#マーケティング #マーケティングリサーチ #調査設計
消費者調査は実施したけれど、報告書が社内のフォルダに眠ったまま...。
データはたくさん集めたけれど、次の一手が見えてこない...。
こんな経験はないでしょうか?
少なくない企業がマーケティングリサーチに時間とコストをかけながら、その成果を活かしきれていないのが現実です。
本当に価値のあるリサーチとは、ただ単に 「知れて良かった」 で終わるのではなく、「次に何をすべきか」 に少なくとも示唆を出すものです。
今回は、マーケティングリサーチを情報収集で終わらせず、ビジネス課題の対処への貢献、次の一手に直結させるためのポイントを解説します。
マーケティングとマーケティングリサーチの関係
マーケティングとマーケティングリサーチは切り離せない存在です。
マーケティングの目的があって、そこには解決したい問題が生まれます。マーケティングリサーチは、その問題解決のために必要な情報を提供し、マーケティングを次のアクションへと導く役割を担います。
逆に言えば、マーケティングリサーチは 「ただ調査をして知れて良かった」 で終わらせるものではないということです。大事なのは 「What to do next」 というネクストアクションへつなげることにあります。
マーケティングとマーケティングリサーチの関係を流れとして整理すると、次のようになります。
- 設定されたマーケティングの目的がある
- その目的を達成するためには解決すべき問題がいくつか存在する
- 問題解決にはマーケティングリサーチが必要と判断される
- マーケティングの問題解決につなげることを目的にマーケティングリサーチを行う
- リサーチからの情報 (分析結果, 示唆, 提言) をマーケティングに提供する
- マーケティングでの意思決定に活用される
- リサーチが問題解決の一助となり、マーケティングの目的達成につながる
こうしたマーケティングとマーケティングリサーチの連携が実現してこそ、ビジネスはスムーズに動きます。
マーケティングリサーチからの情報や示唆・提案が正しく活用され、マーケティング戦略に落とし込まれ、施策につながる――。この流れがうまく機能すれば、リサーチの結果は意思決定や次のアクションを促進することができるのです。
マーケティングリサーチ
ではここからは、マーケティングリサーチに焦点を絞ってさらに掘り下げていきます。
マーケティングリサーチで重要なのは、調査すること自体を目的化しないことです。やみくもにデータを集めても、そのデータからどんな意味合いを抽出し、次に何に活かすかが曖昧なら、結局は社内のフォルダに眠ってしまうだけでしょう。
では、そうならないためにはどうすればいいのでしょうか?
リサーチ課題を明確にする
最初にやることは、自分たちのビジネスやマーケティングの課題を明確にすることです。ぜひ 「うちの会社のビジネスや商品は、今どんな問題を抱えてるんだろう?」 と考えてみてください。
その課題に対処するために調査が必要だと判断できて、はじめてマーケティングリサーチの出番が来ます。マーケティングリサーチは、その前提となるビジネスやマーケティングでの課題が明確になってこそ、意味のあるものになります。
課題の明確化のための質問
では、ビジネスやマーケティングの課題を明確にするには、具体的にどんなことを考えればいいのでしょうか?
自分自身やチームに投げかけてみるといい質問をいくつか紹介します。
- 今、うちのビジネスやマーケティングの一番の悩みって何?
- その悩みを解決するには、どんな情報が必要なんだろう?
- 新しいお客さんを増やしたいのか?それとも、今のお客さんにもっと買ってもらいたいのか?
- 調査をすることで、それを次の何に活かすのか
こんなふうに具体的に考えてみると、課題が見えてきます。
調査結果の全社的な活用
さて、調査をしたら終わり...、なんてことはありません。せっかく集めたデータをいかに意味のある情報に変え、示唆を抽出するかが重要です。
調査結果は活用してこそ意味があります。意思決定の判断材料とし、ネクストアクションとして決めたことを実行に移すことにより、初めて調査はビジネスに貢献できます。調査結果を営業やお金を管理する部門など、他の部署とも共有してみてください。そうすることで、マーケティングリサーチは会社全体に貢献できます。
たとえば、商品の良さを卸売業者や小売にわかってもらうためにデータを使うと、営業活動がスムーズになったり、効果的な宣伝方法を考え出せたりすることができます。
マーケティングリサーチの企画と調査設計
では、具体的にどのように調査を企画・設計をすれば、次のアクションまでつながるマーケティングリサーチができるのでしょうか?
ポイントはマーケティングリサーチの企画段階でつくる調査設計書にあります。調査を始める前にしっかりと計画を立てることで、マーケティングに貢献できるリサーチにできます。
調査設計をつくる際に整理する全体像は次のとおりです。
- 調査の背景となるビジネスの置かれた状況
- ビジネスが対処すべき課題、解決すべき問題点
- マーケティングリサーチの目的
- マーケティングリサーチ課題
- 各課題に対する現時点での仮説
- 調査対象者や手法など
- 結果のアウトプットイメージ
- マーケティングリサーチ結果や活用イメージ
- 想定するネクストステップ
- リサーチ成功基準
- スケジュールや予算
では順番に見ていきましょう。
調査の背景となるビジネスの置かれた状況
まず、「今、自分たちのビジネスはどんな状況にあるんだろう?」 と現状把握をするところからです。
市場の動き、ライバルの競合他社の動向、景気の影響、お客さんの行動や気持ちの変化など、色々な要素があります。これらをしっかり把握することで、現状への認識を客観的に捉えます。
ビジネスが対処すべき課題、解決すべき問題点
次に、「ビジネスが今直面している問題って何だろう?」 と具体的に考え、掘り下げます。
たとえば売上が伸び悩んでいる、新しいお客さんが増えない、顧客理解の解像度が粗い、お客さんの満足度が低いなど、色々な事象があるかもしれません。これらの問題をはっきりさせることで、解決するための課題に焦点が定まります。
マーケティングリサーチの目的
ここまでをマーケティングリサーチの前提として、マーケティングリサーチの目的を定めます。
「この調査で何を明らかにしたいのか?」 、「調査をすることでビジネスやマーケティングにどう貢献するのか」 という調査目的 (調査の存在意義) を言語化します。
新しいお客さんの文脈やニーズを知りたいのか、今のお客さんにもっと愛着を持ってもらいたい、あるいは、新商品の評判を知りたいのか。そして、得られた結果や示唆を何に活かすのか。調査の意図がはっきりしているほど、ビジネスの課題に貢献する調査になります。
マーケティングリサーチ課題
マーケティングリサーチの目的を明確にしたら、「その目的を達成するために、具体的に何を調べればいいのか?」 というリサーチ課題 (Research questions) を整理します。
たとえば、ターゲットとなる市場の特徴、お客さんが商品を買う理由、競合他社の動向などです。これらのリサーチ課題は、できるだけ具体的で測定可能な形に言語化し、構造化するのがポイントです。
各課題に対する現時点での仮説
課題とは "問い" です。そして問いとセットで持っておきたいのが、「きっとこうなのではないか」 という仮説 (現時点での最もそうであろう仮の答え) をつくることです。
仮説があることで、調査のフォーカスが定まり、調査データの分析でより一歩深めた考察につながります。
調査対象者や手法など
ここまでの調査背景 (ビジネス課題) 、調査目的、調査課題と仮説を受けて、調査の具体的な計画を立てます。
誰を対象に調査するのか?アンケート?インタビュー?それとも観察調査か?何人くらいに聞くか?どのくらいの期間で行うか?これらについて細かいところまで詰めていきます。
結果のアウトプットイメージ
調査結果をどんな形で報告するかまで、事前に想像しておくといいです。
グラフやチャートを使った見やすい報告書か、それとも詳しいドキュメントでの分析レポートかなどです。アンケートやインタビューの調査を走らせる前に、調査結果の見せ方を考えておくことで、調査でどこまで目指すかが視覚的にイメージできます。
マーケティングリサーチ結果や活用イメージ
調査結果の活用イメージも事前にクリアにしておきます。調査結果を何に活用するかです。
たとえば、顧客グループの対応優先度の見直し、新商品の改良案、マーケティングコミュニケーションへの反映などです。マーケティングリサーチから得られた調査結果をどう実際のビジネスに活かすか、それはビジネス課題に貢献できるかを事前にクリアにしておくことが重要です。
想定するネクストステップ
活用イメージに加え、調査結果が出たら次に何をするかという具体的な行動計画も考えておきましょう。
新しいキャンペーンを始める、商品のパッケージやコンセンプトを決めるなどです。活用イメージからさらに 「次のアクション」 までを事前に明確にし、調査を始める前に関係者感で合意をとっておきます。
リサーチ成功基準
調査がうまくいったかどうかをどうやって判断するかという 「成功基準」 も、事前に決めておきましょう。
リサーチ成功基準があることで、調査の成果を客観的に評価できます。
スケジュールと予算
最後に、調査のスケジュールと予算を精査します。
いつまでに誰が何をするかのタイムラインを作り、予算内で効率よく調査を進める計画を立てましょう。スケジュールと予算をしっかりと管理することで、調査がスムーズに進みます。
以上のように、マーケティングリサーチを企画し、設計する際には 「問題解決」 と 「ネクストアクション」 が常にセットであることを意識することが大切です。せっかく時間とお金をかけて調べたのに、何に活かされるのかが不透明だと 「知ってよかった」 だけで終わってしまいかねません。
だからこそ、調査の前段階でビジネス課題や活用方法、そして調査後にどう動くかまで考えておくことがポイントです。調査をする目的を常に忘れず、得られた結果を皆で共有し、施策の具体化へとつなげていくことこそがマーケティングリサーチのあるべき姿です。
まとめ
今回は、マーケティングリサーチの重要ポイントを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- マーケティングリサーチは、マーケティングへの問題解決や対処する課題に貢献するための手段。調査自体が目的化してはならない
- 調査を始める前に調査設計をつくる。ビジネス課題 (調査背景) 、調査目的、調査課題、課題への仮説、結果や示唆の活用方法、ネクストステップなどを明確にする
- 調査で得た情報は、単に知るだけでなく、マーケティングに活用してこそ価値が生まれる。次のアクションにつなげる
- リサーチ結果は具体的な意思決定やマーケティング施策に落とし込み、全社的な共有と活用を目指す
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