投稿日 2023/02/18

オルビスの DIY 化粧品。「塗り絵での共創」 からの価値のつくり方

出典: FASHIONSNAP

今回のテーマは価値創出です。「塗り絵での共創」 からの価値のつくり方という話です。

おもしろいと思った化粧品ブランドのオルビスの事例から、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • オルビスの DIY 化粧品
  • 自分好みにできる価値
  • 自由度の設計がポイント
  • 共創からの価値のつくり方

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

オルビスの DIY 化粧品


出典: FASHIONSNAP

オルビスがユーザー参加型の取り組みを進めています。

スキンケア化粧品のオルビスがファン参加型のプロジェクトを始めた。

 「エシカルな暮らしを日常文化に」 をビジョンにし、自分に合った化粧品を使い切れる分だけ手作りできる。募集した参加者はコミュニティーのメンバーとしてサービス企画のワークショップに参加して交流しながら、手作りする化粧品の種類を増やすなどの検討に加わる。

 (中略) 

オルビスは、エシカルな日常生活を送りたいと試行錯誤する人に着目する。環境によいライフスタイルで気分良く日常を過ごしたい人が、情報交換しながらより自分の生活の合うものづくりができるプロジェクトを目指し、新サービス 「more more (モアモア) 」 を始めた。自分のケアに必要なものを自分で作ることから、サービス内容を 「DIY セルフケア」 と表現する。

コンセプト動画はこちらです。


DIY の中身


どのような DIY の中身かと言うと、続けて記事から見てみましょう。

化粧品を作るには基本の材料に加えて、美容成分と香りのもととなる精油を自分で選んでブレンドする。

たとえばフェースマスクを作る際には、乾燥ケア、エイジングケア、くすみケアにつながる3つの植物エキスから、自分が使いたいものを選ぶ。香りを決める精油は日本産の植物から丁寧に抽出してブレンドした 「和精油」 で、レモンやクロモジなどから気分にあうものを選ぶことができる。

できあがった化粧品は小さいガラス容器に入れ、品名もライフスタイルに合わせて自分で決めてラベルを記入する。フェースマスクの場合は1回で約2週間分をつくることができる。使い終わったガラス容器は次の機会に店舗に持ち込み、再利用することを検討しているという。

ユーザー参加型の狙い


自社の化粧品を DIY で作ってもらう狙いはどこにあるのでしょうか?

新規事業開発グループでサステナビリティーの推進も担う諸町実希氏は 「美容の意識の高い人にはエシカルな生活を心がけたいと考えている人が多いが、それによって美容の選択肢が少なくなるのは楽しくないという声も多い」 と話す。

そこで使い切れない化粧品を捨てなくてすむように我慢するのではなく、自分にぴったりと合うものを少しずつ作るプロジェクトを企画したという。店舗の一部にワークショップ用の場所を設けて、化粧品の製作や企画ができるようにする。

学べること


オルビスの DIY 化粧品から学べるのは、お客さんと一緒になってどう価値をつくるかです。

自分好みにできる価値


セルフで作れることで自分に合った自分だけの化粧品が手に入ります。

化粧品は好みや肌に合うものは人それぞれで千差万別です。売り手が多様なニーズに合うものを色々と用意するよりも、だったらいっそのことお客さんに自由に作ってもらおうという発想なのがオルビスの DIY の化粧品です。

共創での自由度


とはいえお客さんに全てを丸投げしてやってもらえればいいかと言えば、それではうまくいかないでしょう。お客さんからするとどうしていいかわからないからです。

そこで大事になるのは売り手と買い手で共創する時の 「自由度の設計」 です。

白地キャンパスより塗り絵


共創の方針で良いと思うのはベースの部分は売り手が自分たちで用意し、お客さんがやる範囲に良い意味で制約をつくる方法です。

ブランドの世界観がブレることなく、ユーザー体験が損なわれない範囲においてお客さんに自由にやってもらいます

たとえるなら無地の真っ白なキャンパスを渡して絵を描いてもらうのではなく、お客さんに塗り絵の素材を渡すイメージです。キャラクターや背景を白色がついていない状態まで売り手が作り、色塗りはお客さんの好みに合うようにやってもらいます。

こうした自由にできる余白は残しつつ、ブランドとしての 「らしさ」 は統一して共創から価値をつくると良いです。


まとめ


今回はオルビスの DIY 化粧品を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 共創からの価値のつくり方
  • 売り手が全てをやるのではなく、一部をお客さんに参加してもらうことで共創からお客さん好みの商品にできる
  • ベースの部分は売り手が用意し、お客さんがやる範囲に良い意味で制約をつくるといい
  • ブランドの世界観がブレず、ユーザー体験が損なわれない範囲において、お客さんに自由にやってもらおう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。