投稿日 2022/04/25

若者の 「検索離れ」 を活かした求人サービス 「omochi」 。変化をチャンスにする方法


今回のテーマは、変化の捉え方です。変化をチャンスに変える方法を見ていきます。

おもしろいと思った求人情報サービスを取り上げ、マーケティングの観点で学べることを掘り下げていきます。

✓ この記事でわかること
  • ユニークな求人情報サービス omochi
  • サービスの入口は性格診断
  • omochi の開発背景
  • 世の中のトレンド変化で生まれた新しい問題
  • 学べること

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

求人サービス omochi


こちらの記事を読みました。

 「検索しない若者」 のための求人サービス - パーソルグループが挑んだユーザー視点の新規事業創造とは?|ITmedia

求人情報サービスの omochi を取り上げた記事です。omochi は、パーソルグループが実施している新規事業創出プログラム Drit (ドリット) からローンチされたプロダクトの1つです。

※ omochi は3月末でサービスが終了しました。ブログ記事の下書きを書いた時点ではまだサービスはあったのですが、書いている学べることが参考になればと思い記事を公開しました

特徴は、仕事やアルバイトの情報を自分とのマッチ度で探せることでした。


性格診断から探す


サービスの入口 (利用者が最初にやること) がユニークで、24個の質問に答える性格診断です。

診断の結果は 「おもちのキャラクター」 で表示され、診断結果から自分に合った仕事やバイトがわかります。他には恋愛診断も付いています。

以下は先ほどの ITmedia の記事からの引用です。

人材事業を手掛けるパーソルグループの新規事業創出プログラムから生まれた 「omochi」 は、ちょっと変わった求人サービスだ。

サービスの入口はキャラクター診断。24個の質問に答えると、回答者は 「さくらもち」 「きなこもち」 など8タイプの omochi (おもち) キャラクターに分類される。そして、それぞれのタイプに合ったアルバイト情報やインターン情報がレコメンドされるのだ。

このレコメンド式の情報提供方法が10 ~ 20代の若者を中心とする層に好評を博し、2021年12月時点で累計利用者数は33万人を突破した。

診断をやってみた


興味があったので、自分の性格診断を omochi でやってみました。

診断結果は、自分の理想に一途な 「あんこもちタイプ」 でした。キーワードは、理想、独自性、ストイック、がんこ。

参考までに 「あんこもちタイプ」 の特徴を貼っておきますね。

あんこもちタイプのあなたをひとことで表現すると 「独自の世界観をもつアスリート」 です。自分ならではの高い理想と哲学を持っていて、常にハイレベルな成果を目指しています。ストイックな行動力と継続力が強みです。

あなたは強いプロ意識にしたがって、理想の状態を論理的に追い求めていきます。個人としての能力が高く、自分のルールを守って誠実に仕事を進めます。その仕事ぶりにまわりからの信頼は厚いのですが、あなたにはプライドが高いところもあるため、融通の利かないがんこな人だと思われがちです。また、オタクっぽい性格だと思われている場合もあります。

あなたに向いているのは、少し変わった雰囲気のあるバイト先です。あなたにはほかの人をつい否定してしまうところもありますから、バイト仲間の感情に意識を向けられるようになると、バイトがより一層うまくいくことでしょう。あなたの能力がバイト先に理解され、あなたならではの価値観が活きるようになってくると、あなたはバイトに強いやりがいを感じることができるはずです。

わりと当たっている気がします (笑) 。


開発の背景


先ほどの ITmedia の記事に、omochi の開発背景が書かれていました。

求人サービス事業の本質は、法人への広告枠の販売だ。それ故に、スポンサーとなる法人のニーズや満足度ばかりに目が行ってしまい、同じく重要であるはずのユーザー (求職者) のニーズや満足度が二の次になってしまいがちだ。そうならないためにユーザーの声を聞くことを大切にしていた越智氏であったが、ユーザーインタビューを行う中で幾度となく同じ不満を耳にすることがあった。

その不満とは 「探し方が分からない」 というものだ。社会に出て働いた経験のない若い人が初めてアルバイトを探すとき、そもそもどのようなキーワードで探せばいいか迷うことはあるものだ。どのような求人があるのかも分からなければ、掲載された求人内容が自分に合っているかどうかも分からない。

 「若者の検索離れ」 が叫ばれる時代でもある。情報取得の場が SNS に移行し、タイムラインに流れてくる情報やレコメンドされた情報を受動的に得ることが多い彼らは、そもそも自分の欲求を要件として言語化することに慣れていない可能性もある。

そこで、求人情報をいきなり検索してもらうのではなく、まずはそのガイドとなる指標をこちらから示すことで、初めて求人サービスを使う若者にとってどのような情報を探せばいいのかを分かりやすくしようと考えた。

ユーザー調査でわかったのは、求人サービスの利用者の不満です。

インタビューで何度も出てきた不満は、「求人情報の探し方がわからない」 というものでした。


利用者の新しい 「不」 とチャンス


omochi の開発背景を、マーケティングの視点で掘り下げてみましょう。

生活者のライフスタイルや価値観、行動が変わることで、今までは良かったことが逆に不便になったのがこの話の本質です。

今回の求人サービスの事例では、起こった変化とは 「何かを知りたい」 「調べたい」 という時に SNS を使うようになったことです。

情報収集の場所が検索サービスから SNS に移り、タイムラインに流れてきたり、他人のいいねの情報を受け身で得ている、いわゆる 「検索離れ」 とされる現象です。知りたいことを言語化し、検索キーワードを自分で作り、能動的に検索をしないことが定着しました。

これは求人情報サービスの使い方にも影響を与え、求人サービスでどうやって探していいかわからないわけです。

こうした利用者の 「不」 を見出し、ビジネスチャンスと捉えてできたのが omochi です。性格診断サービスをまずやってもらい、いきなり検索から入らない UX (ユーザー体験) にしています。


学べること


では最後に、omochi の話から学べることを整理してみましょう。

一言で表現をすれば、学びは 「変化で生まれた新しい問題を捉え、ビジネスチャンスに変えよう」 です。今回の事例では、変化と問題設定というのは、能動的な検索をしなくなっている人にとっての 「求人サービスの使いにくさ」 です。

人々の、特に若者の受動的な情報接触を是とし、ここを前提に 「ではどうするか」 と考えを一歩進めました。問題を解消するための打ち手が、性格診断を入口とする求人サービス omochi です。

世の中や市場の変化を察知し、表面的な事象だけではなく奥にある変化のメカニズムや本質を見抜く。そして、自分たちのビジネスにとって何を意味するのかを解釈し、意思決定と実行につなげる。これが最後に残しておきたい今回の学びです。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。