投稿日 2023/02/13

新海誠監督の 「何度も見たくなる映画論」 。ヒット商品につなげるマーケティング


今回のテーマはマーケティングコミュニケーションです。

おもしろく読んだ新海誠監督のインタビューから、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • 新海誠監督が考える 「ヒット映画作品の共通点」 とは?
  • 優れた広告コピー
  • 「わからない」 から 「わかった」 にするマーケティングコミュニケーション

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ヒット映画と広告コピーの共通点


アニメ映画の 「君の名は。」 、「天気の子」 、最近では 「すずめの戸締まり」 の映画監督である新海誠監督へのインタビュー記事を読みました。

ヒット映画にある快感


インタビューで興味深かったのは、ヒットする映画には 「わからない」 と 「わかった」 の繰り返しに快感があるという話でした。

―― ヒット作というのは2回見たくなる、癖になるような部分があります。監督はどう考えていますか。

 「例えば、映画に込める情報量は多すぎるとついていけなくなる。逆に情報が分かりやすすぎると、次の展開も見えてしまう。一番いいのはわかるかもしれない、でも、わからない、しばらく見ていたら、あ、わかった、その問いかけと回答の繰り返しのリズムだと思う。最初にわかんない、どういうことって思わせて、あ、わかったっていう快感にたどり着く。それを繰り返していくうちに快感がどんどん大きくなる。それが癖になるような映画だと思う」 

優れた広告コピー


新海誠監督のヒット作品にある共通点の話でつながるのは、広告コピーってこう書くんだ!読本 (谷山雅計) という本に書かれていたことです。


それは 「優れた広告コピーは "常識" と "芸術" の間にある」 というものです。

ここで言う 「常識」 とは聞いても当たり前だと思うこと、「芸術」 とは聞いても何を言っているのか意味がわからないことを指します。

優れた広告コピーとは、見たり聞いたりした時に 「それは当たり前」 (= 常識) でもなく、「何を言っているのかわからない」 (= 芸術) でもなく、ちょうどその中間にあるというわけです。広告コピーを見た時に 「そういえばそうだね」 と思えるものです。

✓ 常識と芸術の間
  • それは当たり前 [常識]
  • そういえばそうかも [広告コピー]
  • わからない [芸術]

広告コピーの役割は相手に気づきを与えることです。優れた広告コピーは見せられたり言われて初めて、普段は意識の下に眠っているものを呼び起こすのです。

共通点の整理


ここまでの話を一度整理してみます。

新海誠監督が言っていたのは以下でした。

  • 映画に込める情報量が多すぎるとついていけなくなる。逆に情報がわかりやすすぎると、次の展開も見えてしまう
  • 一番いいのは、わかるかもしれない、でも、わからない。しばらく見ていたら、あ、わかった。その問いかけと回答の繰り返しのリズム
  • 「わからない」 と 「わかった」 を繰り返していくうちに快感が大きくなる。それが癖になるような映画だと思う

わかりにくすぎると伝わらず、わかりやすすぎてもいけない。この中間を目指し 「わからない」 から 「わかった」 が何度も起こり快感になるのがヒット作品であると。

良い広告コピーとは 「常識 (当たり前) と芸術 (わからない) の間にある」 という考え方と共通点があります。


マーケティングへの学び


では今回の話からマーケティングに学べることを掘り下げていきましょう。

 「わからない」 から 「わかる」 へ


新海誠監督の考えるヒット映画作品の特徴は、「わからない」 と 「わかった」 の心地よい繰り返しが快感につながるというものでした。

1回で映画を見ている中でシーンごとに起こったり、あるいは1回目で映画を見た時にはわからなかったメッセージが、2回目のリピートで見た時に奥にあるストーリーを初めて理解できたということもあるでしょう。

適切な 「わかる」 の落としどころ


マーケティングへのヒントになるのはお客さんとのコミュニケーションにおいてです。

お客さんが自社商品のことを知らない、ほとんど理解していない状態から新しく知った、興味を持った、特徴を理解したなどの 「わかった」 という状態にいかに進められるかです。

映画だけにかぎらず人はあるものについてわかったと思った時に快感が生まれます。知的興奮のようなもので何かが腹落ちする感覚です。

お客さんをこうした状態にできれば商品・サービスのことを自分ごと化してもらえます。マーケティングによって自社商品への良い価値イメージができ、単に知っているくらいのレベルから一歩進むわけです。

知らない・興味がないという状態から適切な 「わかる」 に変えるコミュニケーション設計がマーケティングには求められるのです。


まとめ


今回は新海誠監督のインタビューと、優れた広告コピーの話ともつなげ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ マーケティングコミュニケーション設計
  • 人はわかったと思った時に快感が生まれる
  • マーケティングで届ける情報量が多すぎるとお客さんはついてこられない。お客さんが 「わかった」 となれば、商品・サービスが自分ごと化される
  • 自社商品のことを 「知らない」 「興味がない」 から適切な 「わかる」 に変えていこう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。