投稿日 2019/08/17

書評: 雑草はなぜそこに生えているのか - 弱さからの戦略 (稲垣栄洋) 。雑草の 「弱者の戦略」 から学べること




今回は、書評の記事です。

雑草はなぜそこに生えているのか - 弱さからの戦略 という本をご紹介します。





  • どんなことが書かれている本?
  • 一般的な雑草へのイメージは正しくない?
  • 雑草の 「弱者の戦略」 とは?
  • 雑草に学ぶ戦略思考

こんな疑問に答える内容でブログを書きました。


この記事でわかること


この記事でわかるのは、
です。

日本語では 「雑草魂」 という言葉がありますが、一般的な雑草のイメージは、本当の雑草の姿とは異なります。

雑草の戦略が興味深かったので、ぜひ記事を最後まで読んでみてください。仕事やキャリアへのヒントにもなると思います。


この本に書かれていること


この本を一言で言えば、雑草のことを戦略という視点でおもしろく読める本です。

雑草の 「弱者の戦略」 が興味深く、雑草の実態は知らないことばかりでした。仕事やキャリアにも示唆がある内容です。

以下は本書の内容紹介からの引用です。

「抜いても抜いても生えてくる、粘り強くてしぶとい」 というイメージのある雑草だが、実はとても弱い植物だ。

それゆえに生き残りをかけた驚くべき戦略をもっている。厳しい自然界を生きていくそのたくましさの秘密を紹介する。


雑草とは


いきなりですが、雑草と聞いてどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?

この本では雑草を、「望まれないところに生える植物」 や 「邪魔になる草」 であると書かれています。

雑草への捉え方でキーワードになるのは、様々な雑草に共通する特徴である 「弱い植物」 だということです。


競争から逃げてきた


雑草が弱いとは、どういうことなのでしょうか?

この本によれば、雑草は森林など他の多くの植物がいる環境では、生きていけないとのことです。

競争は大きく2つあり、いずれにも雑草は勝てません。


植物の競争
  • 日光の奪い合い。上へと伸びたり、枝葉を広げる
  • 地中の水や養分の奪い合い


自然界は激しい生存競争が繰り広げられていますが、雑草はこれらの競争に弱い植物なのです。

森林や山は豊かな環境ですが、一方で激しい競争の場です。

競争に弱い雑草は生きていくことができず、別の場所に生きることを選択しました。それが、道ばたや畑・田んぼなどの人間のいる環境です。雑草は、植物全体で見れば特殊な場所に逃れてきたわけです。

雑草は弱いからこその、弱者の戦略をとる植物なのです。


雑草の 「弱者の戦略」


雑草は豊かな環境という植物同士のレッドオーシャンから、他の植物がいないブルーオーシャンに移ってきました。

しかし、そこでは新たな戦いが待っていました。人間との戦いです。

人との戦いでも、雑草は真正面から戦うことを避けます。弱いからこその、一貫した戦略があります。


雑草の戦略
  • 種からすぐに芽を出さない。芽を出すタイミングはバラバラ
  • 踏まれても起き上がらない
  • 環境変化に素早く適応する


以下、それぞれについて解説します。


[雑草の戦略 1] 種からすぐに芽を出さない。芽を出すタイミングはバラバラ


雑草は種から芽を出すタイミングに多様性を持たせています。

種から芽を出すまでに時間をかけ、最適なタイミングを窺っているとのことです。一般的な野生の植物よりも、雑草はより複雑な発芽の仕組みを持っているそうです。

季節に従って規則正しく芽を出さないのは、雑草の生える環境には予測不能な変化が起こるからです。

また、出芽のタイミングをあえてバラけさせています。一斉に芽を出し、その後に人間に草取りをされてしまうと全滅してしまいます。


[雑草の戦略 2] 踏まれても起き上がらない


日本語には 「雑草魂」 という言葉があります。

雑草魂へのイメージは、しぶとい・あきらめないという粘り強いものでしょう。しかし、雑草の実際とこのイメージは異なります。

この本に書かれていておもしろいと思ったのは、踏まれた雑草は立ち上がらないということです。

踏まれたら、そのまま横たわっているのが雑草なのです。

なぜ立ち上がらないのかと言うと、立ち上がることにエネルギーを使うことは優先度が低いだからです。

雑草にとって大事なのは、いくら踏まれようが種子を残すことです。立ち上がることに余計なエネルギーを使うよりも、踏まれても種子を残すことに注力しているのです。


[雑草の戦略 3] 環境変化に素早く適応する


雑草が生息する環境は、自然界に起こる環境変化に比べて、変化が短期間に急激に起こります。

例えば、人間による除草です。根こそぎの草刈りが起こり得る環境では、全滅の可能性があります。

雑草の環境変化への素早い適応の事例でおもしろかったのは、ゴルフ場の例でした。

ゴルフ場ではコース内に、グリーン、ラフなどのエリアがあります。違いは、芝や草の高さです。ゴルフ場はコースの整備によって草の高さを変えるわけですが、その結果、雑草はグリーンやラフごとで、刈られる高さまでしか自分を伸ばさないようです。

自ら高さを合わせることによって、刈られずに生き延びます。


雑草の戦略と目的


雑草が一貫して 「戦わない」 という戦略なのは、目的が明確だからです。

雑草の目的は、種子を蒔いて子孫を残すことです。この目的を達成するために 「やること」 と 「やらないこと」 がはっきりしています。

他の植物と真っ向勝負をするのではなく、生きる場所を変え、環境に適応し、人間との向き合いでも正面から戦うことを避けています。

この本に書かれていたことで印象に残っているのは、「雑草魂とは、大切なことを見失わない生き方」 でした。


ナンバー1になるために


自然界の掟は、ナンバー1しか生き残れないということです。

それでも多種多様な生き物がいるのは、全ての生き物がどこかの部分でそれぞれがナンバー1だからです。棲み分けをすることによって、お互いにナンバー1を分け合っているのです。

ナンバー1かオンリー1か、という議論があります。

この本に書かれていた、なるほどと思ったことがあります。以下は本書からの引用です。

ナンバー1しか生きられない。これが自然界の鉄則である。

それでも、こんなにもたくさんの生き物がいる。つまり、すべての生き物が、どこかの部分でそれぞれナンバー1なのである。

ナンバー1であることが大事なのか?オンリー1であることが大事なのか?

この答えはもうおわかりだろう。すべての生物はナンバー1である。そして、ナンバー1になれる場所を持っている。この場所はオンリー1である。つまり、すべての生物はナンバー1であると同時に、オンリー1なのである。

(引用:雑草はなぜそこに生えているのか - 弱さからの戦略 (稲垣栄洋) )

ナンバー1であるために、自分がオンリー1になれる場所を見つけます。その結果が、ナンバー1なのです。


ビジネスやキャリアへのヒント


この考え方は、ビジネスやキャリアにもヒントがあります。

自分がオンリー1になれる場所はどこか、条件は何かです。

もう1つ思ったのは、「自分らしさ」 です。

自分らしさについては、自分自身が最も良くできることです。他人のことを気にするあまり、自分らしさを消してしまうのではなく、自分らしい状態でいられることを追求すればオンリー1になれます。自分らしさでは誰にも負けないので、ナンバー1です。


まとめ


今回は、雑草はなぜそこに生えているのか - 弱さからの戦略 という本をご紹介しました。





最後に今回の記事のまとめです。



この本を一言で言えば、雑草のことを戦略という視点でおもしろく読める本。
雑草の 「弱者の戦略」 が興味深く、仕事やキャリアにも示唆がある内容。


雑草とは、望まれないところに生える、邪魔になる草。様々な雑草に共通する特徴である 「弱い植物」 。雑草は森林など他の多くの植物がいる環境では生きていけない。
レッドオーシャンからブルーオーシャンに移ったが、今度は人間との戦いがあった。ここでも戦わない戦略を選択した。


雑草の 「弱者の戦略」 とは、
  • 森林や山は豊かな環境から、植物との競争がない道ばたや畑・田んぼなどの人間のいる環境へ移った
  • 種からすぐに芽を出さない。芽を出すタイミングはバラバラ
  • 踏まれても起き上がらない
  • 環境変化に素早く適応する


雑草が一貫して 「戦わない」 という戦略なのは目的が明確だから。
雑草の目的は、種子を蒔いて子孫を残すこと。この目的を達成するために 「やること」 と 「やらないこと」 がはっきりしている。


自然界の掟はナンバー1しか生き残れないこと。棲み分けをしてお互いにナンバー1を分け合っている。ナンバー1であるために自分がオンリー1になれる場所を見つけている。その結果がナンバー1。
ビジネスやキャリアにもヒントは、自分がオンリー1になれる場所はどこか、条件は何か。他人にはならずに、自分らしくある。




雑草はなぜそこに生えているのか - 弱さからの戦略 (稲垣栄洋)

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。