投稿日 2022/04/22

カップラーメン用のスプーンの 「スクーン」 。優れた商品名は 「常識と芸術の間にある」 を体現したネーミング

出典: 家電 Watch

今回のテーマは、商品名です。

おもしろいと思ったスプーンを取り上げ、商品名の付け方でマーケティングの視点も入れながら学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • カップラーメン用のスプーン 「スクーン」 がおもしろい
  • 秀逸な商品名だと思った理由
  • 優れたコピーとは
  • 優れた商品名は 「常識」 と 「芸術」 の間にある

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

カップラーメン用のスプーン


今回ご紹介したいのは、「スクーン」 という名前のカップラーメン用のスプーンです。

出典: KOKUBO

スクーンの特徴


特徴は、スプーンとフォークが合体した形状で、穴のあいたスプーンの先がフォークになっています。


カップラーメンを食べている時に起こるのは、スープに麺や具が浮かんでいたり底に沈んでいて、箸やフォークでは取りにくいことです。箸で1つずつとるのは面倒だし、かといってスープごと飲むのはどこか身体に悪いように思え気が引けます。

この問題を解決してくれるのがスクーンです。先端のフォーク部分で麺を、穴のあいたスプーンでスープを飲まずに具だけを食べれます。カップラーメンの麺や具を最後まで食べたい時に便利なスプーンですよね。ちなみに、値段は参考価格で214円です。

商品名が秀逸


ではここからはスクーンについて、商品名に着目をして見ていきましょう。

スクーンという名前は 「すくう」 と 「スプーン」 の2つを足し合わせたものです。

スクーンは、使う人のベネフィット (便益) を的確に表すネーミングです。すくって最後まで麺や具を残さずに食べられるスプーンであり、「すくうスプーン」 という特徴を短く響き良く表現した商品名です。

スクーンという名前を聞いただけでは 「?」 がつくかもしれませんが、実際にスクーンを見たり特徴を知れば、「なるほど」 と思えます。


優れた広告コピーとは


ここで話を少しズラします。

ある本に書かれていた、優れた広告コピーとは何か話が興味深かったのでご紹介させてください。

本のタイトルは、広告コピーってこう書くんだ!読本 (谷山雅計) です。


この本で印象的だったことの1つは、「優れた広告コピーは "常識" と "芸術" の間にある」 と書かれていたことでした。

ここで言う 「常識」 とは聞いても当たり前と思うこと、「芸術」 とは聞いても何を言っているのか意味がわからないことを指します。

優れた広告コピーとは見たり聞いたりした時に、「それは当たり前」 (= 常識) でもなく、「何を言っているのかわからない」 (= 芸術) でもなく、ちょうどその中間にあるというわけです。広告コピーを見た時に、「そういえばそうだね」 と思えるものなのです。

✓ 常識と芸術の間
  • それは当たり前 [常識]
  • そういえばそうかも [広告コピー]
  • わからない [芸術]

広告コピーの役割は、それを見た時に相手に気づきを与えることです。優れた広告コピーは、言われて初めて、普段は意識の下に眠っているものを呼び起こします。


 「優れた商品名とは」 への応用


話を 「スクーン」 に戻すと、「優れた広告コピーとは何か」 の考え方は、商品名にも当てはまります。

今回の学びとして残しておきたいことは、「優れた商品名は “常識” と” 芸術” の間にある」 です。

前者の常識とは、例えば当たり障りのない名前、どこにでもあるようなひねりがない商品名です。芸術とは、名前を見たり聞いたりしても、なぜその名前なのか全くわからないものです。

常識と芸術の間にある商品名とは、見聞きすれば 「なるほど」 とか 「そういう意味か」 と納得感があり、腹落ちする名前です。スッと頭に入り記憶にも残りやすく、商品名だけで見込み客への訴求ができます。

よく 「名は体を表す」 と言われますが、今回ご紹介したスクーンの 「体を表す」 は麺や具をすくって最後まで残さずに食べられるベネフィットです。これを端的に商品名で表しています。

スクーンは 「良い商品名とは、常識と芸術の間にある」 のまさにの事例だと思い取り上げました。


まとめ


今回はカップラーメン用のスプーン 「スクーン」 をご紹介し、商品名についてマーケティングの観点から学べることを見てきました。

最後にまとめです。

優れた商品名とは
  • 優れた商品名は 「常識」 と 「芸術」 の間にある
  • 常識とは、例えば当たり障りがなく、ひねりがない商品名。芸術とは、名前を見たり聞て名前の意味が全くわからないもの
  • 常識と芸術の間にある商品名とは、見聞きすれば 「なるほど」 や 「そういう意味か」 と納得感がある名前。スッと頭に入り記憶にも残りやすく、商品名だけで見込み客への訴求ができる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。