今回は漫画の 「キングダム」 を取り上げます。
キングダムのストーリー作りから、マーケティングに学べることを掘り下げていきます。
✓ この記事でわかること
- 漫画 「キングダム」 のおもしろさを左右するもの
- キングダムとマーケティングとの共通点
- マーケティングをおもしろくする方法
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
キングダム
こちらの記事を読みました。
連載17年目 「キングダム」 は何を描き続けてきたか - 原泰久氏 「この連載を終えるまでアナログを貫く」|東洋経済オンライン
キングダムの作者である原泰久さんのインタビュー記事です。
おもしろさを左右するもの
記事ではどうやってキングダムのストーリーを作っているかが語られていました。
── 作中では人間的魅力あふれる名君として描かれる秦の始皇帝 (嬴政 (えいせい) ) ですが、従来は独裁者、暴君、侵略者といったイメージも。
強固な既存イメージは、エンタメの作り手にとっては 「新たな可能性」 です。うまく反転させることで新鮮な見方を打ち出せる。さらに連載開始当時、学術研究でも従来と異なる説が出てきていた。「始皇帝って意外と英雄らしい面があったのでは」 と。
『キングダム』は 「ネタバレ前提」 の漫画だと思って描いています。司馬遷の『史記』をちょっと確認すれば大筋はすぐわかる。
面白さを左右するのは、決められたゴールに行き着くまでのプロセス、キャラクターの魅力、人間のドラマをどう描くかです。だからこそ、新説なども柔軟に取り入れつつ史実に対しては忠実に、キャラクターに対しては誠実に、そして『史記』に書かれていない部分では大胆に。毎週がその積み重ねです。
史実にない部分は大胆に
興味深かったのは引用の最後のところです。
もう一度そのまま引用すると、
史実に対しては忠実に、キャラクターに対しては誠実に、そして『史記』に書かれていない部分では大胆に。毎週がその積み重ねです。
歴史の史実に書かれている内容は漫画のストーリー内で忠実に再現する一方で、書かれていない部分は大胆に解釈を入れていると。史実をベースにしつつ、そこからどこまでストーリーや人物設定を膨らませられるかがキングダムのおもしろさにつながっています。
史実に書かれていない部分をどう解釈するのかはマーケティングと共通点があります。
学べること
ではキングダムのストーリーづくりから、マーケティングに学べることを掘り下げていきましょう。
インタビューで語られなかったこと
Google のオウンドメディア Think with Google の記事内容がつながるのでご紹介します。
定性調査から良質なインサイトをどう導くのか:今こそ考えたい 「マーケティングリサーチ」 の本質
記事で 「インタビュー調査では、聞けなかったことの中にこそ答えがある」 と書かれていて今回の文脈で示唆があります。
定性調査の評価が分かれるもう 1 つの理由は、現場で聞いたことがそのまま結果になる訳ではなく、むしろ聞けなかったことの中にこそ答えがあるという点があります。
たとえば以前、オンラインショッピングにおける消費者のインサイトを探るために、実店舗と EC サイトでの普段の買い物の実態を調査したことがあります。さまざまな家庭を訪問し、普段の買い物についての考えを聞き、さらに実店舗で買うものと EC で買うものを聞いたうえでその両方の買い物に同行するというものでした。
ある女性に話を聞いたところ、EC では趣味のアロマテラピーに関連するものは買うが、一般消費財の買い物では EC を利用しないと答えてくれました。理由は、いつもの店で実物を見て買い物をしたいからとのことでした。もちろんそれは本心だったと思いますが、その後スマートフォンで EC サイトの閲覧履歴を見せてもらったところ、柔軟剤や消臭剤などを時折 EC で購入していることがわかったのです。
この人は嘘をついたのでしょうか。そうではありません。このズレが生じた理由の 1 つは、私たちが 「普段」 と聞いたことでした。つまり、この女性にとって 「時折購入する柔軟剤や消臭剤」 は 「普段」 の買い物ではないという認識だったのです。そしてもう 1 つの理由は、彼女は消費財の購入を EC で済ませることに対して、無意識のうちに罪悪感があったためです。このため買い物行動の記憶にふたをしていたのです。
これがまさに 「聞けなかったことの中にこそ、答えがある」 ということです。定性調査だからこそ、この女性の話を深掘りでき、オンラインショッピングで済ませてしまうことへの罪悪感に気づくことができました。そして結果的に、この罪悪感はその人特有のものではないこともわかりました。
聞けなかった、つまりインタビュー対象者が話さなかったのはインタビューをする側とされる側で 「普段」 という言葉の捉え方が違っていたからです。
また、対象者の女性は消費財の購入を EC で済ませることに無意識に罪悪感があったのも話してくれなかった要因でした。
インタビュー調査では 「聞けなかったことの中にこそ答えがある」 というのはこういうことなのです。
キングダムとマーケティングの共通点
ここでキングダムに話を戻すと、キングダムでは 「史実に書かれていること」 には忠実で、一方の 「書かれていない部分」 は大胆に解釈を膨らませてストーリーに仕上げていました。
キングダムのストーリー作りにはマーケティングと共通点があり、整理をすると次のようになります。
✓ キングダムとマーケティングの共通点
- 史実に書かれていること → お客さんの言動 → 忠実に取り入れる
- 書かれていない部分 → お客さんの奥にある気持ちや本音 (顧客インサイト) 、価値観 → 大胆に解釈する (おもしろくなる要素)
マーケティングをおもしろくする方法
キングダムのストーリー作りとマーケティングのお客さんの理解の共通点からは、マーケティングをおもしろくするヒントがあります。
お客さんが言うことや観察できる行動は事実として集め、顧客理解への情報とします。
しかし、顧客理解はこれだけでは十分ではありません。お客さんが言葉で説明できない気持ち、他人に言うのは恥ずかしいような本音、そもそも自分でも意識できない奥にある感情や価値観にどれだけ迫れるかです。
そして大胆な解釈も入れた顧客理解を使って、お客さんの潜在ニーズを満たすような商品開発やマーケティングを展開します。見せられたり言われて初めて 「そうそう、これが欲しかった」 「なんで欲しいものがわかったの」 となるくらいの驚きや価値をお客さんに届けます。
マーケターが時にはお客さん本人以上にお客さんのことを深く理解することが、マーケティングをおもしろくします。
まとめ
今回は漫画のキングダムのストーリー作りから、マーケティングに学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ マーケティングをおもしろくする方法
- 直接観察できるお客さんの言動だけからでは顧客理解は十分ではない
- 言語化されていない気持ち、他人に言うのは恥ずかしい本音、自分でも意識できない奥にある感情や価値観まで掘り下げることが大事
- 大胆な解釈も入れた深い顧客理解から、お客さんの潜在ニーズを満たすような商品開発やマーケティングを展開しよう
マーケティングレターのご紹介
マーケティングのニュースレターを配信しています。
気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。
マーケティングのことがおもしろいと思えて、今日から活かせる学びを毎週お届けします。
レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。
こちらから無料登録をしていただくとマーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!