#マーケティング #営業 #組織開発
あなたの会社では、営業とマーケティングはうまく連携できているでしょうか?
営業とマーケティングの2つの部門が別々に動き、本来の力を発揮できていないことがあります。
そこで今回はリクルートの 「Air ペイ」 の事例をもとに、営業とマーケティングが相乗効果を生み出し、ビジネスの成果を最大化する方法を探っていきます。
部分最適ではなく、全体最適によって営業とマーケティングの理想的な関係と、実現するための具体的なポイントを考えます。
リクルートの決済サービス Air ペイの営業活動
リクルートが提供しているキャッシュレス決済サービスが 「Air ペイ」 です。
Air ペイは、店舗にキャッシュレス決済端末を導入してもらうことを前提としたサービスです。Air ペイに限らず、こうした消費者のインフラとなるようなサービスは、導入が先か活用されることが先かという 「卵と鶏」 のような関係にあります。
そこでリクルートはまずは多くの店舗での導入を優先しました。テレビ CM を中心に大規模な広告でサービスの存在を周知。並行して社内で AI が生成する見込み顧客リストをもとに積極的な営業を仕掛けました (参考情報) 。
広告という 「空中戦」 で認知を獲得し、店舗への直接営業という 「地上戦」 で地道に一店ずつ契約し導入を促していったわけです。
目指したい営業とマーケティングの関係
リクルートの Air ペイの事例は、抽象化すればビジネスにおいて営業とマーケティングの活動でいかに相乗効果を発揮するかという視点で示唆に富みます。
では、営業チームとマーケティングチームが良い関係性を築くためには、どうすればいいのでしょうか?
それぞれの役割とその本質を理解することが、連携を円滑にする第一歩になります。まずは営業の役割から順番に見ていきましょう。
営業の役割
営業の役割は製品やサービスを直接顧客に販売し、売上を得ることです。お客さんとの一対一の対話を通じて、お客さんのニーズを理解し、適切な製品やサービスを提供することが求められます。
営業の主なやることには、お客さん (主に小売や卸などの流通) との直接的なコミュニケーション、製品やサービスのデモンストレーション、契約の締結などがあります。これらの活動から営業はビジネスに直接的な収益をもたらします。
マーケティングの役割
一方のマーケティングの役割は、市場のニーズを理解し、製品やサービスの価値を広く伝えることです。
マーケティングは、マーケティングリサーチで顧客や競合、市場トレンドを理解し、広告や PR を通じて製品やサービスの認知度を高め、新しいお客さんを獲得し、既存のお客さんも維持することを目指します。
マーケティングは、市場調査、広告キャンペーンの企画と実施、ブランドイメージの構築などを行います。これらの活動によりマーケティングは長期的なビジネスの成長を支え、新しいお客さんを引き寄せる役割も果たします。
サッカーでたとえると
営業とマーケティングの役割をサッカーにたとえれば、営業は最前線でゴールを狙う FW 、マーケティングは FW にアシストし、時には自らゴールも狙う MF としてゲームをコントロールする役割です。
マーケティングの要素の1つである広告や SNS という空中戦にしか目が向いておらず、成果に一喜一憂している状況というのは、サッカーの中盤で MF のプレイヤーだけが自分たちの華麗なパス回しに酔いしれているようなものです。FW は蚊帳の外で、これでは観戦しているサポーターは興ざめしてしまうでしょう。
大事なのは、全員でのサッカーからゴールを入れて点を取ることです。MF から FW へボールをつなげてこそ、つまり認知や購入意向を上げるマーケティング施策は、製品やサービスを直接的にクライアント企業に買ってもらう営業活動に活きるのです。
営業とマーケティングがそれぞれ別々に活動するのではありません。重要なのは、両者が連携し、お互いにパスをつなぎ合わせてビジネス全体のゴールを目指すことです。お互いの役割を理解し、尊重し合いながら共同で動くことで、部分最適ではなく全体最適が実現しビジネスに成功をもたらします。
部分最適ではなく全体最適の実現へ
営業とマーケティングは同じ目的地を共有しているはずなのに、部門が違うことで足並みがそろわないこともあります。
リクルートの Air ペイの事例が示すように、広告などのマーケティングコミュニケーション (空中戦) で存在感を高めたあと、店舗への営業活動 (地上戦) でクロージングにつなげるには、会社全体で全体最適をつくることが大事です。
では最後のパートでは、営業とマーケティングの連携を高めて全体最適を実現するために必要なポイントを見ていきましょう。
共通の目的設定
営業とマーケティングが一体となり、共通の目的に向かっていくことが重要です。営業とマーケティングの間で共通のビジョンと目標を設定することがスタートラインになります。
会社全体として、いつまでに何を達成しようとしているのか、それに対して営業とマーケティングはそれぞれどんな形で貢献できるのかをともに議論し、共通認識として言語化します。
リクルートのケースでも、キャッシュレス決済の導入を増やすことで事業を拡大するという共通のビジョンがありました。
役割と責任の明確化
次に、お互いの役割と責任をはっきりさせることが重要です。
マーケティング側はどこまで施策を行い、営業がどこからバトンを引き継ぐのかといった線引きを大まかにでも決めておきます。
明確な役割と責任範囲がないと、例えば広告キャンペーンを実施するタイミングと営業活動を強化するタイミングがズレたり、広告を見て問い合わせが来た後の見込み顧客の対応をどちらがどこまで対応するかなど、お互いの守備範囲が曖昧になります。
両部門が一体感を持ち、それぞれの役割を果たせるようにして認識を合わせ、決めた後も適宜修正を続けることポイントです。
トップのコミットとサポート
営業とマーケティングの現場でメンバー同士が歩み寄ってのボトムアップに加え、トップからのコミットとサポートも不可欠です。
経営層が両部門の連携の重要性を認識し、全社的な一枚岩になるための協力する文化の醸成をリードするといいでしょう。例えば、部門間の利害調整が現場では難航する場合は、両部門の責任者や社長が間に入り、トップでの合意を得るなどが時には必要です。
コミュニケーションの強化
営業とマーケティングの連携を円滑にするためには、コミュニケーションの強化も欠かせません。
両部門が集まる定期的なミーティングに加え、顧客管理ツールなどの社内ツールを共用します。進行中の案件や施策についての透明性を高め、随時フィードバックを交換できる環境を整えるといいでしょう。
お互いの部門で起こっている状況を共有し合います。何か問題が生じたのであればすぐに営業とマーケティングが集まり解決するミーティングを開催するなど、コミュニケーションの強化がお互いにとってメリットがある体制をつくります。
リクルートの例でも、営業活動の中で得られた情報を AI にフィードバックし、マーケティング施策に活かすという接続が整備されているとのことです。こうした仕組みがあれば、営業での見込み顧客の反応や導入検討の実態をマーケティングがタイムリーに把握でき、次のマーケティング施策に反映させやすくなります。
成功・失敗事例の共有
営業とマーケティング部門の連携の成功事例を共有し、協力体制が良い方向に向かっている機運を高めるといいでしょう。
成功例だけではなく、うまくいかなかった失敗事例からも改善を続けることが有効です。成功事例をみんなで学ぶのはもちろんですが、失敗事例こそ早めに共有して改善を図るのが大事です。
リクルートも、商談内容を録音し全社で共有する場を根付かせるなど、成功パターンだけでなく失敗も含めて学び合う仕組みを持っています。営業とマーケティングが協力し合い、より良いアプローチを編み出していけることでしょう。
営業とマーケティングの連携を深めることは、一朝一夕に成し遂げられるものではないでしょう。お互いの継続的な取り組みと忍耐も求められますが、うまくいけば、企業全体や事業への恩恵は計り知れません。
リクルートの Air ペイのように、空中戦と地上戦を組み合わせた強力なマーケティングと営業の体制が実現できるはずです。
まとめ
今回はリクルートの事例を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 営業は顧客との直接的な設定から売上をつくり、マーケティングは市場・顧客の理解と認知の獲得、ブランド構築を担う
- 営業はサッカーの FW 、マーケティングは MF のような関係。連携してはじめてゴール (成果) に結びつく
- 営業とマーケティングの連携には、共通の目的やビジョンを共有し、お互いの役割と責任範囲を明確にする
- 両部門のトップのコミットメント、部門間での情報共有の仕組みを整え、継続的なコミュニケーションの場が全体最適の土台をつくる
- 成功・失敗事例を部門を超えて共有し、全社で学び合う文化を育てることにより連携の質が高まる
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