投稿日 2022/04/12

一点集中の 「ビヒダス ヨーグルト 便通改善」 に学ぶ、戦略の本質と戦略的になる方法

出典: 森永乳業

今回のテーマは戦略です。

✓ この記事でわかること
  • 森永乳業 「ビヒダス ヨーグルト 便通改善」 の売上が好調
  • 開発の背景と狙い
  • 人気要因は、ベネフィットの絞り込みとわかりやすい訴求
  • 戦略の本質と、「ビヒダス ヨーグルト 便通改善」 の戦略
  • 学べること

おもしろいと思ったヨーグルトを取り上げ、人気の理由を商品開発とマーケティングの視点で紐解きます。そこから戦略に学べることを解説しています。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ビヒダス ヨーグルト 便通改善


ご紹介したいのは、森永乳業のヨーグルト 「ビヒダス ヨーグルト 便通改善」 です。

出典: 森永乳業

好調な売上


以下は、日経新聞の記事からの引用です。

森永乳業の機能性ヨーグルト 「ビヒダス ヨーグルト 便通改善」 シリーズが好調だ。ドリンクタイプと固形の2種類を展開する。

希望小売価格はそれぞれ税抜き133円で、50 ~ 60代の女性が中心購買層だ。発売は2020年4月で初年度の出荷額は計画を 35% 上回った。さらに21年4 ~ 12月の出荷額は前年比7割増と好調に推移している。

開発の狙い


開発の背景は、様々なヨーグルトがある中で、消費者への明確な訴求をしないと自分たちの商品は選んでもらえないという課題意識からでした。

出した答えは、消費者が求めているのはお腹の調子を整えたいというニーズで、整腸作用に特化したヨーグルトにすることでした。

先ほどの記事には、次のように書かれています。

 「森永乳業の持つビフィズス菌を生かし、『整腸』に特化した商品ができないか」

マーケティング統括部の飯吉奨さんは、商品開発にあたってそう考えたという。店頭には様々な機能をうたうヨーグルトが並ぶが、飯吉さんは消費者がヨーグルトに強く求めるのは 「おなかの調子を整えること」 だと感じていたという。

機能性表示食品や特定保健用食品が食品や飲料に広がったことで、機能性ヨーグルト市場はかつての高成長が一巡し、伸び悩みつつあった。市場拡大とともに商品数が増えたことで、「より明確な機能性を訴求しないと、消費者に選んでもらえなくなった」 。

わかりやすい訴求


パッケージで、わかりやすい訴求をしています。

出典: 森永乳業

同じ記事から再び引用すると、

消費者が商品を選びやすいように、パッケージにはターゲットとする消費者と機能性を分かりやすく記載することを重視した。

 (中略)

 「ビヒダス ヨーグルト 便通改善」 では機能性表示食品として届け出るために工夫を凝らした。「便秘」 は疾病の名前になるため、表示が難しい点がハードルとなった。そこで社内で表現を繰り返し検討した結果、「大腸の腸内環境を改善し、便秘気味の方の便通を改善する」 との記載に落ち着いた。

 「便秘」 や 「便通」 といった言葉を、商品パッケージの前面に記載することに対しては、社内でも抵抗があったという。「商品を手に取りづらくなる」 、「買うのが恥ずかしい」 との意見も出たが、飯吉さんら開発チームは 「誰が見てもわかりやすいパッケージが重要だ」 と粘り強く説明し理解を得た。

ベネフィットの絞り込みと訴求


では 「ビヒダス ヨーグルト 便通改善」 の人気の要因を掘り下げてみましょう。

結論から言うと、ターゲット顧客とベネフィット (便益) を絞り込み、わかりやすい訴求をしたことです。商品名に 「便通改善」 とあるように、腸内環境を改善し便秘ぎみの人の便通を良くするという価値に特化しました。

ヨーグルトに持たせる効能を 「あれもこれも」 と詰め込むのではなく、「あれかこれか」 という引き算の発想です。ここに戦略の本質があります。


戦略の本質と、「ビヒダス ヨーグルト 便通改善」 の戦略


そもそも戦略とは何でしょうか?

一言で言えば、戦略とは、目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごとです。

ポイントは後者の 「やらないこと」 にあります。やらないことを決めて意志を持って捨て、残ったやることに注力するのです。

ここで 「ビヒダス ヨーグルト 便通改善」 に話を戻します。

 「ビヒダス ヨーグルト 便通改善」 を戦略の視点で捉えると、ターゲットとするお客を 「腸を整えたい」 「便秘を改善したい」 という人にして、ベネフィットを 「整腸作用」 と 「便通改善」 に絞りました。逆に言えば、これらのターゲット顧客とベネフィットの提供以外はやらないと決めたわけです。


学べること


では最後に、「ビヒダス ヨーグルト 便通改善」 から学べることを整理してみましょう。

一言で表現をすれば、学びは、「やらないこと」 を決めて 「やること」 に意識や時間を集中しよう」 です。戦略的な発想や行動をする重要性を学びとして残しておきたいです。

今回の事例で見たように、商品開発やマーケティングでも戦略は大事だし、個人のレベルでもそうです。個人のレベルとは普段の仕事やプライベートも含めてです。

あれもこれもと全てをやりたくなるのは誰しもそうですが、時間は、もっと言えば寿命は有限です。だからこそ 「やらないこと」 をまず決めて、「やること」 に集中するのです。


まとめ


今回は 「ビヒダス ヨーグルト 便通改善」 を取り上げて、戦略に学べることを見てきました。

最後にまとめです。

戦略の本質
  • 戦略とは、目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごと
  • ポイントは後者の 「やらないこと」 にある。やらないことを決めて、残ったやることに注力する

戦略的な発想や行動
  • 商品開発やマーケティングでは戦略は重要で、個人のレベル (普段の仕事や家庭でのプライベート) でも大事
  • 「あれもこれも」 と全てをやりたくなるが、寿命や時間は有限。だからこそ 「やらないこと」 をまず決めて、「やること」 に集中しよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。