投稿日 2023/02/15

八方美人を捨てる覚悟。「あちらを立てず、こちらを立てる」 を決めるのが戦略


今回のテーマは戦略です。

おもしろいと思った 「パーセプションの議論」 をご紹介し、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • パーセプションを変えることの意味
  • 八方美人を捨てる覚悟
  • 戦略の本質

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

お客さんの取捨選択


日経クロストレンドの連載記事 「パーセプション 市場をつくる新発想」 の連載第26回が 「金髪が似合わない」 を受け入れる 田端式パーセプション理解術 でした。

本田事務所代表の本田哲也氏と、元 ZOZO の執行役員で、現在は YouTube のチャンネルや会員制のコミュニティー運営、複数企業のマーケティング顧問を務める田端信太郎氏が、パーセプションについて議論した記事です。

パーセプション変容で求められるのは 「お客さんの取捨選択」 という話が興味深かったです。

田端 ただ、パーセプションをつくったり、変えたりするときには何を捨てるのかは重要なポイントだと思います。

今夏はキャンピングカーで米国を旅行していましたが、ある大手小売店の駐車場で車中泊をしようと計画をしていたところ、米国在住の友人からやめたほうがいいと強く忠告されました。その店舗はカリフォルニア州の田舎にある店舗でしたが、要はその小売店を進んで選ぶような層には危険な人物が多く含まれていると、僕の友人は認識しているわけです。

このパーセプションを変えようとすると、既存顧客を捨てなければなりません。

本田 その悩みはあります。例えば、ワークマンは基本的にはパーセプションの変容で成功した企業です。「#ワークマン女子」 などのブランドをつくることで、作業服から、機能服ブランドへと大きくパーセプションは変わりました。ですが、一部では 「自分たちの好きだったワークマンは変わってしまった」 という印象になっています。

これはあらゆる企業で起こり得ます。パーセプションが変わることで、喜ぶ人と離反する人の両方が現れますよね。

マーケターは都合よく新しい顧客をとりながら、既存顧客を守りたいと考えがちですが、両方を完全に成立させるのは難しい。ブランドの若返りを図りたいと考えたときには、既存の顧客を維持するのか、それとも新規の若年層の獲得に力を入れるのかといった、顧客のポートフォリオづくりにかかわるし、それは 「マーケティング戦略」 全体の話になります。

田端 八方美人で、全方位にいい顔をしすぎて、パーセプションがよく分からなくなるケースもありますね。CSR (企業の社会的責任) 、コンプライアンス、ガバナンスなどの中で、最低限のラインは守るべきですが、何を捨てるべきかは考えたほうがいいです。そもそも、パーセプションというのは社外からの見られ方の話ですよね。

本田さんと田端さんの議論は戦略とは何かに示唆があります。


学べること


では戦略の観点で学べることを掘り下げていきましょう。

戦略の本質


あらためて戦略とは何でしょうか?

結論から言えば、戦略とは目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごとです。

ポイントは 「やらないこと」 にあります。やらないことを明確にするからこそ残ったやることに注力できます。戦略はやらないことを決めるためにつくると言ってもいいくらいです。

八方美人を捨てる覚悟


戦略の話は先ほどのパーセプションの設定に通じます。やらないこととして向き合うお客さんを決めることが大切です。ここがブレて八方美人を目指してしまうと、自分たちのポジショニングがあいまいになります。

人は誰しも 「自分は誰からも嫌われたくない」 と思うもので、ビジネスでも同じです。

しかしビジネスやマーケティングではターゲットとなるお客さんを絞り、八方美人を目指さない覚悟を持てるかです。ターゲット顧客を決めるとはターゲット以外のお客さんには向き合わないということです。

 「あちらを立ててこちらを立てない」 


マーケティング戦略として 「やらないこと」 を明確にし、このお客さんはターゲットから外すと決めるからこそ残った本当に大切にしたいお客さんが定まります。

考えられる全ての人または法人に対応するのは現実的ではありません。

  • 何をやって、何をしないのか
  • 捨てるものは何か

日本語で 「あちらを立てればこちらが立たず」 ということわざがありますが、「あちらを立てず、こちらを立てる」 を決めるのが戦略では大事です。


まとめ


今回はパーセプションの議論から、戦略に学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 戦略の本質
  • 戦略とは、目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごと
  • やらないことが明確になると、やることに注力できる。戦略はやらないことを決めるためにつくる
  • マーケティング戦略で 「やらないこと」 を明確にし、このお客さんはターゲットから外すと決めるからこそ、大切にしたいお客さんが定まる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。