投稿日 2022/04/26

パーパスがブレれないノースフェイスに学ぶ、ブランドの本質とブランドのつくり方

出典: YAMA HACH

今回のテーマは、マーケティングのブランドです。

✓ この記事でわかること
  • ノースフェイスの人気理由と存在意義
  • 高い視座からの事業方針
  • ノースフェイスから学べるブランドの本質とつくり方

人気のアウトドアのアパレルブランド 「ノースフェイス」 を取り上げ、ブランドで学べることを解説しています。ブランドとはそもそも何かの本質、ブランドのつくり方です。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ノースフェイスが描く世界観


今回の背景は、ある記事を読んでのことです。

ノースフェイス 「育ての親」 が語る会社の未来 - 体験型自然パークを事業として新たに展開へ|週刊東洋経済 Plus

ノースフェイスを展開するゴールドウインの社長へのインタビュー記事です。ノースフェイスの人気の要因、これからノースはブランドとしてどこに向かうのかを興味深く読みました。

記事のリード文を引用すると、

アパレル不況時代にもかかわらず、スポーツ衣料メーカーのゴールドウインの業績が右肩上がりで伸びている。牽引役は同社が国内での商標権を有する 「ザ・ノース・フェイス (以下ノース) 」 事業だ。

ノースはアウトドアブランドでありながら、とくに20 ~ 40代の若い世代からファッションブランドとしても支持され、毎年売り上げを伸ばし続けている。事業年商は700億円を超え、1ブランドで全社売上高の7割以上を稼ぎ出すまでになった。

事業の考え方


インタビューでは、ノースフェイスの事業をどのように捉えているかが語られていました。

―― ノース事業でとくに強く意識したことは何ですか?

喜んでもらえるいい商品を作って、一人でも多くのファンを増やすことをつねにいちばんに考えた。売り上げはそうした努力に対するお客さんの評価。その順序を間違えて、目先の売り上げを追うようになると事業はおかしくなる。この会社のかつての柱だったスキーの商売がその典型例ですよ。

昔のスキー業界は、ウェアや用具は毎年買い換えるものだというおかしな常識があった。壊れてもないのにそうやって新しいものを買わせることで、メーカーは毎年、大きな売り上げが立った。でも、そんな商売に継続性があるわけがない。

実際、スキーブームが下火になり始めたら、売れ残った大量の返品などで大きな損失を出し、たちまち事業自体が立ち行かなくなった。

そんな光景を社内で間近に見てきたので、僕は売り上げを追うことをキッパリやめたんです。自分たちがやっているアウトドアの商売では目先の売り上げを追ったりせず、あくまで健全で継続性のある事業を目指そうと。社長になった今もそうした考え方は変わっていない。

今後の課題


事業課題についても触れられています。再び記事から見てみましょう。

―― 今後の課題を挙げるとすれば?

モノを売るだけでなく、われわれがもっと自然に関与していくべきだと考えている。一人でも多くの人をアウトドア好きにする、それによって結果的に美しい自然を次の世代に残す。それがわれわれの最終的なミッションなので、そのために自分たちも行動を起こすべきだと。

そうした取り組みの1つとして、会社の創業の地である富山で、「プレイアースパーク」 と名付けた体験型自然パークを建設する。今、その用地の選定をしている最中で、2025年度末までの完成を目指している。

引用内にあった 「我々はもっと自然に関与していくべき」 というのが印象的でした。

一人でも多くの人がアウトドアを好きになってもらい、それによって結果的に美しい自然を次の世代に残したい。ここを自分たちのミッションと捉え、今後の課題に落とし込まれています。


高い視座からの存在意義


社長へのインタビューなので経営者の立場で語られていますが、インタビュー内容を通して伝わってくるのは、高い視座から事業を捉えていることです。商品の売上を追い求めていないとの発言があったように、売上はあくまで結果としてです。

ミッションと位置付けた 「次の世代に自然を残す」 があり、そのために1人でも多くの人に自然のことやアウトドアに関心を持ってもらう。そうした人たちにアウトドアで使うものとしてノースフェイスを選んでほしい。喜んでもらえる良い商品を作り、ファンを増やしていくという考え方です。

商品というレベルではなく、1つ上のアウトドアカテゴリーのレベル、さらにその上の 「自然を大切にする」 「次の世代に残す」 という高い視座に立っているのです。


ノースフェイスに学ぶブランド構築


ここまで見てきたノースフェイスから学べるのは、ブランディングです。

ブランドの本質


そもそもですが、ブランドとは何でしょうか?

これは私の一言の定義で、ブランドとは 「顧客からの好ましい感情が伴った商品やサービス」 です。数式で表すと 「商品 + 好ましい感情 = ブランド」 です。

好ましい感情とは、好き、共感、満足、誇り、憧れ、応援したいという気持ちです。これらの感情が深い商品やサービスほど強いブランドです。

ブランドのつくられ方


マーケティングの観点でブランドでのポイントは、ブランドとはあくまでお客さんの頭の中にある認識だということです。商品・サービスへの他にはない価値イメージが、提供者側ではなく買い手や利用者側の頭の中に残れば、ブランドになります。

人が商品やサービスに感情移入をする要因の1つは、商品・サービス、その企業の信念、持っている哲学、描いている世界観に共感することからです。

自覚はなく無意識的に共感されることもあります。言葉では説明できないものの、なんとなくではあるが確実に惹かれている何か (信念や世界観) があるからです。

Why からのブランディング


ノースフェイスの場合は 「アウトドアが好き」 「自然を大切にする」 「次の世代に自然を残す」 という大切にしている価値観やミッション (使命) がありました。これらは存在意義 (パーパス) で、自分たちの Why (なぜ存在しているのか) という根源的な部分です。

Why を明確にして自らが旗を立てる。ここに共感する人が現れ、価値イメージが形成され、その人たちの頭の中では他とは違う存在になり、商品やサービスはブランドになるのです。


まとめ


今回はノースフェイスを取り上げ、存在意義を明確にしてのブランドのつくり方を見てきました。

最後にまとめです。

ブランドの本質
  • ブランドとは 「顧客からの好ましい感情が伴った商品やサービス」 。商品 + 好ましい感情 = ブランド
  • 好ましい感情とは好き・共感・満足・誇り・憧れ・応援したい気持ち。これらの感情が深い商品やサービスほど強いブランド
  • ブランドとはあくまでお客さんの頭の中にある認識 (商品・サービスへの他にはない価値イメージ) 

Why からのブランディング
  • 自分たちの信念、持っている哲学、描いている世界観という Why を明確にして自らが旗を立てる
  • Why という存在意義 (パーパス) に共感する人が現れ、その人たちの頭の中で価値イメージが形成される。他とは違う存在になり商品やサービスはブランドになる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。