投稿日 2021/11/13

ウェアラブルメモ文具 wemo に学ぶ、ヒット商品をつくるマーケティング思考プロセス

出典: Dream Seed

今回のテーマは、商品開発とマーケティングです。

✓ この記事でわかること
  • ウェアラブルメモ文具の wemo (ウェモ) 
  • wemo 利用者の声
  • ヒットの理由
  • 学べること

この記事を読んでいただきたいのは、商品開発やマーケティングをされている方です。新しい企画や商品アイデアを日々考えている方の何か少しでも参考になればと思います。

文具業界のことで異業種の事例かもしれませんが、他の業界の成功事例には自分たちのビジネスのヒントがあります。

よかったらぜひ最後まで読んでみてください。

ウェアラブルのメモ文具


今回ご紹介したいのはコスモテック社の wemo (ウェモ) です (公式サイトはこちら) 。

ウェアラブルのメモ文具でタイプは複数ありますが、例えば手首に巻きつけるバンド型です。

出典: Amazon


wemo のコンセプトは 「いつでも / どこでも、書ける / 思い出せる」 です。

特徴は、油性ボールペンで書いたメモを消しゴムや指で消すことができ、何度でも使用できることです。水に濡れても消えることがなく、装着したまま手洗いや水中での作業も可能です。

以下は日経新聞の記事からの引用です。

手首に巻き付けたり、ものに貼り付けたりして使うメモ文具 「wemo (ウェモ) 」 が人気だ。書いた文字を消して繰り返し利用できる特徴から、医療現場などを中心に支持を集めている。

2017年の発売以来、毎年2割程度の売り上げを増やし続け、9月末時点でシリーズ累計で70万個を販売するヒット商品となっている。

ユーザーの声


公式サイトを見ると、バンドタイプの wemo は病院で看護師などが手にペンでメモする代わりに使っていたり、他には工場や建設現場などでも採用されているようです。

ユーザーからの評価の声には次のようなものがあります。

手洗いをたくさんする職業なので、文字が消えないってすごく助かります (看護師) 

取り出す手間がないし、両手が空くから作業がしやすいです (図書館司書) 

メモを手の甲に書いていましたが、見た目が悪くて … 。wemo はおしゃれでスマート! (栄養管理士) 

メモ帳を1日何十回と出し入れする煩わしさを解消してくれました (介護士) 

様々な現場へメモを持ち歩かなくて良くなりました (警察官) 

腕にあるから自然と目が行き、書いたことを忘れずにいられます! (ADHD 患者) 
引用: wemo

ヒット理由の掘り下げ


ここからは、マーケティングの視点で wemo のヒット理由を見ていきましょう。

結論を一言で言えば、「ターゲット顧客とターゲット利用シーンの両方を絞って明確にしたこと」 です。

ウェアラブルメモ文具の wemo のターゲット顧客をイメージすると次のような方々です。

✓ wemo のターゲット顧客
  • 仕事中や家事の時にメモを手書きで取りたい人
  • メモをする時にスマホや紙ノートを取り出す余裕がない
  • メモ内容をいつでもすぐに見たい
  • 水を使う時がありメモが薄れたり消えないようにしたい
  • メモをする頻度は1日に数回以上

以上のような状況に当てはまるのは医療従事者、建設業者、運搬配送業、農業や水産業、他には保育士などです。

こうした人たちが急いでその場でメモをするのはどういう状況か、その時に最適なメモを何かを考えると、wemo ようなアナログなウェアラブルメモ文具が適しています。

wemo は決して万人受けはしないかもしれません。ですが、ターゲット顧客とターゲット利用シーンの両方を絞って明確にすることで、条件に合う人には 「まさに自分向けの商品」 と思えるわけです。

合致する人たちが自分たちのビジネスが成立する (利益が出る) 人数規模で、似たような競合商品が無ければ、ターゲット顧客の望みを叶える唯一の存在になれるのです。


学べること


では最後に、wemo から学べることを整理してみましょう。

学びとして強調したいのは、「ターゲット顧客の設定だけではなく、お客の具体的な利用シーンを明確にしよう」 です。

ビジネスの本質は、「誰の何の問題をどうやって解決し、他社にはない提供価値を実現し、その対価をどう得るか」 です。これはビジネスモデルの構成要素でもあります。

この中の 「誰の何の問題」 に当たるのが、ターゲット顧客とターゲット利用シーンです。

利用シーンは目的や用途、利用中の状況、利用後にも目を向けることで、ターゲット顧客はどんな問題 (不満や不都合) を抱えているのかが見えてきます。問題にはすでに表面化し顕在化しているものもあれば、顧客本人も自覚していない潜在的な問題もあります。

このように顧客と利用シーンを明確にし、それに対して自分たちはどんな価値をお客に提供するのかを考え実現していくのが、ヒット商品につながるマーケティング的な思考プロセスです。


まとめ


今回はウェアラブルメモ文具の wemo から、商品開発やマーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

ウェアラブルメモ文具の wemo
  • コンセプトは 「いつでも / どこでも、書ける / 思い出せる」 
  • 油性ボールペンで書いたメモを消しゴムや指で消すことができ、何度でも使用できる。水に濡れても消えず、装着したまま手洗いや水中での作業も可能

ヒット理由
  • ターゲット顧客とターゲット利用シーンの両方を絞って明確にしたこと
  • wemo は決して万人受けはされないが、ターゲット顧客とターゲット利用シーンの両方を絞って明確にすることで、条件に合う人には 「まさに自分向けの商品」 と思える
  • ターゲット顧客の望みを叶える他にはない唯一の存在になった

学べること
  • ターゲット顧客の設定だけではなく、お客の具体的な利用シーンを明確にしよう
  • 利用シーンでは目的や用途、利用中の状況、利用後にも目を向けると、ターゲット顧客はどんな問題 (不満や不都合) を抱えているのかが見えてる
  • そこからお客への価値提供を実現していこう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。