投稿日 2021/11/30

サントリー 「クラフトボス」 のボトル変更に見る、世界観や志を細部に宿らせるリニューアル

出典: Suntory

今回のテーマは、商品開発とマーケティングです。

✓ この記事でわかること
  • サントリー 「クラフトボス」 のボトル変更
  • 変更の2つの狙い
  • [狙い 1] ブランドの原点に立ち返る
  • [狙い 2] 手触り体験からのブランド構築
  • 商品開発やマーケティングに学べること

この記事を読んでいただきたいのは、クラフトボスのボトルのリニューアル背景や狙いに興味を持っていただけた方です。

他には、商品開発やマーケティングの仕事をされている方です。ペットボトルコーヒーの事例で異業種の話かもしれませんが、他の業界の成功事例は自分たちの業界のヒントになります。商品アイデアや企画を考える時の何か少しでも参考になればうれしいです。

サントリー 「クラフトボス」 のパッケージ変更


MarkeZine の記事を読みました。

 「クラフトボス」 「伊右衛門」 など主要ブランドを刷新 - サントリーの “攻め” のボトルデザイン戦略とは?|MarkeZine

クラフトボスのボトルデザインの変更の話が興味深かったです。

 「クラフトボス」 が、発売5年目となる今年3月にボトルデザインのリニューアルを行った。

リニューアルボトルでは、ラベルの上下幅を小さくし、コーヒー自体が見える領域を拡大。ちょうど手を添える部分に、お馴染みのロゴイラストが、従来ボトルより大きなスペースでエンボス加工されている。手に取るときに思わず指でなぞってしまいたくなるデザインだ。
右側の3本が新しいデザインのボトル (出典: MarkeZine


ボトルリニューアルの狙い


クラフトボスがボトルデザインをリニューアルした背景や狙いを掘り下げてみます。

✓ ボトルリニューアルの狙い
  • ブランドの原点に立ち返る
  • 手触りからの愛着とブランド構築

では順番に見ていきましょう。

ブランドの原点に立ち返る


以下は再び MarkeZine の記事からの引用です。

リニューアル製品のボトルは、”正統さと開放感” の両立という原点の価値に立ち返り、ラベルの上下幅を短縮することでコーヒーの液色をひろく見せることでオーセンティックな味への自信、開放感の双方を表現したという。

 「オーセンティックというと、重厚感のある印象になりがちですが、オーセンティックなのに開放感を覚える、矛盾したものを両立させるのが、『クラフトボス』のユニークネスだとブランドチームは捉えています。実際に『クラフトボス』の評価ワードには、コーヒーとしては珍しい “自由さ” 、”爽快感” が出ることも少なくありません。飲むことでリラックスするだけではなく、束縛されない自由さを感じる、そこが満たされるのが『クラフトボス』で、そこをぶらすことなく究めたのが、今回の新しい『クラフトボス』です」 

このようにボトルデザインにも 「正統」 と 「開放感」 というブランドの原点を入れたい思いが、デザイン変更の原動力となったわけです。

消費者が目にして手に取るボトルに、ブランドの世界観を再現する狙いです。

手触りからの愛着とブランド構築


リニューアルされたボトルで特徴的なのは、ボスのロゴがボトルの表面に凹凸で入っていることです (エンボス加工) 。

出典: Suntory

ここにも意図があります。クラフトボスのロゴを目で見るだけではなく、ロゴの手触り感からクラフトボスへの愛着を育む狙いがあります。

これまでクラフトボスというペットボトルコーヒーの体験は、目で見る、コーヒーの香りを嗅ぐ、飲んで味わうという 「視覚」 「嗅覚」 「味覚」 でした。今回のボトル変更で、手でロゴを触ることによる 「触覚」 が加わったわけです。

五感からのユーザー体験によって、クラフトボスは他のコーヒー飲料にはない価値イメージが消費者の頭の中にできあがります。クラフトボスが独自化された存在になり、ブランドになるのです。


学べること


では最後に、クラフトボスのボトル変更から学べることを整理してみましょう。

一言で言えば、学びは 「何かを新しく変える時に単に表面的な変更ではなく、自分が大切にする価値観や思いを入れてみよう」 です。

クラフトボスは、奇をてらったボトルリニューアルではありませんでした。

✓ ボトルリニューアルの狙い
  • ブランドの原点に立ち返り、ブランドコンセプトのデザイン反映
  • よりリッチな体験を提供し、消費者のクラフトボスの時間を豊かにしたい
  • 五感でのユーザー体験からのブランド構築

こうした狙いがあってのパッケージ変更でした。

商品開発やマーケティングでは、新しいアイデアや施策の中に軸となる価値観や志、こだわり、ブランドの世界観が入っているかを少し立ち止まって考えてみると良いです。


まとめ


今回はサントリー 「クラフトボス」 のボトルリニューアルから、商品開発やマーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

[ボトル変更の狙い 1] ブランドの原点に立ち返る
  • ボトルデザインに 「正統」 と 「開放感」 というブランドの原点を入れたい思いがあり、デザイン変更の原動力となった
  • 消費者が目にして手に取るボトルにブランドの世界観を再現する狙い

[ボトル変更の狙い 2] 手触りからの愛着とブランド構築
  • ボスのロゴがボトルの表面に凹凸で入っている
  • ロゴの手触り感からクラフトボスへの愛着を育む狙いがある
  • 触覚を加えた五感でのユーザー体験によって、クラフトボスは他のコーヒー飲料にはない価値イメージが消費者の頭の中にできあがる。クラフトボスが独自化された存在になり、ブランドになる

学べること
  • 何かを新しく変える時に単に表面的な変更ではなく、自分が大切にする価値観や思いを入れる
  • 商品開発やマーケティングでは、新しいアイデアや施策の中に、軸となる価値観や志、こだわり、ブランドの世界観が入っているかを少し立ち止まって考えてみよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。