投稿日 2023/02/24

アサヒの白湯。想定3倍超ヒットに学ぶ価値の見せ方


今回のテーマは価値の見せ方です。お客さんに買ってもらう動機・理由をどうつくるかという話です。

おもしろいと思ったアサヒ飲料の商品を取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • アサヒ飲料の白湯が想定以上の売れ行き
  • ホット天然水ではなく 「白湯」 を強調
  • 買ってもらうための価値の見せ方

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

アサヒ 白湯


こちらの記事を読みました。

アサヒの 「白湯」 が想定の3倍超ヒット 男性市場の拡大に活路|日経クロストレンド 

白湯 (さゆ) とは水を一度沸騰させたお湯のことです。白湯を飲むことで胃腸全体が温まり消化を助けたり基礎代謝が上がったりと、健康に良いとされる効果が期待できます。

計画以上の売上


2022年11月にアサヒ飲料が期間限定で発売した 「アサヒ おいしい水 天然水 白湯」 が、想定以上の売り上げを見せているとのことです。

 「アサヒ おいしい水」 ブランドの 「おいしい水 天然水」 を、白湯の適温とされる約50 ~ 60度に温めて提供する。

容量はホット用の什器 (じゅうき) では定番の500ミリリットルボトルより一回り小さい340ミリリットルを採用し、温かい間に飲みきれるサイズにした。パッケージ中央には、什器の中でも一目で見分けがつくよう、大きく 「白湯」 という文字を印字。ホット什器が置かれる冬場限定の商品とした。発売から約1カ月の販売状況は、当初の計画の3倍以上と、かなり好調に推移しているという。

飲用シーンの明確化


アサヒ飲料は白湯を買ってもらうために飲用シーンを定めました。「ターゲット利用シーン」 の明確化です。

アサヒ飲料が着目したのは朝の出勤時でした。

白湯はお湯を沸かして 50 ~ 60 度くらいにして飲むものです。ひと手間かける白湯が出勤途中のいつものコンビニで気軽に買えることを狙いました。

湯を沸かす必要がある白湯が、外出先で飲める。そんな市場に目を付けたのがアサヒ飲料だった。

 「人々の外出傾向が高まり、出社頻度も上昇してきていることから、22年の頭から企画をスタートした」 と、マーケティング本部マーケティング二部 お茶・水グループの鈴木慈氏は明かす。

主に狙ったのが、朝方や出勤時のシーンだ。朝起きがけに白湯を飲む習慣が定着する一方、朝の支度に時間が取られ、お湯を沸かす時間は意外と取りにくい。こうした利用シーンを想定して、コンビニやスーパーに立ち寄って白湯を買えるようにすれば、アサヒ飲料は既存のミネラルウオーターや清涼飲料とは異なるニーズを掘り起こせる。

小売店にとっても目的買いを促す商品になり得るため推しやすく、メーカーと小売店の思惑が一致した商品といえる。

ホット天然水ではなく白湯


興味深かったのはアサヒ飲料は以前にも同じような商品を販売していたことです。

しかし当時は期待したほどの成果は出せませんでした。

実は、アサヒ飲料では、14年にも 「アサヒ 富士山のバナジウム天然水 ホット PET340ml」 という温かい水を、沖縄県を除く全国のローソンで発売していた。

この時は、白湯とは打ち出さず、"ホットの天然水" という位置づけだった。「当時はミネラルウオーターの飲用量が年々上がっていたものの、薬を常飲している層、冷たい水を飲まないといった層にしか響かず、定番商品にならなかった」 と振り返る。

以前の 「ホット天然水」 と今回の 「白湯」 のパッケージを見比べると違いがよくわかります。ホット天然水はホットなのに中央には冷涼感のある富士山のイラストが目立ちます。

2014年に発売した 「アサヒ 富士山のバナジウム天然水 ホット PET340ml」 のパッケージには 「白湯」 とは書かれていなかった。中央には富士山のイラスト (出典: 日経クロストレンド

今回は 「白湯」 を文字とイラストで強調 (出典: 日経クロストレンド

温かいミネラルウォーターではなく 「白湯」 として訴求したところに想定以上に買ってもらえた要因がありそうです。


学べること


では、アサヒの白湯から学べることを掘り下げていきましょう。

商品イメージの打ち出し方


以前の 「ホット天然水」 と 「白湯」 は、商品の中身は同じです。言ってしまえばただのお湯です。

しかし商品名やパッケージ、店頭での見せ方で消費者が受け取る印象は変わります。ホット天然水ではパッケージには 「冷たい天然水」 と同じ富士山の冷涼感のあるイラストが強調されているのと、白湯のイメージで温かさを前面に出しているのでは抱くイメージが異なるわけです。

価値の見せ方


学びを一般化すると、お客さんが 「買いたくなる理由」 をどうつくり伝えるかです。

買いたい理由とは商品がもたらす価値です。他にはなく高い価値ほど選ばれる理由として強くなります。

ターゲット顧客と商品のターゲット利用シーンを絞り、誰がどういう状況で使い、商品はどんな価値を提供するのか。マーケティングで掘り下げるべき大事な問いかけです。


まとめ


今回はアサヒ飲料の白湯を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 買ってもらう理由のつくり方
  • お客さんが買いたいと思う理由とは商品がもたらす価値。他にはなく高い価値ほど買ってもらえる
  • ターゲット顧客と商品のターゲット利用シーンを絞り、誰がどういう状況で使い、商品はどんな価値を提供するのかを掘り下げる
  • お客さんが 「買いたくなる理由」 をつくり伝えていくのがマーケティングの役割


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。