今回のテーマは、お客さんへの提供価値です。アップサイクルの事例から、価値の捉え方について掘り下げます。
おもしろいと思ったアップサイクルの事例を2つご紹介し、マーケティングの観点で学べることを見ていきます
✓ この記事でわかること
- 2つの事例に見るアップサイクルの本質
- 価値とは何か (マーケティング視点からの考察)
- 提供価値の捉え方
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
アップサイクルとは
まず始めに、アップサイクルとは何かを確認しておきましょう。
アップサイクルとは、本来であれば捨てられるはずの廃棄物にデザインやアイデアなどの新たな価値を持たせ、別の新しい商品にアップグレードして生まれ変わらせることです。
アップサイクルはリサイクルから派生した言葉です。
飛行機備品のアップサイクル事例
アップサイクルの事例で、飛行機の備品を使った商品がおもしろかったので2つご紹介します。
✓ ご紹介するアップサイクルの事例
- 飛行機の座席 → 高級チェア
- 飛行機備品 → カプセルトイ
高級チェア
1つ目にご紹介するアップサイクルは、飛行機の座席を高級チェアにした事例です (商品ページはこちら) 。
飛行機の座席が高級感ある家具に (出典: 日経)
以下は、日経新聞の記事からの引用です。
一見、大ぶりの高級肘掛け椅子だ。革張りで、側面にはインドの伝統工芸技術を生かしたシンガポール風デザインの装飾が施されている。しかしヘッドレストや読書灯、リクライニング機能など細部をみれば 「どこかで見たことがある」 と感じるだろう。この椅子、実は飛行機の座席なのだ。
2006年から新型コロナウイルス禍まで、シンガポール航空がビジネスクラスで実際に使っていた。資源の再利用のため、退役した航空機の部品や内装に手を加え、価値を高める 「アップサイクル」 の取り組みの一環で、1月から自社のネット店舗「クリスショップ」 などで売り出した。
商品名は 「タオケー (福建語でボスの意味) チェア」 。6000シンガポールドル (52万円) と、見た目や名前だけでなく価格も立派だ。地場家具ブランドのイプセ・イプサ・イプスムがデザインと加工を手掛けた。
イプセによれば、椅子は 「アップサイクルの家具シリーズの中でも特に人気」 。航空ファンだけでなく、「出張でこの座席を何度も使った」 というビジネス客などの郷愁をそそっている。イプセはこのほか、機内食カートや座席の上の荷物入れなど見慣れた機内の装備も、高級感あふれる家具に再生した。
カプセルトイ
続けてアップサイクルの2つ目の事例にいきましょう。
JAL が、飛行機の備品をカプセルトイにして再販売しているという話です。
なぜ飛行機の "中古" 部品が売れているのか JAL のカプセルトイが7時間で完売|ITmedia
出典: ITmedia
カプセルトイは羽田空港で、他の自販機と並んで売られています。
出典: ITmedia
上記の ITmedia の記事によれば、2022年1月に、廃棄予定だった整備関連の備品をカプセルトイにして1個500円で販売したところ、わずか3日で完売したとのことです。
出典: TRAICY
画像内の ① から ⑤ をご紹介すると、
✓ JAL の飛行機備品から生まれたカプセルトイ
- コックピットで誤った操作を防ぐために使う操作禁止タグ
- JAL の鶴丸と同じペイントを施した JAL ペイントキーホルダー
- ギア整備中に使っていたメッキ試験片
- JAL 国際線で使用されたシートカバーでつくったクラス J シートカバー
- 実際にエンジンを支えていたエンジンボルト
アップサイクルの本質
ここまで、アップサイクルの2つの事例を見てきました。
あらためてアップサイクルとは何かを掘り下げてみると、アップサイクルとは 「新しい価値に生まれ変わること」 です。
例えば、他の場所や用途でも使えるようにするわけですが、1つ目の事例で見た高級チェアがこれです。
同じものでも、それを価値だと思う人に提供することもアップサイクルのポイントです。JAL のカプセルトイの中身は、多くの人には役に立たず、あまり意味のないエンジンボトルなどの備品です。しかし飛行機が好きな人には、空港にまで足を運んで買いたいと思えるものに変えました。
価値とは何か (学べること)
では最後に、アップサイクルの話からマーケティングに学べることを見ていきましょう。
マーケティングの視点で大事なのは、商品やサービスの価値を決めるのは利用者やお客さんであることです。これが意味するのは、売り手である自分たちがいくら良いと思っても、受け手が価値だと思わなければ買ってもらえません。
アップサイクルとは、本来は捨てられる価値がなくなったものに付加価値をつけ、新しく蘇らせたものです。別の場所でまた使えるようにしたり、一部を切り取って記念品にするなど特定の人に魅力があるようにすれば、価値のあるものになるわけです。
このように、商品やサービスの価値とは相対的なものです。「誰が、どういう状況で、何と (競合商品・サービス) 、どのような基準 (視点) で比べるか」 で、同じ特徴でも見方が変われば価値になることもあれば、そうならない時もあるのです。
重要なので繰り返しておくと、「価値かどうかはお客さんが決める」 「価値は相対的で、誰が・どういう状況で・何と・どう比べるのかによって変わる」 。これらは覚えておいて決して損はないマーケティングでの価値の捉え方です。
まとめ
今回は飛行機のアップサイクルの事例を取り上げ、マーケティングの観点で学べることを見てきました。
最後にまとめです。
アップサイクルとは
- アップサイクルは、本来は捨てられるものだったものに付加価値をつけ新しく蘇らせたもの。リサイクルから派生した言葉
- 例えば、他の場所や用途でも使えるようにしたり、一部を切り取って記念品にするなど特定の人に魅力があるようにする
価値の捉え方
- マーケティングで大事なのは、商品やサービスの価値を決めるのは利用者やお客さんであるという認識を持つこと
- 売り手である自分たちがいくら商品・サービスを良いと思っても、受け手が価値だと思わなければ買ってもらえない
- 価値とは相対的なもの。「誰が、どういう状況で、何と (競合商品・サービス) 、どのような基準で比べるか」 で、同じ特徴でも価値になることもあれば、そうならない時もある
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