投稿日 2022/04/21

百貨店のスーツ販売員の 「R-PDCA 接客術」 に学ぶ、リピーターのつくり方


今回のテーマは、接客術です。

✓ この記事でわかること
  • ある百貨店のスーツ販売員の接客方法
  • 成功の秘訣は R-PDCA 接客術
  • リピーターのつくり方

おもしろいと思った、ある販売員の方の接客方法をご紹介し、マーケティングの視点も入れて学べることを書いています。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ある百貨店のスーツ販売員の接客


今回の話をしたいと思ったきっかけは、日経新聞の記事を読んだからでした。

お客の雰囲気や用途に合わせた提案


以下は、記事からの引用です。

京阪百貨店 (大阪府守口市) は、守口店 (同) 内で直営のセレクトショップ 「トラディショナルスタンダード」 を運営している。国内外の約50ブランドの衣料品や革小物を扱い、顧客自らが生地や型を選んで一点物を仕立てるスーツのオーダーメードにも対応する。

このショップの統括責任者で販売員とバイヤーも兼ねるのが橘勝世さん (41) だ。アパレル会社や職人のもとに自ら足を運んで商品を選び出す。豊富な知識や巧みな話術を生かして顧客の雰囲気や用途に合わせたコーディネートを提案し、常連客を増やしてきた。
出典: 日経

お店に来たお客さんの雰囲気だけではなく、スーツの用途 (使い方) に合わせて提案をしているとのことです。

具体的な接客方法


具体的にどのような接客なのかを、再び記事から引用します。

スーツに袖を通しながら首をかしげる男性を、橘さんは少し離れたところからじっと見つめる。「お客様を一目見ると、その人に似合う色やデザインのスーツがすぐに思い浮かぶ」 (橘さん) という。相手の髪形や瞳の色、体形などからイメージを膨らませ、身につけてもらいたいショップ内の商品を瞬時に導き出す。

ただそれらをすぐに薦めたりはしない。「日々の通勤」 や 「子どもの発表会」 など、スーツを着用する場所や目的を丁寧に聞き取るところから始める。同時に顧客の性格や雰囲気も把握し、当初思い浮かべた商品の中からさらに最適だと思える候補を絞りこむ。

接客では相手に合わせて言い回しも工夫する。例えば、既に買いたい商品がほとんど決まっているような客には、「このスーツ『は』いかが『でしょうか』」 と、やんわり別の提案をしてみる。逆にどれを選ぶべきか迷っている客には 「このスーツ『が』いい『です』」 と言葉で背中を押してみる、といった具合だ。

接客方法を整理すると、次のようになります。

✓ プロの接客方法
  • 来店したお客さんをまずは観察する (体型, 髪型, 瞳の色など) 
  • 薦めたい商品を店内から瞬時に導き出す
  • ただしすぐには薦めず、着用場所や目的を丁寧に聞き取る
  • 性格や雰囲気からはじめにイメージした商品候補の中から最適なものを選んで提案する
  • 伝え方で言い回しを工夫。例えば買いたい商品が決まっている人と決まっていない人で言葉の使い方を変える


R-PDCA 接客術


では、ここまで見てきたスーツ販売員の方の接客方法からの学びを、さらに掘り下げていきましょう。

一言で表現をするなら、学べるのは 「R-PDCA 接客術」 です。R-PDCA とは、PDCA の前に Research (調査する) を入れたものです。

今回のスーツ販売の接客に当てはめると、お店に入ってきたお客さんを、まずは少し離れたところから観察をします。体型や髪型、瞳の色をチェックするのがリサーチにあたります。

話しかける前に、一度おすすめする商品やコーディネートを頭の中でイメージし、その後にお客さんに用途や着用場所を聞き取ります。会話をした時の相手の雰囲気や話し方から性格を捉え、提案イメージをブラッシュアップしていきます。

以上の流れを俯瞰すると R-PDCA を回していることがわかります。いきなり商品を薦めず、まず頭の中で提案する商品を仮説としてイメージし、接客中にお客さんの理解を深めることで、仮説の精度を高めているわけです。


リピーターのつくり方


もう1つ、接客術で興味深かったのがリピーターを生む仕掛けです。

記事から引用すると、

橘さんはバイヤーとしてシーズンごとの流行などを見極めて商品を仕入れていく。カタログ作りや店舗レイアウトなどのプロデュースも担う。

こうした経験は日々の接客にも好循環をもたらしている。「新商品についての情報を次回予告のように小出しで伝え、もう一度買いに来たいと思わせる」 と橘さんは話す。次の来店動機につながる接客が功をなし、同店の買い物客の約8割がリピーターだという。

次回購入へのつなげ方として、あえて 「余韻」 を残しています

全ての情報をお客さんに出していなく、例えば新商品の予告だけにとどめています。お客さんからの注意を引き止め、興味を喚起し、今度またお店に来たいと思わせています。

提供する情報に余韻を残していて、テレビアニメで最後に入る 「次回予告」 のように情報量を意図的に絞り、不完全な状態で伝えています。

中途半端なものを与えられると完成させたくなるので、パズルのピースを埋めるために再来店を促し、リピーターをつくっています。ここにも接客方法として学べることがあります。


まとめ


今回は百貨店のスーツ販売員の接客術から、マーケティングの観点も交えながら学べることを見てきました。

最後にまとめです。

R-PDCA 接客術
  • R-PDCA とは、PDCA の前に Research (調査する) を入れたもの
  • いきなり商品を薦めず、まず頭の中で提案する商品を仮説としてイメージする。接客中に相手の情報を引き出し、お客さんの理解を深めて仮説の精度を高めて提案する

リピーターのつくり方
  • お客さんに全ての情報を出さずあえて余韻を残し、お客さんからの注意を引き止める
  • 興味喚起から、またお店に来たいと思ってもらいリピート顧客を育てる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。