投稿日 2023/02/27

旅行ガチャ 「どこかにビューーン!」 。埋もれている商品価値の伝え方


今回のテーマは商品価値の伝え方です。

おもしろいと思った JR 東の旅行サービスを取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • JR 東の旅行サービス 「どこかにビューーン!」 がおもしろい
  • 強制せず、お客さんが自らやりたくなる仕組み
  • 埋もれている商品価値の伝え方

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

どこかにビューーン!


ご紹介したいのは JR 東の新幹線を使った 「行き先のわからない旅行サービス」 です。名前は 「どこかにビューーン!」 と言います (公式サイトはこちら) 。


行き先はランダムで決まる


以下は日経新聞の記事からの引用です。

JR 東日本は管内の新幹線の駅の中から行き先がランダムに決まる往復旅行 「どこかにビューーン!」 を12月上旬から始める。

専用サイトで申し込むと、4つの駅名が書かれた旅先候補のリストが提示され、その中から行き先が1カ所決まる。これまで利用の少なかった駅にも足を運んでもらえるよう促すことで地域の活性化にもつなげる。

 「どこかにビューーン!」 は、東京駅から約150キロメートル以上離れた東北や北陸地方など、JR 東が管轄する新幹線47駅のどこかに往復旅行ができるサービスです。

出発場所は東京と上野、大宮の3駅のいずれかからです。利用者が指定できるのは出発駅と往復の日時、人数です。旅先はわかず、どこへ行くかはランダムで決まります。

先行イベントに参加した利用者の声を拾ってみると、

9月末、JR 東京駅で開かれた先行イベントには家族連れなど多くの人が集まった。行き先は事前には分からず、設置されたモニターで発表される。

千葉県に住む40代の男性会社員の行き先は福島駅に。「新幹線で通り過ぎたことはあるが降りたことはない。おいしい食べ物を探しつつ、温泉にも行ってみたい」 と声を弾ませていた。

サービス開始の狙い


サービス提供者である JR 東の課題感も見てみましょう。

 「あまり興味のなかったエリアに旅行してもらい、非日常的な体験を楽しんでもらいたい」 。JR 東マーケティング本部の橋本久義マネジャーは開発の狙いをこう語る。背景には新幹線の駅ごとに利用者数の差が大きいという課題がある。

例えば2021年度で1日平均の乗車人員が1万5000人規模の仙台駅に対し、数百人程度にとどまる駅も少なくない。そうした地域にも若者やシニアなど幅広い層が足を運ぶきっかけをつくることで隠れた魅力を発見してもらう。

学べること


では 「どこかにビューーン!」 から学べることを掘り下げていきましょう。

無理やり感のない提案


 「どこかにビューーン!」 にはすごろくやガチャガチャのような、どうなるか何が当たるかわからない楽しさがあります。

構図としては売り手である JR 東が勝手にお客さんの旅行先を決めています。しかし買い手の感覚として強制的に行かされている感じはなく、むしろ行ったことのない旅先を提案してくれている印象を抱きます。

 「どこかにビューーン!」 というサービスにすることで、新しい価値 (行ったことのない場所への旅行を楽しめること) の提供を仕組みとしてできています。

自ら使いたくなる仕組みをつくろう


 「どこかにビューーン!」 からの学びを一般化して表現すると、まだ知られていない・体験されていない商品価値の伝え方です。

ランダムの要素を入れて、おまけ的にでもいいですがお客さんが試してみる、ちょっと使ってみる仕組みをつくってみると良いです。

ポイントは、売り手が強制してお客さんに使わせるのではなく、遊びやゲーム的な楽しさなどからお客さんに 「せっかくならやってみようかな」 と自ら使ってみたくなる仕掛けを入れることです。

一度使ってもらえれば良さはわかるはずなのに、知られていなかったり試してもらえないために埋もれている商品はないでしょうか。「どこかにビューーン!」 のアプローチはお客さんが知らなかった商品価値を体験してもらうためのヒントがあります。


まとめ


今回は JR 東の 「どこかにビューーン!」 を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 埋もれている商品価値の伝え方
  • 売り手が強制してお客さんに使わせるのではなく、ゲーム的な楽しさからお客さんに 「せっかくならやってみようかな」 と自ら使ってみたくなる仕掛けを入れてみると良い
  • お客さんが試してみたくなる、ちょっと使ってみたいと思える仕組みをつくり、一度使ってもらえればわかる価値を体験してもらおう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。