#マーケティング #経営 #本
中学生がクラスメイトと 「株式会社」 を立ち上げ、ビジネスの楽しさと難しさを体感する。物語を読み進めるうちに、経営の基礎が自然と身についてしまう。
そんな一冊が、13歳からの経営の教科書 - 「ビジネス」 と 「生き抜く力」 を学べる青春物語 (岩尾俊兵) です。
今回は本書について、① あらすじ、② テーマ、③ ビジネスパーソンが学べること、④ 読んでの所感の4つに分けてご紹介します。
あらすじと物語の展開
中学生が設立した株式会社
この本の主人公は中学1年生のヒロトです。
ある日、学校の図書室でヒロトは偶然見つけた古びた本 「みんなの経営の教科書」 を手に取ります。興味をそそられるまま読み始めます。
本には、ビジネスの基本や経営の心構えがわかりやすく書かれていました。自分でもビジネスができるかもしれないと思い立ったヒロトは、放課後の時間や休日を使ってさっそく行動を開始します。
最初は自分で安く買ったお茶などの飲み物、学校で育てた野菜など、身近なモノをどうやって売るかにトライする小さな一歩でした。商売が成立し、ビジネスのおもしろさを知ったヒロトは、これは一人でやるより仲間と取り組んだほうが楽しくてもっとうまくいくかもしれないと思いはじめます。
そこでヒロトはクラスメイトを巻き込み、まるで本物の株式会社のように自分たちで組織的にモノを仕入れて販売し、利益を管理したり、株式を発行するなどの会社経営を始めました。
誕生した会社の名前は 「放課後株式会社」 。ヒロトを社長とし、副社長や広報担当取締役を置くなど、クラスメイトたちのそれぞれの得意分野を活かしながら、本格的なビジネスに挑戦していきます。
地域や社会を巻き込むビジネス
放課後株式会社の合言葉は 「なんでも、どこでも!」 です。自分たちだけではなく、地域を巻き込んだ事業展開へと活動の幅は拡大していきました。
例えば、第五章に登場する 「ゴミ買います!」 というユニークなサービス。地域の住民が不要だと感じるゴミを買い取り、ゴミを資源として再活用し販売するビジネスです。廃棄物という社会問題の解決にも一役買うサービスは、やがては同じようなことをやる人たちも増え、ムーブメントを起こします。
会社経営の難しさと成長
しかし、順風満帆に見えた放課後株式会社にも危機が訪れます。ビジネスが大きくなるにつれ、悪意を持った第三者がヒロトたちの会社を乗っ取ろうと画策するなど、仲間たちとのチームワークがゆらぎます。
そんな窮地で登場するのが、ヒロトたちのバイブル本となっていた図書室でヒロトが発見した 「みんなの経営の教科書」 の著者。彼はある著名な経営者でした。ヒロトたちは助言や経験に学びながら、会社経営の危機を乗り越えていきます。
ラストシーンでは、一連の経験を通じて成長したヒロトが 「経営とは何か」 、「仲間と力を合わせることの意義」 を理解する姿が描かれます。物語の終盤に響く 「人は誰だって自分の人生を経営している」 という言葉が読者の胸にも残り、爽やかな読後感とともに物語は幕を閉じます。
テーマと教訓
本書の大きなテーマは 「経営とは人を幸せにすること」 、そして 「誰もが自分の人生の経営者である」 というメッセージです。
経営とは
著者は、経営学の視点から 「経営とは目の前の人を幸せにするために価値を提供すること」 とし、物語を通じてヒロトたちがその意味を体感していくプロセスが描かれます。
ヒロトたちが始めた自分たちのビジネスでお客さんの笑顔を間近に見るたびに、ビジネスは人々を喜ばせるものという本質を学んでいきました。
また、物語の中で繰り返し示されるのが 「自分自身の人生を経営する」 という考え方です。
普通の中学生だったヒロトが勇気を出して行動し、友人やクラスメイトと手を取り合いながら挑戦と失敗を経験する。そこから得た学びは 「経営 = 会社経営」 だけではなく、「経営 = 自分の人生をどう舵取りするか」 といった生き方全般に通じる普遍的なものでした。
起業家精神
ヒロトの行動、クラスメイトたちがビジネスに挑戦する姿は、起業家精神 (アントレプレナーシップ) の大切さを示してくれます。
特別な才能があったわけではないヒロトが、純粋な興味や自分のやりたい気持ちを原動力に行動をし、学びを深め、仲間と力を合わせながらゼロからビジネスを築き上げていく。この過程を読むことで、まずやってみようと背中を押してくれます。
失敗しても学びがある、やりたいことがあるならやってみようというポジティブなメッセージが伝わってきます。
ビジネスパーソンが学べること
本書は中学生向けに書かれた小説仕立てのビジネスの入門書ですが、大人のビジネスパーソンも学べるポイントが数多く盛り込まれています。
ビジネスアイデアの見つけ方
ヒロトが最初に取り組んだのは、身近で自分でも買える飲み物や、学校の授業でクラス全員が育てた野菜を売るかという商売でした。
まずは身のまわりのできるところから始めてみるというアプローチは、起業や新規事業の世界でよく行われる方法です。本書の解説パートでもフリーマーケットで小さなお店を出してみるなど、初心者でも取り組みやすいビジネスの例が紹介されています。
ビジネスのアイデアは自分の近く、日常の中にその種が眠っていたりします。いきなり大きなビジネスを狙うより、まずは目の前の一歩に取り組むことの重要性を認識させられます。自分が普段感じた違和感や気になったこと、家族や友人・同僚の困りごとなど、少しのアンテナからビジネスアイデアは見つけられるでしょう。
価値の発見
物語の中で登場する 「みんなの経営の教科書」 で登場するのが、「価値は人によって異なる」 という視点です。
たとえば 「自分には一円の価値もないものでも、別の人にとってはお金を出してでも欲しいものになりうる」 という実例が出てきます。ここには需要と供給のギャップをビジネスに変えるおもしろさが詰まっています。マーケティングで重要な 「相手が本当に欲しい価値は何なのか」 という問いにもつながります。
他にも 「500ml の水が100円で売られている横で、2L の水も100円なのはなぜなのか」 といった身近な例から、「付加価値をどのようにつけるか」 、「価格はどう決まるか」 といった商売の根幹のところが平易な言葉で説明されています。
読者は、あらためて自分の会社が提供する商品・サービスの価値を捉え直すきっかけになるでしょう。
継続するビジネスのつくり方
ビジネスは一度軌道に乗せればあとは勝手にうまくいくものではありません。持続的に継続させることが大事です。
この本の物語では、小さな販売事業から 「ゴミの買い取り・再活用サービス」 へと発展させる場面が象徴的です。顧客ニーズだけでなく社会課題に合わせて、商品やサービスを柔軟に変えていくという経営判断はリアルなビジネスに通じます。
捨てられたゴミを買うというサービスは突拍子もない内容に見えるかもしれませんが、誰も手を付けていない事業領域への挑戦は、他とは違う独自のビジネスになり得ます。
会社経営を持続可能なものにするストーリーを追体験するうちに、自分のビジネスに置き換えるとどうなるかと考えることで、読者にも刺激になります。
読んでの所感
本書の構成は大きく 「物語パート」 と 「解説パート」 に分かれています。小説のストーリーを楽しみながらビジネスの知識が頭に入る構成です。
中学生を主人公とした青春物語の要素を味わいつつ (恋愛要素はないですが) 、要所要所で経営やマーケティングの基本が解説されます。難しい用語が並ぶビジネス書が苦手に思う方でもスムーズに読み進められるはずです。
本のタイトルが 「13歳からの経営の教科書」 とあるように、中学生や高校生にビジネスの仕組みを学ばせたい親にとってはうってつけです。一方で、中学生向けと侮ることなかれという感じで、大人にも十分ためになる内容です。
特に 「人は誰だって自分の人生を経営している」 という言葉は的を射ていて、普段ビジネスに携わる大人にはハッとさせられます。
物語のクライマックスでは、主人公のヒロトたちが直面する会社の乗っ取りへの危機をどう乗り越えるのか、大人の経営者がどうアドバイスするのか、中学生だからこそ陥ったピンチという側面もありますが、同時に素直さや仲間を信じる気持ちといった若さゆえの純粋さも描かれます。
実践的な学びと物語のおもしろさが合わさっているため、小説としても楽しめ、経営やビジネスの基礎も学べるという点が本書の魅力です。
まとめ
今回は、書籍の 13歳からの経営の教科書 - 「ビジネス」 と 「生き抜く力」 を学べる青春物語 (岩尾俊兵) を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 「13歳からの経営の教科書」 は、中学1年生のヒロトが 「みんなの経営の教科書」 との出会いをきっかけに、クラスメイトと放課後株式会社を設立し、様々なビジネスに挑戦する物語
- 身近なところからビジネスを始め、価値の発見や継続的なビジネス展開など、実践的な経営やビジネスの基礎知識、起業家精神を学べる
- 本書の中心メッセージは 「経営とは人を幸せにするために価値を提供すること」 と 「人は誰もが自分の人生の経営者である」 。小説の物語を通じて考えさせられる
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