義務食と娯楽食の二極化から、「未来のコンビニが提供するべき娯楽食とは」 や 「未来のレストランが提供する義務食とは」 と、ビジネスの着想やアイデアにつなげます。


エクストリーム n1 の難しさ


トライブという先進的で良い意味でトガッた人から未来トレンドを見出し、商品アイデアや新しい事業の着想につなげるアプローチは興味深いです。

とはいえ決して簡単ではなく、手法として確立するのは難しさがあります。難しさとは、「誰に・何を・どうやって・いつのタイミングで訊くか」 と、そして 「見出した未来トレンドを自分たちのビジネスにどうつなげるか」 です。

未来トレンドという機会発見の難しさ、その機会を成功に結びつけるハードルがあるわけです。


トライブを見つけ、何をいつ訊くか


先進的なトライブの人は100人中で2, 3人程度しか存在しません。そうではない 98% の人に当たってしまわないよう、まずはどうやってトライブの人を見つけるかが課題です。

次に見つかったとして、その人の先進的なこだわり・生活スタイル、さらには奥にある価値観や哲学まで掘り下げる訊き方をする必要があります。どれだけ根掘り葉掘りできるかです。

接触し訊くタイミングも重要です。遅すぎると、かつてはトライブの人だけしかやっていなかったことがもう普通の人にも普及し始めていて、未来トレンドではなくそれは現在トレンドです。


未来課題へのソリューション


以上が仮にできたとしても、全体像の中ではまだ道半ばです。

見出したトレンドを自分たちのビジネスの文脈で解釈し、そのトレンドをどう活かすか、自社商品やサービスにつなげることを考えないといけません。未来トレンドが見えたとしても、その世界観に自分たちのビジネス機会がなければ意味がないわけです。

未来ではトライブ以外の人にも起こるであろう課題に対して、ソリューションをつくれるかが問われます


学べること


では最後に、先進的な生活者から未来トレンドを見出す 「エクストリーム N1」 から学べることを整理しておきましょう。

トレンドの普及段階を見極める重要性です。

具体的には次のような3つの段階があります。

✓ トレンドの普及段階
  • まだ100人中2, 3人程度の人にしか起こっていなく、今の常識からはかけ離れている
  • 15 ~ 20人くらいの人々で起こり、メディアで時々話題になりつつある
  • 100人中30人以上で広く普及し始めている

ざっくりとこれぐらいのパターンを目安として持っておくと良いです。

もう1つの学びとして付け加えたいのが、未来トレンドを発見することがゴールではないことです。未来トレンドの発見は、トレンドをビジネス機会にし商品アイデアや事業の種をつくるための手段です。

未来トレンドを成功につなげる難しさと、ここにビジネスをつくるおもしろさがあります。


まとめ


今回は 「エクストリーム n1」 という未来トレンドを読み解くアプローチから、商品開発やマーケティングに学べることを掘り下げました。

最後にまとめです。

エクストリーム n1
  • 時代を先行する独特の価値観を持つ人を観察・分析し、ヒットをつくる方法
  • 現状に対して 「もっとこうしたい」 という欲求を強く持っている人には独自の哲学や明確な行動理由がある
  • 一見すると個人的なのようだが、数年後には他の普通の人にも共通する考え方や行動として波及していくと見てビジネス機会を見出す

未来トレンドを見るポイント
  • 誰に・何を・どうやって・いつのタイミングで訊くか
  • 見出した未来トレンドを自分たちのビジネスにどうつなげるか
  • エクストリーム N1 から成果につなげるポイント

トレンドの普及段階を見極めよう
  • まだ100人中2, 3人程度の人にしか起こっていなく、今の常識からはかけ離れている
  • 15 ~ 20人くらいの人々で起こり、メディアで時々話題になりつつある
  • 100人中30人以上で広く普及し始めている


ニュースレターのご紹介


マーケティングのニュースレターを配信しています。


レターで書いているテーマはマーケティングや戦略、ビジネスノウハウ、キャリアです。ビジネスでの具体的な事例も入れながら書いています。

レターの文字数はこのブログの 2 ~ 3 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方には、レターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。

こちらから無料の購読登録をしていただくと、マーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!

最新記事

Podcast

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。