投稿日 2023/02/10

グミニケーションに見る 「インターネット的」 な本質的価値

出典: ORICON NEWS

今回のテーマは 「お客さんへの提供価値」 です。

おもしろいと思ったグミのトレンドを取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • グミが 「グミニケーション」 で人気に
  • 糸井重里さんの 「インターネット的」 との共通点
  • ドラッカーに学ぶマーケティングで重要な問いかけ

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

グミが人気


ご紹介したい話題はお菓子のグミです。

各社の取り組み


以下は日経新聞の記事からの引用です。

カラフルな見た目や自由度の高い形状が SNS と好相性のグミ。

味だけではない魅力から Z 世代を中心に人気を集めるなか、小売り各社が売り場を相次ぎ拡充している。セブン - イレブン・ジャパンは売り場を従来の3倍に拡大。ロフトは2022年からグミのイベントを年2回に増やした。

グミニケーション


グミは食べるものとしてだけではなく、友だちと共有したり、SNS に投稿されるなどコミュニケーションに一役買っているとのことです。

 「週2, 3回は食べる。友達と共有する楽しみもある」 。11月2日に東京都内のセブンイレブンで海外グミ 「ナーズ ロープ」 (248円) を買った大学院生の藤田社さんは、グミが交友関係に花を添えていると話す。

 (中略) 

味以外の特徴が豊富で話題にしやすいため、コミュニケーションツールとしての地位を築き始めた。日本グミ協会が 「グミの日」 に向けて SNS でグミをコミュニケーション手段にする造語 「グミニケーション」 を本格的に発信。芸能人などの著名人を通じ、この言葉の認知度が高まった。

◯◯ 的


ここで着想を広げたいのですが、グミニケーションの話は糸井重里さんの本 インターネット的 に書かれていたことがつながります。


インターネット的


本書のタイトルにもなっている 「インターネット的」 について糸井さんは次のように書いています。

インターネットと 「インターネット的」 のちがいというのは、字面では単に "的" があるかないかのことなんですが、これは重要なポイントになってきます。

 「インターネット的」 と言った場合は、インターネット自体がもたらす社会の関係の変化、人間関係の変化みたいなものの全体を思い浮かべてみてほしい。

インターネットとインターネット的は料理にたとえて次のように書かれています。

インターネットは、「伝える仕組み」 です。いわば、人間の生み出す情報という 「料理」 をすばやくどこにでも届ける 「お皿」 です。ほんとうは、一番面白いのは、お皿に何をのせるかということのはずです。お皿自体には、ぼくはあまり興味がないのです。

でも、これまで、インターネットの本を何冊読んでも、「お皿」 と 「お皿を運ぶシステム」 と 「お皿にマークを入れる権利の奪い合い」 や、「お皿の数」 のことばかり言っていたわけです。

料理へのたとえを整理をすると、

  • お皿 → インターネット
  • 料理 → インターネット的

もう1つたとえを続けると、自動車に当てはめて説明されています。

  • インターネット: 自動車と道路。インフラとして道路が整備され、自動車は人や荷物を運ぶもの
  • インターネット的: 自動車が発明され、社会に広く普及したことによって世の中が変化していったことの全てを含む

グミとグミ的


ここで話をグミにつなげます。

グミは一般的にはお菓子なので食べるものです。

最近のグミ人気の背景には、グミを直接交換したり SNS への共有などの間接的なものも含めて、コミュニケーションのツールになっていることがあります。

インターネット的に当てはめれば 「グミ的」 というグミがもたらす人間関係の変化を波及的に生み出しているわけです。


学べること


ここまでの内容 (グミニケーション, インターネット的) から学べるのは 「商品の先」 に目を向ける重要性です。

 「◯◯ 的」 の本質


糸井重里さんが本で書いた 「インターネット的」 の本質はあるものがもたらす人間関係の変化、社会関係の変化です。

グミの場合はグミニケーションと言われるコミュニケーションに貢献する価値が 「グミ的」 と捉えることができます。

商品の先にある価値


学びを一般化すると 「商品・サービスがお客さんにもたらす本質的な価値は何か」 です。お客さんの立場で考えれば商品そのものではなく、商品を使うことで得られる価値です。

ドラッカーは 現代の経営[上](P F ドラッカー, 上田惇生) という本で次のように指摘しています。


企業が何かを決定するのは顧客である。財やサービスへの支払いを行うことによって、経済的な資源を富に変え、ものを商品に変えるのは顧客だけである。

企業が自ら生み出していると考えるものが重要なのではない。特に企業の将来や成功にとって重要ではない。顧客が買っていると考えるもの、価値と考えるものが重要である。企業が何であり何を生み出すかを規定し、企業が成功するか否かを決めるのは、それらのものである。

顧客が企業の土台として企業の存在を支える。顧客だけが雇用を創出する。社会が企業に資源を託しているのは、その顧客に財とサービスを供給させるためである。

引用の中にあった 「企業が生み出しているもの」 は商品やサービスのことです。

ドラッカーはこれは重要ではないと言っていて、大事なのは 「顧客が買っていると考えるもの」 と 「価値だと考えるもの」 であると書いています。

価値とは 「商品の先」 にあります。商品やサービスは、その先にどんな価値があるのか。誰にとって価値があるものなのか。この問いはマーケティングで常に意識しておきたいことです。


まとめ


今回はグミの話題を取り上げ、インターネット的やドラッカーの話ともつなげてマーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 商品がもたらす波及的な価値
  • ドラッカーは、「企業が自ら生み出していると考えるものが重要なのではなく、顧客が価値と考えるものが重要である」 と指摘した
  • お客さんにとっては商品そのもの以上に、使うことで得られる価値が大事。商品は手段
  • 自分たちの商品・サービスは 「誰に」 「どんな価値があるか」 。マーケティングでは徹底的に掘り下げよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。