投稿日 2023/02/23

インスタ動画を EC 接客ツールで再利用。お客さん視点での資産の有効活用


今回のテーマは今ある資産をどう活かすかです。「お客さん視点で資産を有効に活用しよう」 という話です。

おもしろいと思ったアパレルブランドの取り組みから、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • 一石二鳥の動画戦略
  • 今ある資産の有効活用の方法
  • 価値かどうかを決めるのはお客さん

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

インスタを EC で有効活用


こちらの記事を読みました。

インスタ動画を Web 接客ツールで "再放送" CVR が1.5倍に|日経クロストレンド

インスタの動画を有効活用している事例です。

一石二鳥の動画戦略


以下は記事のリード文です。

 「Instagram」 で実施したライブ配信の動画を、自社 EC サイトでのマーケティングに再利用する。そんな施策で EC での購入完了率を上げたのが、複数のアパレルブランドを展開するジョンブル (岡山県倉敷市) だ。

同社は Web 接客ツールを活用し、サイト訪問者にポップアップ (小さな画面) で Instagram の動画を表示して、商品を訴求。SNS と EC サイトの利用者の両方にアプローチする一石二鳥の動画戦略をとった。

この施策は功をなし、動画を視聴した人は動画非表示の訪問者と比べて、1.5倍の購入完了率だったという。

コロナによる課題


ジョンブルにはコロナによる対応しなければならない課題がありました。

ジョンブルが EC サイトで動画施策を強化し始めたのは、今から2年前のこと。新型コロナウイルス感染症拡大の真っただ中だ。外出自粛ムードが広がり、実店舗への来店などがしづらい中、EC サイトの利用が急拡大した。多くの EC 事業者が、その恩恵を受けたことだろう。ところが、ジョンブルはその限りではなかった。

 「リアル店舗にお客さまが行きづらくなったため、EC サイトが伸びると一般的には言われていた時期だったが、当社の場合はそうはならなかった。(主力アパレルブランド)『JOHNBULL』は、商品の素材感や工夫など、こだわりのポイントをリアル店舗でスタッフが説明することで、価格に納得して購入していただけるブランドだと考えている。EC サイト上の商品写真やテキストだけでは伝わらない部分があると感じていた」 

ジョンブル販売促進課の曽我部大補氏はこう振り返る。

課題への打ち手


そこでジョンブルがやったのは、インスタの動画を自社 EC サイトで表示させることでした。

EC サイト上でも、店舗でスタッフから商品説明を受けられるような疑似体験を提供することで、EC サイトの弱点を補えないかと考えた。その具体策として、JOHNBULL の公式オンラインストアで動画施策を開始した。

当初はサイト用に動画を作成していた。だが、次第に Instagram で配信した動画を EC サイトのポップアップでも転用するようになったという。

 (中略) 

Instagram ライブはボタン1つで撮影できるため、EC サイトのためだけに動画をつくるより、はるかに効率がよい。また、店舗スタッフが提案する着合わせや着回しの提案は、接客慣れしているだけあって質が高い。商品を組み合わせてアレンジのパターンを提示しながら、商品紹介をすることで、視聴者のイメージが湧き、購入につながりやすい。

EC サイトだけでは自社商品の魅力を十分に伝えきれないという課題感に対して、少しずつではあったもののインスタでの紹介動画を有効活用し、EC サイトへの訪問者への購入を後押しできたわけです。


学べること


ではジョンブルの事例から学べることを掘り下げていきましょう。

今ある資産の有効活用


ジョンブルはもともと運用していたインスタでの動画配信を、自社 EC サイトでも同じ動画を表示させました。動画を見せなかった場合に比べて1.5倍の購入完了率でした。

成功要因を一般化して表現すると既存の資産を有効に活用したということです。

インスタでスタッフが新着の服を紹介したり着回しを提案するというのは店舗での接客の仮想的な再現です。せっかくの紹介をインスタ内でとどめず EC サイトにも横展開し広げました。

価値を決めるのはお客さん


マーケティング視点で1つ注意点を付け加えておきます。

今ある資産が有効に活用されるかどうかはお客さんが決めます。

ジョンブルの話に当てはめれば、もしインスタ動画を EC サイトに表示しても有益でなかったり、むしろポップアップが訪問者に邪魔だと思われれば有効活用ではありません。横展開として活かされるのはお客さんが価値だと思ってこそなのです。

売り手が独りよがりに 「自分たちがうまくやっている」 と思っても、お客さんがそれを価値だと思わなければ有効活用とは言えません。

マーケティングで忘れてはいけないのは 「価値かどうかはお客さんが決めることである」 ということです。


まとめ


今回はジョンブルの一石二鳥の動画活用の事例から、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 資産の有効活用
  • 今ある既存の資産を、他でも有効活用できないかを考えてみよう
  • なお、有効活用ができているか、価値かどうかを決めるのはお客さん
  • 売り手が独りよがりに 「自分たちは横展開ができている」 と思っても、お客さんが価値だと思わなければ有効活用とは言えない


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。