投稿日 2021/04/09

狙撃王パイロットの OODA ループに学ぶ、マーケティングで大切なこと


今回は OODA ループとマーケティングです。

✓ この記事でわかること
  • OODA ループとは?
  • アメリカ空軍の 「狙撃王」 の秘密
  • 狙撃王からビジネスに学べること
  • マーケティングへの応用 (成功のカギを握るのは?) 

記事の前半では、空軍パイロットで 「狙撃王」 と呼ばれるような優秀なパイロットの秘密を OODA ループから紐解きます。

後半は狙撃王の OODA ループに学ぶ、マーケティングで大切なことを掘り下げます

ぜひ最後まで読んでいただき、お仕事での参考になればうれしいです。

OODA ループとは


まず最初にご紹介したいのは OODA ループです (ウーダループと読みます) 。

OODA ループとは、意思決定と実行のプロセスです。OODA は4つの頭文字です。

✓ OODA ループ
  • Observe (観察) : 情報を収集し観察する
  • Orient (状況判断) : 収集した情報を解釈し、意味合いを考える
  • Decide (意思決定) : 状況判断にもとづいて決断をする
  • Act (行動) : 実際の行動に移す


アメリカ空軍の 「撃墜王」 についての研究


OODA ループでおもしろいと思った話を紹介しますね。

以前に読んで興味深かったのは、書籍 「ユニ・チャーム SAPS 経営の原点 - 創業者高原慶一朗の経営哲学」 で紹介されていたアメリカ空軍の研究です。


空軍の空中戦では、いかなる状況でも必ず敵機を撃ち落とす 「狙撃王」 と呼ばれるようなパイロットが現れます。アメリカ空軍の研究目的は、空中戦での 「狙撃王」 と 「他の一般的なパイロット」 の違いを理解し、空軍の戦力向上に活かすことでした。


研究からの発見


パイロットが敵機を見つけ、攻撃または回避行動をするプロセスで、優秀なパイロットとそうではないパイロットとの比較研究から3つのことがわかりました。ここに OODA の4つが入っています。

✓ アメリカ空軍の研究結果
  • 敵機の観察段階 (Observe) で統計的に有意な差はない
  • 状況判断 (Orient) と意思決定 (Decide) の速さに有意な差がある ( ← ここがポイント!) 
  • 行動 (Act) では有意差はない

OODA ループの2つ目と3つ目の 「状況判断」 と 「意思決定」 で、パイロットの優秀さが決まるという研究結果です。

本書では以下のように書かれています。

適切な情報や戦術 (観察、状況判断、意思決定) を欠いた作戦行動はほとんど無意味であり、この OODA ループのサイクルをきちんと回し続けることが勝利の条件となっていました。

さらに素早い作戦行動 (状況判断と意思決定) により戦況を変化させ、敵がその状況に対応する前に次の行動を起こすことで、敵に 「対応するいとまを与えない」 ことが、勝利を約束するというのです。

* * *

狙撃王からビジネスへの示唆



ご紹介した研究結果で興味深いのは、パイロットの優秀さが決まるのは OODA ループの2つ目と3つ目の 「状況判断」 と 「意思決定」 でした。

ここから私たちは何が学べるでしょうか?

思ったのは、見ている目の前の事象は同じでも、そこから読み取る解釈や意味合いを得る 「洞察力」 の重要性です。

もう1つは、洞察した内容から意思決定をする 「決断力」 です。

ビジネスに当てはめればデータや情報を得た時に、行動や実行につながるまでのプロセスで他者 (他社) との差別化を図ることの重要性です。実行に移すまでの段階ですでに勝負がついてしまうのです。


OODA ループとマーケティング



狙撃王から得た示唆である 「洞察力と決断力の重要性」 をさらに掘り下げていくために、マーケティングで見てみましょう。

マーケティング活動を俯瞰すると OODA ループがきれいに当てはまります。

✓ マーケティングと OODA ループ
  • 市場, 顧客, 競合, 社内状況の現状把握 [観察]
  • 顧客課題と顧客インサイト (奥にある本音) , 社内外ステークホルダーの期待・思惑・動機の理解 [状況判断]
  • 戦略とマーケティング施策の立案 [意思決定]
  • 施策の実行, 売上・利益の評価, 各施策の効果検証 [行動]


マーケティングで大切なこと


OODA ループのポイントは2つ目の 「状況判断 Orient」 と3つ目の 「意思決定 Decide」 でした。

これらをマーケティングに当てはめれば、顧客理解から顧客課題を明確にし、顧客理解に沿っての戦略と施策立案です。

もちろん組織で実行やり抜くことも大事です。しかし、狙撃王パイロットが状況判断と意思決定に優れていたように、マーケティングの成功のカギを握るのは顧客理解と戦略実行策です。さらに突き詰めれば、マーケティングで大切なのは現状把握からの顧客理解です。


まとめ


今回は OODA ループとマーケティングについてでした。

最後に記事のまとめです。

OODA ループ
  • Observe (観察) : 情報を収集する
  • Orient (状況判断) : 収集した情報を解釈し、何を意味するのかを考える
  • Decide (意思決定) : 状況判断から決断をする
  • Act (行動) : 行動に移す

狙撃王からビジネスに学べること
  • OODA ループの2つ目と3つ目の 「状況判断」 と 「意思決定」 で、パイロットの優秀さが決まる
  • 見ている目の前の事象は同じでも読み取る解釈や意味合いを得る 「洞察力」 と、洞察した内容から意思決定をする 「決断力」 の重要性

マーケティングへの応用 (成功のカギを握るのは?) 
  • OODA ループのポイントである状況判断と意思決定をマーケティングに当てはめれば、顧客理解 (状況判断) から顧客課題に沿っての戦略と施策立案 (意思決定) 
  • さらに突き詰めれば、マーケティングで大切なのは現状把握からの顧客理解

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。